『Football Manager 2024』のマイルズ・ジェイコブソン氏、サッカーシミュレーションゲームの過去、現在、未来を語る

2023.11.13
執筆:寄稿者:フィル・イワニウク
「先週、マドンナのライブを見に行きました」Sports Interactiveのスタジオディレクターであるマイルズ・ジェイコブソン氏が、同スタジオのストラトフォード本社で語ってくれました。

「まるでウェストエンドのショーを見ているようでした。 全体を通して物語として構成されているので、マドンナのさまざまなキャリアの段階を見ることができるのです。 ショービジネスで生き抜くために幾度も順応してきた様子、そして幾度も変化してきた様子を考えさせられます」

『Football Manager 2024』のファンである私の頭は、すぐにはポップ界の女王と、40年目を迎えるSports Interactiveの比類なきスポーツシミュレーションシリーズとのつながりを導き出すことができませんでした。 しかし、会話を進めているうちに、どちらの場合も明白な挑戦があったことが分かりました。つまり、順応するか、朽ち果てるかです。

未熟や、いじわるな観点からすると、『Football Manager』が、急速に革新的な変容を遂げているとは思えないかもしれません。 サッカークラブを管理し、選手と契約し、その選手をフォーメーションに配置し、シミュレーションされた試合で自分の決断が展開されるのを見るという意味では、1992年にリリースされた『Championship Manager』から基礎とプレゼンテーションのDNAが色濃く受け継がれていると言えます。

しかし、伝説的なNikeの広告に登場するロナウジーニョのように、一貫して高いレベルを維持するためには、スタジオ自体が順応する必要がありました。 Sports Interactiveの規模と構造やプロセスとパイプラインの歴史に、マドンナのような変化が見られるのです。 『Football Manager 2025』が、大きな飛躍を約束する中、毎年のリリースには慎重なこの業界において、『FM24』の素晴らしい新機能は、Sports Interactiveがどれだけうまく順応したのかの証明になるのです。 一部のコミュニティで『FM23』では大幅な落ち込みであると受け取られたことを考えると、これは特筆すべきことでしょう。
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『FM23』にはハードコアファンにとって十分な機能がなかったんです」と、ジェイコブソン氏は話します。 「Sports Interactiveが特定する『FM』シリーズをプレイする6種類のプレイヤー層を満足させられなかったのです。そしてそれには、理由があったのです。 要するに、失敗でした。 予定されていたことがあったのですが、アクションが起こされませんでした。実現しなかったのです」

「私のせいですよ。 失敗がある場合は、私に非があります」

ジェイコブソン氏がSports Interactiveの失敗は個人的に責任を持ち、成功した場合にチームを称えるのを聞くことは、驚きではありません。 試合後の詮索的なインタビューで、Stone Islandのジャケットを着た穏やかな口調の監督が、敗北後に戦術的失敗を認めることでプレイヤーを養護し、その1週間後の勝利の際にはチームを称えることに代表されるように、結局のところ、このスタジオはサッカー文化のあらゆる面をシミュレーションしているのです。

『FM23』は、決して粗悪なゲームではありません。 アカデミー選手の正確な描写、エージェントとの気が滅入るような交渉、そしてもちろんピッチ全体をカバーするミッドフィールダーからイギリスのEU離脱まですべて、『FM23』では、不可能とも思えるような詳細に渡ってサッカーのエコシステム全体のシミュレーションが実現されており、それまでのシリーズと同様に感動的なゲームに仕上がっているのです。 ユーザーによるレビューは大半が好評です。 しかし、ジェイコブソン氏が指摘したように、13%が批判的です。

「ゲームに必要であった機能が実装されていなかったため、多くのプレイヤーが当然のごとく不満を感じました。 そのため、『FM24』では、全プレイヤー層の心理を確実に見据えることにしたのです」

「それぞれの機能を最初の段階で1ページにまとめました。 そしてそれは、どのプレイヤー層がその機能を楽しめるかに言及している必要があります。 6種類のプレイヤー層全員が、機能を楽しむ必要はないのです。 3種類のプレイヤー層が楽しむ機能があり、残りの3種類のプレイヤー層が他の機能を楽しむことができれば、それでいいのです」

近年のSports Interactiveで起こった変化は、プレイヤー層の区分けだけではありません。 より広いゲーム業界と同様、Sports Interactiveは以前、ウォーターフォール型モデルの開発哲学で取り組みを行なっていました。これは、あるひとつのチームがゲームの要素の構築を完成させたら、次のチームに渡し、これが開発ラインの最後まで続き、最終的な製品になるという開発モデルです。

ライブサービスゲームの出現で、多くのスタジオがウォーターフォールモデルからアジャイル開発に移行し始めています。 これは、お互いを待たせるのではなく、さまざまなチームの関係者が全体像に向かって一緒にイテレーションを行うというアプローチです。 チーム同士が基本となる初期ビルドでコラボレーションを行い、それを拡張していきます。 スタジオによっては、これはプレイヤーの意見を早い段階で取り入れ、購入後に絶えずパッチや拡張を行っていくことを意味しますが、『Football Manager』はこの方法を取っていません。
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ファンは常に、リリース日に手にしたゲームが最終版であるという期待を持っています。 『FM』はライブサービスを提供している製品ではありません。 シングルプレイヤーゲームとしての40年間の伝統を守ってきており、そのシリーズの殆どが、かつてのPCゲームの販売方式であった、DVDケースや途方もなく役に立たない巨大なボックスに入って、物理的メディアとして販売されてきたのです。 思うに、『FM』のファン層は、早期アクセスや月間のサブスクリプションなどのコンセプトは、本シリーズが支持するものと矛盾していると考えるでしょう。

しかし、ジェイコブソン氏とそのチームは、アジャイル開発の要素を実施することができ、従来のウォーターフォールモデルの開発の落とし穴を回避するようなハイブリッドの開発パイプラインを達成しました。  

「現在は、アジャイル開発を少し利用しつつ同時に私たちの秘密の手法を使う、機能ポッドチームと呼ばれるチームを有しています。 たとえば、ゲームプレイ機能の場合──私たちのタイトルにおいては、ゲームプレイは選手の移籍や財務面などの側面を指しますが──機能ポッドには1~2名のゲームプレイプログラマーとUIプログラマーが1名いる、という感じになります」

「UIが必要な場合、その機能のデザイナーがポッドに入ります。UIデザイナーがいる場合もあります。 プロデューサーがいて、QAもいます。QAは、2週間集中作業で、機能ポッドで直接チームとして働きます」

チームはこれらの集中作業を何回行えば機能を完成させられるかを割り出し、それに従って全体の開発タイムラインを調整します。 このハイブリッドのアプローチのバランスがどこにああるかに関わらず、『FM24』を見れば、うまくいっていることは明らかです。 改良された選手の移籍競争、セットピースのビルダー、プレイヤーの目標などの膨大な新機能に対するコミュニティの反応は、非常に好評でした。

嬉しいサプライズとも言えるこの評価は、リリース前のベータ版でも同様でした。 以前の評価と異なり、今回は不満の「ふ」の字も見られなかったのです。 これは、Sports Interactiveが『FM25』で大規模な変更を計画していることを考慮すると、さらに驚きです。

これは誇張でもありません。 『FM24』『FM25』両方の計画の詳細を紹介したブログ投稿にて、ジェイコブソン氏は今年のバージョンを『この種の最後のものだ』と説明しています」

来年から、『Football Manager』はUnity Engineに移籍します。 これは体験の中核となる要素、すなわち目の前でサッカーの試合が繰り広げられるマッチエンジンビューを根底から変えることになる大きな変化です。 本シリーズは今まで、グラフィックカードが溶けてしまうような最高のグラフィックと、草の1本1本まで最高の忠実度でレンダリングのせいで、『FIFA』のプロデューサーが夜も眠れなくなってしまうようなゲームではありませんでした。 3Dビジュアルはあくまでも機能的なものだったのです。 画面にフォーメーションを表示し、最高の選手による素晴らしいプレイと最低な選手によるディフェンスの失敗を見せるためのものでした。 しかし、現実の描写には程遠く、改善の余地は十分ありました。

これが変わろうとしているのです。 ジェイコブソン氏はこの先、『FM25』とそのシリーズを、忠実度とアニメーションのクオリティの両方において「テレビで見るようなサッカー」にしたいと考えています。

この決断は、『FM』のコンセプト的に興味深いジレンマを生み出します。 このゲームの強みのひとつは、自分の想像で空白を埋めることができたことにありました。 プレイヤーは、選手のデータが記載されたスプレッドシートから選手のイメージを構築します。 更衣室での無駄話で選手のボディランゲージを想像します。 トロフィーがたくさん飾られた廊下を通って自分のオフィスに歩いていくのを思い描きます。 こうすることで、過保護にばらばらなカットシーンを見せる『FIFA』のキャリアモードよりも、『FM』では、プレイヤーがより積極的にサッカーの世界に参加するのです。 そのすべてを考慮すると、『FM25』が多くを見せすぎてしまうという危険はあるのでしょうか?
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「それでも、その世界を構築に積極的に参加することになります」とジェイコブソン氏は語ります。 「アニメーションの改良は、人々の想像力を邪魔しない程度に行おうと思っています。 脳というのは不思議なものです。 しかし、脳が『おや、何かおかしいね』と思い出すと、ゲームから引き離されてしまいます。 素晴らしいサッカーのアーケードゲームがありますよね? 『FC24』の仕上がりは素晴らしいです。 『eFootball』もよくできています。 『UFL』は面白そうです。 しかし、これらは本物のサッカーではありません。 サッカーシミュレーションでもありません。 『FC24』を90分間プレイすると、恐ろしいほど得点が入ります。 一方で、私たちのゲームはサッカーシミュレーションです」

「チームへの指示は、サッカーのスタンドの後ろからカメラを構えているかのようなアングルにして、本物のサッカーなのか、ゲームなのか分からないようにするように、ということでした。 しかし、サッカーの試合を見ているときに、想像力を使いますか? 『ああ、あの選手にパスをしていたとしたら? あの選手が、もう少し上でセーブできていたら…』などと考えていませんか?皆さんの想像力をそのように働かせていただきたいのです」

「プレイヤーはマネージャーなので、チームが何をもっとうまくできたのかを考えることになるのです プレイヤーはここに注力すべきです。 そのため、想像力は引き続き非常に重要な要素となりますが、想像力によって本物でないことを思い起こさせるような時間を取り除こうとしているのです」

『Football Manager 24』は、Epic Games Storeで入手できます。