『Alan Wake 2』の制作:サム・レイク氏が語る、ダークで都会的な夢の世界、プレイヤーによる自由な選択など
2023.10.23
執筆:寄稿者:シャノン・リァオ
『Alan Wake 2』の世界観をより深く理解するためには、その中心的存在であるニューヨークに注目してみる価値があります。

「私はアメリカのポップカルチャーの魅力にどっぷり浸かって育ちました」と、Remedyのクリエイティブディレクターであるサム・レイク氏は、今年初めにニューヨークで開催されたトライベッカ映画祭のパネルディスカッションで、アメリカの映画監督マイク・フラナガン氏に語っています。
その数日後に行われたインタビューで、レイク氏にさらに詳しく伺いました。 「かなり昔に『Max Payne』を制作した当時、ニューヨークには一度も訪れたことがありませんでした。 ニューヨークは私にとって、神秘的で象徴的な大都会の憧れの場所だったのです。 その後は何度も訪れていますが、いまだに実際の街よりもポップカルチャーに刺激を受けることが多いですね。 なぜか私にとっては、ニューヨークこそが普遍的な原型となる街なんです」
『Alan Wake 2』で描かれるニューヨークは、実際に私たちがインタビューを行っている街の様子とはかけ離れています。 そこは「闇の世界」と呼ばれる暗く邪悪な場所で、プレイヤーは怪物と戦ったり、手がかりを集めたりする必要があります。 アラン・ウェイクは1作目の出来事以来、この13年間ずっと闇の世界に閉じ込められ、悪夢にとらわれています。

レイク氏はマーティン・スコセッシ監督の名作「タクシードライバー」をはじめとするフィルム・ノワールの大ファンで、ニューヨークの雰囲気を参考にしたのだと語ります。 「私たちは、様式化されたアートハウス・ホラーから多くのインスピレーションを得ています。 超自然的なものを象徴するような強烈な照明や色のついた光、そしてもちろん、先ほどお話ししていた二面性を表現するような対照をなす闇も、このゲームの大きなポイントになっています」と、フラナガン氏とのディスカッションの中でレイク氏は語っています。 「また、本作はグラフィックの面でも、これまでの作品の中で最も大掛かりなゲームです。 技術的なことは私の専門ではないですが、画面を見たときに、これまでと比べて10倍以上もの細かな描写があり、さまざまなことが起きていると聞いています」
ホラーゲームはアクションゲームよりもテンポが遅く、『Alan Wake』のようなサバイバルホラージャンルは、『Control』をはじめとするアクションゲームのテンポの速いシーンよりも、物語を表現するのに適しているとレイク氏は説明します。 とはいえ『Control』は、2019年のGame of the Year候補にも名を連ね、浮かび上がる不気味な怪物、テレキネシス、そして不穏な物語の設定はプレイヤーを魅了し、誰もが続編を待ち望む結果となりました。
「アクションゲームと物語の関係では、物語を盛り込むスペースを見つけるために、常に頭を悩ませる状況が生じます。 そして、この作品は相乗効果のある物語であるため、お互いに連動する必要があるのです。 物語とゲームプレイには、このような関係が不可欠です」とレイク氏は語ります。

「『Alan Wake』では当初から、より多彩で深みのあるストーリー体験を実現するために、物語そのものの可能性を追求し続けるという目標を掲げていました」とレイク氏は続けます。 「それには、物語を盛り込むためのスペース、労力、そして手段が必要になります。 通常(『Alan Wake 2』では)、キャラクターは『Control』の時のように走ったり飛んだりしないため、その分すぐにスペースが生まれます」
物語はスリリングでひねりのある構成になっていますが、2つのまったく異なる世界観も表現されています。 プレイヤーはアランとサーガの2人の視点から『Alan Wake 2』を体験することになり、それぞれがより大きな物語を読み解くヒントを与えてくれます。
「例えば、サーガをプレイしているときに、ある出来事、特定の光景を最初に目にし、それは何か伏線を感じさせるようなものだったとします。 その後ウェイクの視点でその出来事を体験して、そこでパズルのピースがぴったりはまるのです」とレイク氏は説明します。

『Alan Wake 2』では、2人のキャラクターが物語を構成し、プレイヤーはアランとサーガを切り替えながらプレイできるため、Remedyのチームは、計画通りのタイミングでスリリングな展開を生み出すという、一本道のキレのある物語を提供することができなくなりました。 これについてレイク氏は、「両キャラクターは隣り合わせに存在し、プレイヤーは自分の思うようにゲームを進めることができるため、全体的な流れにおいて、ペース配分を管理できなくなります」と述べています。 例えば、アラン・ウェイク側の物語で起こる重要な場面で、プレイヤーがサーガ側にいた場合、それを完全に見逃してしまう可能性もあるのだとレイク氏は説明します。
「何か新しいことをやってみたかったんです。 確かに、予期せぬ展開や重要な場面では、手段の一部を手放すことになります」とレイク氏。 「しかし、ビデオゲームでプレイヤーが主体性を持つこと、つまりこのような選択肢を与えることは、とても大きな力を持っていると感じました」
そこでRemedyは、どのタイミングで特定の予期せぬ展開を迎えるか、誰の視点からそれを見られるかということを細かく設定する代わりに、これらの判断をプレイヤーに委ねることにしました。 『ゲーム・オブ・スローンズ』のエピソードのように、いつでもキャラクターの誰かになりきることができると想像してみてください。

こうした表現上のテーマは、ある意味『Alan Wake』の本質に通じるものがあります。 アラン・ウェイク自身も、「闇の世界」から抜け出すために完璧な物語を作り上げることに執念を燃やす作家なのです。
フラナガン氏はディスカッションの中で、彼が思わずゾクッとした瞬間のひとつは、『Alan Wake』のまさに最後の場面で、ゲームがその心理を海のように表現したときだったと述べています。
「それは誰もが、特に自らの選択によって、あるいは境遇によって、自身の闇と向き合い、その深さの限界がどこにあるのかを見極めようとすることを余儀なくされている人たちの多面性を深く語るだけではありません。この物語の世界が拡大されるにつれ、海のより多くの側面を見せることで、その点を証明しようとしていると感じます。 作品はより深く、暗く、そしてより壮大なものになっています。特に『闇の世界』について、第1作目やその後のシリーズで想像していた限界がどんなものであったとしても、今回はゲームを進めるにつれ、徐々に理解を深めていくことになるでしょうね」
レイク氏は『Alan Wake』が単なるサイコホラー物語ではなく、「多くの要素が重なり合った」ミステリーでもあると返しています。 アラン・ウェイクというキャラクターは、かつてニューヨークで犯罪小説を書いていました。 ゲーム制作において、レイク氏はプレイヤーが点と点を結ばなければならないビデオゲームの世界を作り上げる手助けをしました。

サーガには、独自の「精神世界」があります。これは、『シャーロック』や『ハンニバル』といった作品で知られるコンセプトです。 『Alan Wake 2』でのサーガ側の物語では、一連の儀式的な殺人事件を調査し、彼女の記憶の中で構築される手がかりを見つけ、それらを集めることになります。 壁には調査ボードがあり、手がかりはそこに並べられ、象徴的な赤い糸でつながっています。 サーガは目撃者や被害者をプロファイリングし、疑問を投げかけることも可能です。
「このゲームに間違ったやり方はありません。そのため、多くの物語が結びついていくにはどうすべきか、かなり考えさせられました」とレイク氏。 「ゲームにはお互いのビジョンを目にする夢のような部分があり、そこではそれぞれの物語が交差します。 彼らはお互いを映し出しているのです。 そして、たとえ序盤でも、プレイヤーは自由に自分のやり方で進むことができます」
『Alan Wake』と『Control』の物語がどのようにつながっているのかは最近の特集をご覧ください。また、『Alan Wake 2』はEpic Games Storeで入手できることをお忘れなく。