プレイヤーの宇宙船が敵の宇宙船をレーザービームで破壊している『Breachway』のスクリーンショット。

分かりやすいSFとプレイヤーの戦略的選択が影響を与えるカードゲームを組み合わせたゲーム『Breachway』

2023.11.27
執筆:寄稿者:アリシア・ハディック

宇宙の果てにて、私たちは道を外れた宇宙船に出会いました。 宇宙船の損傷はひどく、乗組員はSOSの遭難信号を出していましたが、船は敵の勢力のものでした。 難しい決断でしたが、足止めをくらっている敵を助けることにしました。 そうすることで、二勢力間の関係の修復が始まります。 この新生同盟を気に入らない、かつて友好的だった勢力との紛争をも含む、将来的な戦闘で間違いなく助けになるであろう装備を提供してくれました。

2024年初頭にEpic Games Storeでのリリースが予定されている、EdgeFlow Studio開発の『Breachway』は、ローグライク要素を盛り込んだカードベースのストラテジーゲームです。 分かりやすいSFからインスピレーションを受けたこのゲームは、宇宙の果てを舞台とします。 未知の宇宙を宇宙船を操縦し、敵味方両方を相手に生き延びなければなりません。

一見すると、ゲームの中核部分はシンプルに見えるかもしれませんし、実際にEdgeFlow Studioのチームは『FTL: Faster Than Light』『Slay the Spire』といったタイトルが好きでインスピレーションを受けていると公にしていますが、『Breachway』は、独自の世界とデッキ構築メカニズムで一線を画そうと試みています。
『Breachway』:モジュール
『Breachway』では、単純にデッキを構築するわけではありません。乗組員を集め、船をアップグレードします。 カードの能力のほかに、乗組員にはそれぞれ独自の気質や忠誠心があります。 船の選択肢に基づいて選択されるゲーム内の勢力とランダム化された、枝分かれするストーリーを組み合わせと聞くと、無限のリプレイ性を持ったカードベースの冒険の将来性と可能性は明らかでしょう。

EdgeFlow Studioは現代のインディーゲームが大好きであることを隠してはいませんが、『Breachway』の真のインスピレーションは、実際20年以上前の作品に受けています。広大な宇宙から目をそらし、ファンタジーの世界を見てみましょう。 具体的には、Ubisoftの『Might and Magic』シリーズです。

「子どもの頃、『Might and Magic VII』というゲームをプレイしました。そのゲームの酒場で、Arcomageという、とても基本的なカードゲームをプレイすることができました。 それが最初のインスピレーションです」リードデザイナーのビクター・ルビンシュタイン氏は説明してくれました。
『Breachway』:ターゲット
ルビンシュタイン氏はArcomageをプレイしてすぐに、これにインスピレーションを受けたゲームを作成したいと思いましたが、当時14歳だった彼にとっては、このアイデアは難しすぎました。 20年後の今、MODの3Dモデルを作成した経験を得て、このアイデアに立ち返ってみると、以前よりは取っつきやすく感じました。

「(Arcomageにも)私たちのデザインにある資源タイプとカードタイプがそれぞれ3種類ありました。しかし、ゲームプレイはかなり変化しました。 これは2019年の頃の初期のアイデアで、当時は『ハースストーン』が人気があったので、それも試せるかなと思いました。というのも、カードゲームは簡単ですものね?」

簡単だったでしょうか? それは…

カードゲームを何もないところから開発するということは、自分で実際にその試みを行うまで、シンプルに聞こえるのです。 実際の開発では、戦闘のルールをいくつか考えて、カードの格好いいデザインを作り、それでおしまいではないのです。 全員にとってルールをバランスの取れた、公平で楽しいものとしつつ、プレイヤーが自分なりの決断や戦略を行えるようなものでありつつ、さらにひとつの戦略が他のすべてより圧倒的に強くなり、ゲームの深みを損ねてしまうような明らかなルールの抜け穴を避ける必要があります。 ここに真の困難があるのです。これに失敗してしまうと、完全に運ベースのルーレットのようなゲームとなり、魅力を失ってしまいます。
『Breachway』:キャンペーンのエンカウンター
つまるところ、ルビンシュタイン氏が思うほど、『Breachway』の開発は簡単ではなかったのです。 実際、正反対でした。 彼はこう話しています。「非常に難しかったです。 カードゲームはデザインに頼るゲームです。 部分部分を単に足した以上のゲームを作るには、いろいろな特徴の発生につながる多くの相乗効果やともに機能するシステムが必要です。 かなりの挑戦ではありましたが、楽しみました! これが私の初めてのプロジェクトだったので、ゲームデザインやゲームエンジンについていろいろと学びました」

『Breachway』のSFという外観は、目立つことを目的として開発されました。 ルビンシュタイン氏のインスピレーションとなったカードゲームを含む多くのカードゲームは、ファンタジー世界を舞台にしていますが、ルビンシュタイン氏は自身の大好きなSFを題材とすることにしました。

初期のマルチプレイヤーのプロトタイプが、現在のシングルプレイヤーの形に変化するなど、部分によっては大幅な変化を遂げているように、時間とともに内容が進化するにつれて、『Breachway』のSFを舞台とする設定は、戦闘のメカニズムの本質に組み込まれ、デッキや船を構築するという中核部分の戦略を強化していきました。
『Breachway』:船のロードアウト
たとえば、どの船にも乗組員が必要で、これらの乗組員は当然ながら、武器から防御や修理までそれぞれ専門を持っています。 このため、各乗組員が引くことのできる独自のカードセットがあるので、バランスの取れた乗組員を構築することが、さまざまな資源のすべてを利用できるようにし、攻撃と防御のカード両方から構成されるバランスの取れたデッキを構築する鍵となるわけです。

これには、2つのゲームプレイ上のメリットがありました。 一方では、物理的なデッキを自分が操縦する船に変身させることで、デッキ構築がより分かりやすくなりました。 船の各部と各乗組員を取得することが、デッキの容量増加と使用できるカードの増加につながります。 同様に、船で防御シールドや攻撃ミサイル、レーザーを強調するという行為が視覚的に表現されていると、自分のプレイスタイルに合わせてデッキを構築するのがより簡単です。

また、考慮すべき戦闘シナリオに奥深さが加わります。 宇宙船がさまざまなパーツで構成されていると、敵の船の特定の場所を狙い、モジュール式に敵の船の機能を無効化することが当然の手法となるため、各攻撃の場所が大いに考慮されます。 たとえば、さらに貫通ダメージを与えるために敵のシールドを弱体化することもできれば、自分が回復する時間を得るために敵のレーザーを無効化することもできるわけです。
『Breachway』:暴君の戦闘
ルビンシュタイン氏はこのように語ります。「対戦対手がプレイするカードを見て、何ターンでそれらのカードを相手がプレイするかが分かります。だから、相手の防御システムを攻撃して速く倒すか、相手の攻撃システムを攻撃して自分はシールドにあまり資源を使わず、攻撃に集中するかの選択を行うのに必要な情報がすべて揃っています。どのような選択をするかの駆け引きができるのです」

何度もプレイを繰り返し、戦闘で何がうまくいくか学ぶことは、戦闘を行う上でどのような可能性のシナリオでも対応できるビルドに最適化するチャンスがあるということです。 もちろん、経験とシステムの知識を積むことで、プレイヤーが『Breachway』のゲームシステムを完全に壊してしまうような抜け穴を見つける可能性もあるわけですが、これはデベロッパーが十分に考え抜いたことであり、リリースにおいて問題にならないことを祈るばかりです。

「(テスト中に)どのようにゲームをプレイするだろうかと想像しないようにしています」ルビンシュタイン氏は説明します。 「そうではなく、できる限りゲームを壊すようにプレイしました。そして、他のデベロッパーに手伝ってもらいました。 プレイヤーが自分のゲームをどのようにプレイするのかを完全に予想することはできませんが、まずは様子を見て、必要に応じて調整を入れたいと思います。 想像力という点では限りがあります。それに、プレイヤーはいろいろなクレイジーな組み合わせを考えつくと思います!」
『Breachway』:船の選択
誰を雇い、デッキをどのように構築するかは、戦闘に影響を及ぼすだけではありません。 プレイヤーのチームがどこに所属するかも同様に、この広大な宇宙を股にかけた物語に登場する他の勢力との戦闘外の関係に影響を及ぼし、プレイヤーの選択によりこの関係はさらに複雑になります。 無限な空間の広がりと意思決定によって、プレイするたびに多数のユニークなシナリオが開けるため、ここでこのゲームの拡大し続ける物語の可能性が前面に出てきます。

ルビンシュタイン氏は語ります。「ゲームを開始する際に選択するいずれの宇宙船も4つの勢力の1つに所属しています。 この勢力と同盟を結ぶわけですが、その勢力の他の勢力との関係に基づいて、プレイヤーに対抗する勢力がいるわけです。 しかし、その勢力の敵としてゲームを開始しても、プレイしていく中で選ぶ選択肢により、その勢力と同盟を結び、自分の勢力から離れていく可能性もあります。 全勢力を裏切り、海賊になることさえも可能です」

ローグライク、ランダム化というゲームの性質のため、直線的なストーリーはありませんが、正しい選択肢も誤った選択肢も両方を含めたプレイヤーの決断により動かされている物語や冒険を感じられないというわけではありません。
『Breachway』:キャンペーンのエンカウンター2
「私たちが実現しようとしたことは、星系を10個ほど用意して、1回のプレイで3個ぐらいが登場することです。 各星系には独自のテーマがあり、独自の勢力が存在し、それとは異なるより大きな勢力が存在し、さらにその勢力と対立する勢力がいます」ルビンシュタイン氏は続けます。 「プレイヤーには乗組員を持ち、その何名かは特定の勢力に所属しています。 その勢力に対抗するような選択をした場合、これらの乗組員はプレイヤーの決断に反対し、士気が下がる可能性があります。 今のところ、これをうまく組み合わせて、まとまりのある構成を作ろうとしていますが、方向性としては正しいと思います」

この要素はルビンシュタイン氏が育ってきたSFのストーリーの多くに起源をもちます。最近Telltale Gamesによりストーリーアドベンチャーゲームとなった『The Expanse』などはその一例です。 これらのストーリーが初期の時点で、さまざまな勢力やそれぞれの強み、そして宇宙での生活やシリーズの伝承の多くのインスピレーションとなりました。しかし、開発が進むにつれ、これらの要素は大きく枝分かれしていきました。

ルビンシュタイン氏は話します。「『The Expanse』は、現在の技術であり得そうな武器を使用し、エネルギーシールドも魔法の武器もないような状態で、私たちの時間軸により近いという意味で、よりリアルなSFです。戦闘は非常に遠距離で、たくさんのキャラクターが多様に登場します。 『スタートレック』のように、完璧な方法があるわけではありません。 (『The Expanse』では)国や勢力が火星での生活に奮闘する姿が描かれています。 地球や火星に支配された小惑星帯に住んでいる人々がいれば、独立している人々もいます」
『Breachway』:カード戦闘2
「これが私たちの開始地点でしたが、ストーリーが展開するにつれて、独自の様相を現し、『The Expanse』や他のSFのような内容から大きく異なるようになりました」さらにルビンシュタイン氏は続けます。 「もちろん、人々が期待するようなSFのお決まりの要素はありますが、今までに見たことのないようなリミックスがなされていると思います」

ルビンシュタイン氏はこうも言っています。「このストーリーを書くことができて非常に嬉しく思っています。もちろん、カードゲームにはストーリーなど必要ありませんが、昔から『Planescape: Torment』のようなストーリーを重視するゲームが好きだったので、ストーリーを書くこともできて良かったです」

これらすべてを総合すると、『Breachway』の広大な舞台としっかりとコントロールされたゲームプレイには、大きな可能性が見出されます。 宇宙の広大さの先にあるものは、アートディレクターとモデラーとしての20年以上の経験によって再び蘇る、幼い頃の夢から生まれた物語です。 『Breachway』の開発は2019年に、ルビンシュタイン氏の本業の空き時間に少しずつ行われ、何年もかけてゆっくりと磨きがかかり、現在の私たちが目にする形へと進化を遂げました。

ルビンシュタイン氏は語ります。「長い間、このゲームが日の目を見るとは思いませんでした。クリエイティブな表現をする何かに打ち込みたかったので、作業をしました。 歳を取ってから自己嫌悪に陥らないように、何かをしたかったのです。 ある時点で、かなり初期の状態のデモ版をRedditで公開しました。 非常に基本的なものでしたが、反響は良かったです」

「そのときに、このゲームには将来があるかもしれない、と初めて思ったんです」

『Breachway』は2024年初頭にEpic Games Storeでリリース予定です。