『餓狼伝説 City of the Wolves』初心者ガイド

2025.3.31
執筆:寄稿者:トーマス・ワイルド

もしあなたがアメリカ人なら、『餓狼伝説 City of the Wolves』がどれほど大きなニュースであるのか、そもそも近年のSNKの復活劇になぜ皆が沸き立っているのかピンとこないかもしれません。

SNKは格闘ゲームの草分け的開発会社のひとつですが、一般的にこのジャンルは気運に左右される傾向があります。現在、このジャンルの傑作タイトルの大半は、30年(あるいはそれ以上)の歴史を持ち、アーケード全盛期にまでさかのぼります。

しかし、日本、中国、韓国、メキシコ、ブラジルでは『ザ・キング・オブ・ファイターズ』(特に『ザ・キング・オブ・ファイターズ '98』)や『SAMURAI SPIRITS』で育ったアーケードゲーマー世代がいるのに対し、アメリカのプレイヤーは耳にしたことすらないかもしれません。SNKの作品は、『ストリートファイター』『Mortal Kombat』ほど北米で人気になることはありませんでした。

SNKがアメリカであまり知られない存在だったのには、さまざまな要因があります。最盛期のSNKは独自のハードウェアに大きく依存していました。たとえば、同社のトレードマークである複数のゲームが収録されたアーケード筐体や、非常に高価だったことで知られる家庭用ゲーム機「ネオジオ」などです。また、『餓狼伝説 WILD AMBITION』など一部を除いて、SNKが3D時代に本格的に対応することはなく、他社コンソールへの移植も限定的でした。こうした要因のすべてが、1990年代のゲーム業界の変化とともに積み重なり、最終的に2000年の経営破綻につながりました。その後15年間にわたり、SNKの名前と遺産は紆余曲折を経ましたが、2016年の『THE KING OF FIGHTERS XIV』で大きな復活を遂げることになります。

しかし、その経営破綻の直前、旧SNKは同社のタイトルのなかでも特に評価の高い作品を世に送り出しました。1999年の『餓狼 MARK OF THE WOLVES』もそのひとつで、この作品が(当時は)『餓狼伝説』シリーズ最後の作品となりました。

現在では、他のシリーズへのゲスト出演を通じて独自の知名度を確立したテリー・ボガードとギース・ハワードというキャラクターを生んだシリーズとして、『餓狼伝説』は認識されているかもしれません。テリーは最近では『ストリートファイター6』のDLCとして配信されたほか、『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』にSNK代表として参戦し、その他『FIGHTING EX LAYER』などの作品にも登場しています。一方のギースは『鉄拳7』にゲスト参戦し、大会でも頻繁に使用されるキャラクターとなっています。
餓狼伝説『City of the Wolves』- テリー
かつて『餓狼伝説』はSNKの看板格闘ゲームであり、カプコンの『ストリートファイターII』のベテラン開発陣が制作に携わっていました。日本ではもともと『餓狼伝説』というタイトルで発売され(訳注:英語版は『Fatal Fury』のタイトルで発売)ました。物語は、幼い頃に父親をギースによって殺されたテリーが、復讐に向かう旅から始まります。

修行を積んだテリーは故郷のサウスタウンへ戻り、弟のアンディ、そして親友のジョー・ヒガシと共に格闘大会「キング・オブ・ファイターズ」に参戦します。テリーは大会決勝でギースと対戦する権利を勝ち取り、激闘の末にギースを撃破し、ギース自身が所有する高層ビルの屋上から蹴り飛ばします。

『MARK OF THE WOLVES』の物語は、それから10年後が舞台となっています。テリーはその間、サウスタウンでギースの息子ロックの養父となり、自身の格闘術の一部を彼に伝授します。そして、長らく開催されていなかった大会「キング・オブ・ファイターズ」の復活が謎めいた人物によって宣言されると、2人は共に参加を決意します。

ここで新しいファンの方のために記しておくと、SNKの『ザ・キング・オブ・ファイターズ』シリーズは、重要な大会の名前を共有しているものの、シリーズとしては完全に独立した時間軸で展開されています。この設定により、『ザ・キング・オブ・ファイターズ』では生存しているギースが、『City of the Wolves』ではすでに故人となっています。また、『龍虎の拳』に登場した「KOF」(ザ・キング・オブ・ファイターズ)チームの面々が、20歳ほど若く描かれているのはこのためです。
餓狼伝説『City of the Wolves』- 10人のキャラクター
ディレクターの小田泰之氏は、最近のインタビューでこう話しています。「『KOF』『餓狼伝説』『龍虎の拳』とは別の次元に存在しています。『KOF』の世界では、キャラクターたちは歳を取らないんです」

小田氏はもともと、1993年から2000年にかけてSNKに在籍し、『餓狼伝説SPECIAL』をはじめとする同社の格闘ゲームの開発に携わっていました。その後、小田氏は多く作品を手がける日本のデベロッパー「ディンプス」で14年間勤め、『ストリートファイターIV』などのタイトルの開発に貢献。2014年にSNKが復活を遂げると、同社に復帰しました。『餓狼伝説 City of the Wolves』は、小田氏がSNKに復帰して以来、ずっと実現を目指してきたプロジェクトであると伝えられています。

事実、2000年には『MARK OF THE WOLVES』の続編を開発中でしたが、SNKの経営破綻に伴い制作は中止。少なくとも20年間にわたり、その『餓狼2』プロジェクトのものだと噂されるコンセプトアートがファンの間で出回っていました。『City of the Wolves』の制作がついに確定した今、私たちはその幻の続編がどのようなものとなり得たのか、小田氏本人にぜひ尋ねたいと思いました。

「当時、『MARK OF THE WOLVES』の続編はたしかに開発されていました」と小田氏は言います。「ただ、シリーズ最終作からかなりの間が空いてしまったため、当時の企画のまま続編を作るのは難しく、ほとんどのプレイヤーにはわかりにくいものになってしまうと思います。そのため、『餓狼伝説 City of the Wolves』は『餓狼伝説』シリーズ全体の続編として制作しており、同時に『MARK OF THE WOLVES』の幻の続編も参考にしています」

『MARK OF THE WOLVES』の終わりに、ロックは新たな大会で優勝し、主催者であるカイン・ハインラインと対面します。カインは、ロックの亡き母メアリーは自分の姉であること、サウスタウンを支配するために大会を開催したことを明らかにします。さらに重要なことに、カインはロックに、メアリーは生きており、サウスタウンのどこかで正体不明のライバルに囚われていると告げます。『餓狼伝説 City of the Wolves』の物語は、その直後から始まります。

「今作では、物語はロックを中心に展開します」と語るのは、ディレクターの小田泰之氏。「ギースの死後、サウスタウンの覇権をめぐり、カインらが水面下で動き始めるのです」

『餓狼伝説 City of the Wolves』には、『餓狼伝説』シリーズの複数の主要メンバーも再び登場します。『餓狼伝説 City of the Wolves』の主要キャラクターには不知火舞が含まれているほか、アンディとジョーはDLCのシーズン1で登場する予定です。
餓狼伝説『City of the Wolves』- DLC
「彼らはそれぞれ弟子を取り、立派な大人へと成長しました」と小田氏。「30代となった今、彼らは格闘家として全盛期を迎えており、その戦闘スタイルは熟練度の高まりに応じて進化しています」

小田氏はさらにこう続けます。「オンラインメディアを通じて物語を支えていくことも計画しています。プロローグのナレーションには、かつてテリーの声を演じた橋本さとしさんに担当していただきました」

『餓狼伝説 City of the Wolves』は4月24日(米国時間)にEpic Games Storeでリリース予定です。