『Bloodstained: The Scarlet Engagement』インタビュー 飯田周太郎氏と五十嵐孝司氏に聞く

2025.6.18
執筆:寄稿者:ジェームス・ミールケ

記憶に新しい続編の中でも特に注目を集めている『Bloodstained: The Scarlet Engagement』(以下:Bloodstained:TSEで表記)は、実は皆さんが思っている以上に長い間開発が続けられてきました。開発元ArtPlayは、ファンの支援を受けて実現したKickstarterのストレッチゴールを、約束を果たすべく何年もかけて完成させてきましたが、その一方で、前作の続編にして過去のエピソードでもある本作『Bloodstained:TSE』も、2021年からすでに密かに始動していたのです。

今回のインタビューは、本作に関して初の本格的な深掘りインタビューとなります。『Bloodstained: Ritual of the Night』(以下:Bloodstained:RotNで表記)のプロデューサーであり、『悪魔城ドラキュラ』シリーズのプロデューサーだったとして知られる五十嵐孝司氏(以下:IGAで表記)と、『Bloodstained:TSE』のプランニングからシナリオまでこなすクリエイティブディレクター飯田周太郎氏(以下:SHUTAROで表記)のお二人に、開発に込められた濃密なこだわりについて語っていただきました。

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Q:今回の『Bloodstained:TSE』では、レオとアレックスの二人のキャラクターのどちらかを操作することができますが、どちらかのキャラクターを操作することによってゲームプレイに違いはあったり、プレイスタイルは大きく変わったりするのでしょうか?また、ソロプレイのメリットはありますか?

SHUTARO:その質問には私からお答えします。まず、二人のキャラクターの操作性に関しては、それほど大きな違いはありません。ただし、レオは魔法の扱いがやや得意で、アレックスは物理的な力に優れています。魔法能力に関しては、若干の得意不得意がありますが、大きな違いではありません。

本作『Bloodstained:TSE』で用意している要素の一つに「ジョブシステム」があります。これらのシステムを通じて、プレイヤーの個性やユニークさが表現されるよう、現在開発を進めています。

ソロプレイについてですが、レオかアレックスのどちらかを操作し、もう一人はAIが自動で動かします。基本的には、二人を同時に画面上に出してプレイした方が有利な場面が多いです。ただし、一部の戦闘では、一人を画面上に出してプレイに集中しないと防ぎきれない攻撃や状況があるため、そういった場面ではあえて一人でプレイするのが戦略的に有利になることもあります。

Q:では、レオとアレックスの両方を操作する場合、ボタンでキャラを切り替えるスタイルなのでしょうか?それとも、何かマルチプレイ的な要素があるのでしょうか?

SHUTARO:はい、プレイヤーは二人のキャラクターを切り替えて操作することができます。でも、たとえソロプレイ中でも、「バディ」に呪文を唱えさせたり、連携攻撃を指示したりすることが可能です。たとえば、レオを操作していて、アレックスがAI操作だった場合でも、アレックスに「いつ呪文を使うか」を指示できます。
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Q:なるほど、それはすごく楽しそうですね。この作品は過去のエピソードということですが、つまり前作『Bloodstained:RotN』でのミリアムの物語より前ですよね?なぜ今回は一人の主人公ではなく、二人のキャラクターを採用したのでしょうか?

SHUTARO:このゲームは、ミリアムとはほとんど関係がありません。ただし、前作の『Bloodstained:RotN』とのつながりは非常に深いです。前作のストーリーを掘り下げていったときに、本作にふさわしいキャラクターとして、この二人が浮かび上がってきました。……ちょっとわざと曖昧に言っていますけど。

IGA:はい、その通りです。

SHUTARO:『Bloodstained:RotN』のとある重要キャラクターと、この二人のキャラクターには深い関係があります。

Q:前作『Bloodstained:RotN』は非常に広大なワールドマップがあり、探索して100%マップを埋めるのが本当に楽しかったです。そして『Bloodstained:TSE』は、更に広くなったと聞いています。そこでお聞きしたいのですが、プレイヤーにしっかりと楽しんでもらうために、どのような工夫をされているのでしょうか?開発者の皆さんの言葉で、今作を“新鮮”で“魅力的”なものに保つために意識しているポイントを教えてください。

SHUTARO:今回の作品では、ゲームの前半はストーリーに重点を置いています。ただ、後半になるとプレイヤーに大きな自由度が与えられるようになっています。
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質問:それは楽しみです。前作の『Bloodstained:RotN』は、開発期間が非常に長かった印象があります。と言っても、ベースゲーム自体というよりは、リリース後に次々と新しいコンテンツが追加されていきましたよね。その間、コミュニティからのフィードバックをたくさん受け取る機会があったかと思いますが、『Bloodstained:TSE』をより良いものにするために、最も役立った、あるいは重要だったフィードバックはどんなものでしたか?

SHUTARO:昔、私たちが『悪魔城ドラキュラ』シリーズを作っていた頃から、ずっと言われてきたフィードバックがあります。それは、「もっとストーリー要素やキャラクター描写を増やしてほしい」というもので、それがいつも一番多い意見でした。いつもIGAさんに「もっとストーリーに力を入れてくださいよ」と言うのですが、「ストーリーは必要最低限にしたいんだ」とよく言うので、過去には私が折れて『悪魔城ドラキュラ 奪われた刻印』は私がストーリーを書いています。そして今回も、「私がやる!」ってなりました。

Q:これはまた楽しみな要素ですね。前作から、そして『月下の夜想曲』以来ずっとそうですが、毎回RPG要素がどんどん強くなっていて、それがとても良いですよね。前作『Bloodstained:RotN』でもカスタマイズ性は大きな特徴の一つでしたが、今回の『Bloodstained:TSE』ではさらに強化されているようですね。レオとアレックスは、それぞれ専用のカスタマイズアイテムを持っているのでしょうか?それとも、共通のインベントリから共有する形でしょうか?

SHUTARO:基本的には、インベントリ内のアイテムは二人で共有できます。

Q:「カスタマイズ」と言いますと、装備するアイテムはすべてキャラクターの見た目に反映されるのでしょうか?前作『Bloodstained:RotN』ではそうでしたが、今回も同じですか?

SHUTARO:はい、カスタマイズ可能な装備アイテムはかなり多いです。脚部、足元、頭部、背中、そしてメガネのようなアクセサリー類の一部などですね。これらはすべてキャラクターの見た目に反映されるビジュアルカスタマイズ要素です。
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Q:ゲームのスピードやキャラクターの移動速度は、前作と比べてほぼ同じでしょうか?それともスピードの変化はありますか?

SHUTARO:中盤あたりでは、少し速く感じるかもしれません。今回は足にスピードアップ効果のある装備を多く取り入れていますし、移動速度を上げる効果を持つジョブもあります。プレイヤーの進行に伴って移動速度が上がっていくので、ゲームの後半になるほど速く感じられると思います。

Q:前作『Bloodstained:RotN』はクラウドファンディングによって実現したタイトルで、さまざまなストレッチゴールもあり、全体の開発には長い時間がかかりました。では、今回の続編の制作はいつから始まったのでしょうか?

IGA:これは私が答えます。プロジェクト自体は2021年7月に始まりましたが、2023年の中頃に体制の見直しを行い、それに伴って社内の開発体制を整備し、本格的に本作の開発に取り組み始めました。

SHUTARO:そうですね、実際『Bloodstained:TSE』の企画段階はかなり前に終わっていました。
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Q:でも、まだ完成はしていませんよね?リリース予定は2026年と聞いています。

IGA:ええ、まだ完成はしていません。リリースはまだ先になります。

Q:『Bloodstained:RotN』では、キャンペーンが非常に成功したことで、多くのストレッチゴールを達成しなければならず、それは諸刃の剣だったと思います。もちろん開発資金は得られましたが、その分ファンサービス的なコンテンツをたくさん作り続けなければなりませんでした。そして今作では、開発人生で一番忙しい時期であったとしても、ストレッチゴールのような縛りがなく、ファンサービス的なコンテンツを作ることもないので、「自分たちが本当に伝えたい物語はこれだ」といった、設計そのものに集中できたのではないでしょうか。自由時間はなかったかもしれないけれど、義務に縛られず、創作の自由度は高まったのではないでしょうか?

SHUTARO:もちろん、当時の支援や期待があったからこそ、前作を完成させることができましたし、今回もそれが大きな原動力になっています。ただ一方で、今作ではたしかに自由度はありましたね。大きな違いは、必要に応じてプロジェクトのスコープ(開発範囲)を調整しやすいことです。何も発表していないので、「やらなければならない」という縛りがないのです。

でも、それが必ずしも良いことばかりではありません。私はたくさんのアイディアや野望を持ってプロジェクトを始めるのですが、進行していくうちにスケジュールが厳しくなってくると、「これ時間的に無理じゃないですか?」とチームから言われて、結局バジェットとスケジュールを踏まえて、スコープから外すことになるんです。

なので、今回の作品では、前作以上に最初に構想していた内容を削ることができます。実は、すでに削ったアイディアもあります。
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Q:『Bloodstained:TSE』の構造的な計画についてお聞きします。DLCやクロスオーバーなど、今後展開予定のものはあるのでしょうか?それとも、今回は完全に本編完結型でしょうか?

IGA:現時点ではまだ何も発表できませんが、ファンの皆さんには今後の発表を楽しみにしていてほしいと思っています。

Q:『Bloodstained:TSE』では昼と夜のサイクルがあるそうですが、それぞれの時間はどれくらいでしょうか?昼が15分、夜も15分くらいですか?

SHUTARO:まさにそのとおりです。現在は、昼夜合わせて30分で1サイクル(24時間)になるようになっています。ただ、今後少し調整が必要だと思っています。

Q:時間の経過は背景のビジュアルなどで分かるようになっているのでしょうか?

SHUTARO:そうですね、見た目でかなりはっきり分かるようになっています。
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Q:「ジョブシステム」がとても面白そうですね。私の見解では、これによってRPG的な要素がより強くなっている印象を受けたのですが、そのあたりについて詳しく教えていただけますか?

SHUTARO:10種類以上のジョブから選ぶことができて、それぞれのジョブを育てていきます(つまりレベルアップです)。レベルを上げることで、新しいスキルやアビリティを習得できます。また、特定のジョブでしか覚えられない魔法やスキルもあります。あるジョブで習得したスキルは、条件を満たせば別のジョブでも引き継いで使えるようになります。なので、プレイヤーはゲームを進めるごとにどんどん強くなっていきます。

たとえば、最初に「ファイター」のジョブを習得してから、「ニンジャ」のジョブを覚えることもできます。そして、ファイターで覚えたスキルを、ニンジャでも使えるようになる、という感じです。

このシステムはぜひ活用してもらいたいですね。

Q:レベルキャップは、前作『Bloodstained:RotN』と同じく99ですか?

SHUTARO:はい、現時点では99までです。

Q:ということは、全てのジョブをレベル99にすれば、キャラクターが最強になるということでしょうか?

SHUTARO:はい、そうなります。プレイヤーの「通常レベル」と「ジョブレベル」は別物で、ジョブレベルの方が上がるスピードは速いです。
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質問:「閃技」のコンバットシステムについて教えてください。

SHUTARO:これは、戦闘中に特定の条件を満たすことで新しい技をひらめいて習得できるシステムです。つまり、使用武器やプレイヤーのステータス等、ある条件が重なったときに敵に攻撃すると、新しい技がひらめいて、以後その技をいつでも使えるようになります。

Q:前作『Bloodstained:RotN』にはクラフトや料理のシステムがありましたが、『Bloodstained:TSE』ではそれが改良されているそうですね。まったく新しいシステムが導入されたのでしょうか?それとも、レシピの数が大幅に増えたというようなアップグレードでしょうか?たとえば、前作の1.5倍のレシピ数があるとか?具体的にどのように進化しているのか教えてください。

SHUTARO:たとえば前作では料理やクラフトの材料が足りなかったとき、ショップに行って買わなければいけませんでした。でも今作では、必要な素材がショップにあれば、わざわざショップに行かなくてもクラフト時に購入できるようになっています。

Q:ということは、もう特定の敵やモンスターからアイテムを延々と集める必要はない、ということでしょうか?

SHUTARO:いえ、それは今作でもあります。条件として「ショップにそのアイテムが並んでいるかどうか」によります。ショップに並んでいなければ、やはり自分で敵からドロップを狙って集める必要があります。
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Q:なるほど。クラフトと言えば、前作『Bloodstained:RotN』ではシャードを使いましたよね。モンスターごとにシャードがあって、それを使ってアイテムをクラフトして、さらにそのアイテムを+1から+10まで強化できる。ただ、レベルアップするためにはシャードをどんどん集めないといけなかった。そのシステムは今回も同じでしょうか?それとも変更されていますか?

SHUTARO:今回はシャードが無いので、そのシステムではないのですが、クラフトに関して、ひとつ大きな違いがあります。それは、弱い武器でもクラフトによって強い武器に変えることができるようになります。

たとえば、ただのナイフでも、クラフト次第でとても強力なナイフに進化させることができます。

Q:そしてもう一つ。今回新しく追加された要素として「拠点」と「拠点の家具」がありますよね。これは、「拠点」が自分の家またはセーブポイントになって、そこに家具を置いてカスタマイズできる、ということでしょうか?

SHUTARO:そうですね、セーブ部屋は「拠点」の一部になっています。「拠点」全体は、セーブ部屋だけでなくもっと広いエリアで構成されています。そして、その自分の部屋に家具を飾ることができます。

Q:家具は、基本的には店で買うものでしょうか?それともプレイ中に見つけることもできるのでしょうか?

SHUTARO:家具を手に入れる方法はいろいろあります。ショップで買うこともできるし、クラフトで作ることもできるし、拾うこともできます。拾った家具は、拠点に並べていくことになります。

Q:家具に関して最後の質問ですが、並べ方はプレイヤーが自由に選べるのでしょうか? それとも集めたらどんどん自動で並べられる感じでしょうか?つまり、すべての家具を集めて100%にしたら、全員が同じレイアウトの部屋になるのでしょうか、それとも「テトリス」みたいに自分で配置していくのでしょうか。

SHUTARO:最初の企画書では、プレイヤーが好きなように家具を並べられる仕様にしていました。でも、それは開発の関係で削らざるを得なかった部分の一つで、今は家具の配置場所が固定になっています。

Q:お二人はこれまでにも何度も一緒にゲームを作られてきましたが、毎回クオリティの高い、そして同じジャンル――いわゆる「イガヴァニア」と呼ばれる作品です。なぜこのジャンルに惹かれ続けていて、いつも新鮮で、楽しくて、中毒性のあるゲームを作り続けられるのでしょうか?

SHUTARO:私は毎回、何か新しいことをやろうとしています。私はどちらかというと改革派です。それを許可してもらえていたというのもあると思います。

IGA:ただ私は、そんなに改革派ではないので「これは守ってほしい」とか言うのですが……

SHUTARO:……でも私は守りに入りたくない。それには理由があるのです。どれだけ新しいことに挑戦しても、結局はメトロイドヴァニアというジャンルに収まると思っています。だから、新しい要素をどんどん入れていかなきゃいけないと考えています。だから、キャラクターも毎回変えるし、システムも大きく変える。。「今回は二人プレイにしよう!」「グリフも出そう!」みたいな。

具体的には、NDSの1作目はIGAさんが企画立案者だったので、前作の正統進化的な作品でしたが、2作目、3作目は私が企画立案者だったので、いろいろ変えたのが分かってもらえるかと…。

だから、今作でもまた変えてもいいと許可をもらいましたので、面白くなると思います。

Q:最後に、お二人からメッセージをいただけますか?お二人とも答えてくださると嬉しいのですが、このゲームを心から楽しみにしている世界中のファンの皆さんに向けてメッセージをお願いします。たくさんの期待が寄せられています。

SHUTARO:そうですね……正直なところ、今回のゲームはけっこう“変わった”ゲームになっていると思います。グラフィックも進化していますし、以前にも作ったことはありますが、今回は2人で遊べるようになっています(※編集注:『Bloodstained:TSE』は2人協力マルチプレイを予定)。

前作とは少し違った作品になっていると思うので、楽しみにしていただけたら嬉しいです。

それから、ストーリーやカットシーンも前作より良くなっていると思います。前回「ここが物足りない」と言われた部分をしっかりと強化しましたので、ぜひ楽しみにしていてください。

IGA:今回もSHUTAROとはタッグを組んで開発していますが、彼が携わったタイトルはいつも高評価をもらっています。

そして今回、SHUTAROはクリエイティブディレクターとして本作に深く携わっているので、前作よりもさらに面白いものになっていると自信を持っています。ぜひご期待ください。

『Bloodstained: The Scarlet Engagement』は、現在Epic Games Storeでウィッシュリストに追加できます。
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