『007 First Light』は、ジェームズ・ボンドを独自の視点で描いた作品であり、『HITMAN』の続作ではない

2025.6.14
執筆:寄稿者:ジェイソン・ファネリ

IO Interactiveはエージェント47と、彼の冷酷な殺しの手口を描いた『HITMAN』で評価を築いてきましたが、ひとつのシリーズだけで満足するスタジオではありません。

2020年に初めてティーザーが公開されてから数年を経て、同社が手がけるジェームズ・ボンドのゲーム『007 First Light』が、Summer Game Festの直前にしてついにお披露目されました。IOI SHOWCASEではジェームズ・ボンドのオリジンストーリーが紹介されましたが、新たなボンドだけでなく、彼が出会うことになる数人の重要なキャラクターにも焦点が当てられました。

IOI SHOWCASEの終了後、IO Interactiveで『007 First Light』のシネマティックおよびナラティブディレクターを務めるマーティン・エンボルグ氏にインタビューする機会を得て、長い歴史を持つシリーズを引き受けること、そしてチームがこの新しい007のゲームをいかにして他の『HITMAN』シリーズから独立した作品として確立させようとしているかなどについて伺いました。
 

ステアせずに、シェイクで


007とエージェント47の決定的な違いは何かと尋ねると、エンボルグ氏はあるひと言で表わしました。それは「キャラクター」です。

「本作品は非常にキャラクター主導型の体験ができます」エンボルグ氏は言います。『HITMAN』では、死神が日常生活を送っている人々の部屋に現れ、そこにいる誰かの命を奪っていきます。そしてプレイヤーはその過程となる道筋を決めることができるのです。しかし、そのようなペースはボンドの体験にはまったく合いません。私たちが作っているのはアクションアドベンチャーゲームであり、そのすべての推進力はジェームズ・ボンドというキャラクターにあるのです。これはかなりキャラクター主導型の体験なのです」

この原則は、IO Interactiveが手掛けるボンドと、他のシークレットエージェントのバージョンを比較する際にも当てはまります。同社は本作品のジェームズ・ボンドを、コネリー、ムーア、ブロスナン、クレイグ等が演じてきたボンドと並ぶ存在にしたいと考えています。しかしそれと同時に、チームはボンドを主人公とするゲームを作るにあたり、映画や書籍、その他の媒体で60年以上にわたって築き上げられてきた歴史を無視することはできないとも思っています。
007 First Light 2
ボンド約62年間も存在し続けてきました。世代を超えたものなのです。両親が、私が何をやっているのかを知ったのは今回が初めてです」とエンボルグ氏は冗談交じりに語りました。「ポップカルチャー的な意味で言えば、ボンドは私たちの血液なのです。その歴史を遮断するわけにはいきません。だから、成功させたいのであれば、歴史に背を向けることはできないと分かっていました」

その一方で、チームは『007 First Light』のコンセプトを練るにあたり、詳細な調査を行ったものの、ただ単に他のボンドの作品から良い部分だけを寄せ集めるようなやり方には興味がありませんでした。「いいとこ取りのようなやり方はしませんでした。私たちの目標は、単に合成することではなかったからです」エンボルグ氏は話します。「私たちはこれを現代的なものにし、自分たちなりのバージョンを作り上げたかったのです」
 

00-の起源


ボンドの前日譚というアイディアは、エンボルグ氏やチームにとって多くの点で魅力的でした。しかし中でも主な動機となったのは、ボンドがいかにして「あのボンド」になったのかという空白を埋めることでした。運転する車や好みの飲み方など、ジェームズ・ボンドには多くの特徴がありますが、IO Interactiveが『007 First Light』で自分達に投げかけた普遍的な問いは、実にシンプルなものでした。「いかにしてボンドはあの境地に達したのか?」というものです。
007 First Light 4
とはいえ、新しいボンドを一から形成するわけではありません。エンボルグ氏はIO Interactive版のジェームズ・ボンドは力強く、際だったエージェントであることをすぐに明言しました。エンボルグ氏の言うように、「これは『普通の』ボンドではないのです」

ジェームズ・ボンドのキャラクターと物語に独自の解釈を加えることで、従来のボンド像とかけ離れてしまい、長年の007ファンの描くビジョンからずれてしまうリスクがありました。エンボルグ氏はそういった懸念事項があったことを認めつつも、自分たちの描くボンドが新旧のファンを魅了するのに十分なだけの要素があると述べています。

「熱烈なボンドファンも満足できるような、本当にたくさんの要素があります」とエンボルグ氏は言います。「ファンの方々が、『あ、これ知ってる!』や『なぜこう言ったのかわかる!』と思えるような要素を用意しています。しかし同時に、オマージュ的要素がストーリーの邪魔にならないようにしたいとも考えました。その点、オリジンストーリーは嫌われがちですが、そのように感じさせないような作りになっていると思います」

一からオリジナルのジェームズ・ボンドの物語を作り出すことに焦点を当てているとはいえ、エンボルグ氏とチームは、これほど大きなシリーズ作品に関わる物語を作れることは、非常に特別なことだと認識しています。ジェームズ・ボンドのようなビッグネームを扱うことは、時に大きな障壁を伴いますが、幸いなことに、エンボルグ氏はチームがそのような問題を抱えることはなかったと考えています。
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「作品に関わっている全員が、ジェームズ・ボンドの持ち前を存分に引き出したいという真の情熱を持っています」とエンボルグ氏は言いました。「もちろん、私たちは大きな挑戦をしたいという気持ちで臨みました。一方で、私たちの挑戦した結果に対して、不満を抱く人も出るのではないかと心配していました。しかし、実際には良い反応を得られています。私たちは、それを実現しているし、かなりうまくいっているのです」

『007 First Light』はEpic Games Storeにて2026年にリリース予定。ウィッシュリストに今すぐ追加!