ヒーローシューター『FragPunk』でルールを破れ

2025.3.10
執筆:寄稿者:ジェイソン・ロドリゲス
ヒーローシューターというジャンルのゲームの多くは、多彩なキャラクターの中から一人を選択し、その能力を駆使して相手チームを倒すという実証済みのやり方を踏襲する傾向があります。キャラクターは通常、タンク、ダメージ、サポート/ヒーラーなど、決められた役割に分類されます。しかし、杭州を拠点とするBad Guitar StudioとNetEaseが開発した、近日リリース予定の基本プレイ無料のヒーローシューター『FragPunk』は、プレイヤーがゲーム独自のルールを破るように仕向けることで、常識を覆しています。

たしかに、プレイヤーがさまざまな武器を使い、キャラクタースキルを発動させ、マップの目標を達成するという点では、ほかのヒーローシューターと似ています。しかし、『FragPunk』ならではの「ルール破り」のコンセプトは、シャードカードシステムを通じて明確に示されています。合計169枚のパワーアップカードとほんの少しの運によって、ゲームプレイのメカニクスやマップの特徴が変化し、戦局を一変させるのです。

私たちは最近、これらのコンセプトを深く理解するため、『FragPunk』の早期アクセスビルドをプレイしました。その後、クリエイティブディレクター兼プロデューサーのシン・チャン氏と、ゲームモードデザイナーのデジョン・スン氏にインタビューし、彼らのシューターがほかのゲームと一線を画している理由を伺いました。

『FragPunk』のメインゲームモード「シャードクラッシュ」は、従来の5対5による『Counter-Strike』スタイルの試合で、攻撃チームは爆弾を設置可能な場所に仕掛ける必要があります。一方、防衛チームは爆弾を解除するか、敵を一掃しなければなりません。こうしたメカニクスは、これまでにチームベースのシューターをプレイしたことがある人には馴染み深いものです。しかし、『FragPunk』は、試合開始時やラウンド間にランダムに選ばれる、ユニークな効果を発揮するカードを導入することで、さらに工夫を凝らしています。

カードの選択肢は169枚あり、一度に表示されるのは3枚だけであるため、最初はこのシステムが少し複雑に感じられるかもしれません。さらに、その過程で「シャードポイント」と呼ばれるリソースをチームで配分する必要があります。開発陣は、チーム内のプレイヤー全員が常に同じ考えを持っているわけではないことを理解しているため、本作のカードのメカニクスは、そうした制限を考慮して設計されています。
ヒーローシューター『FragPunk』でルールを破れ - 射撃
「私たちは、多くのプレイヤーが気軽にグループを組むことを知っており、ランダムにチームを組んだプレイヤーが試合中に無言でいるのは普通のことだと考えています」とチャン氏は言います。「そのため、プレイヤーがカードのそれぞれのアイコンをクリックするだけで、そのカードが好きか嫌いかを表現できるようにデザインしました。これは、[オンラインで見知らぬ人と]会話する際に気まずい思いをせずに済む、効果的なコミュニケーション方法だと考えています」

状況と手持ちのシャードポイントに応じて最適なカードを選ぶことで、チームが各ラウンドにどうアプローチできるかに新しい戦略的な層が加わります。たとえば、高低差が大きいマップでは、2段ジャンプが可能になる「ジャンプマスター」を選ぶといいかもしれません。また、敵チームのメンバーが高い場所から落下すると落下ダメージを受けるデバフ「ボロボロの膝」を選択するのも一つの手です。逆に、「跳弾」カードは弾丸を数回跳ね返せるので、狭いスペースで活躍します。一方、「貫通弾」は、壁を貫通させたい場合に有効な選択肢となります。

中には、実に奇妙で愉快な効果もいくつかあります。たとえば、「強制トリガー」カードは、ランダムな1人の敵に自動的にトリガーボタンを押させ、マップ上の位置を明らかにするというものです。一方で「キングエッグ」は、10秒間しゃがむと、体力を回復できる卵を1つ生成します。また、最大HPを増加させ、攻撃にHPを奪う効果を与える「血族の夜」もあります。さらに、チームが200ポイントのダメージを与えると、全員がHPを回復できます。そして忘れてはならないのが、「声の疾風」というカード。ボイスチャットで話し続けると、移動速度にボーナスが付きます。

『FragPunk』ではゲームのルールを破ることが奨励されているため、特定のカードを選択すると相手をイライラさせ、ちょっとした笑いを引き起こすことになります。その好例が「帰宅弾丸」で、敵が初めて攻撃を受けると、スポーン地点にテレポートされます。いずれの爆弾サイトも守備が堅いですか?心配無用です。「任意設置」を選べば、タイマーが延長されるものの、爆弾をどこにでも設置できるようになります。同様に、召喚されたミニオンがターゲットを攻撃する「火炎犬」や「闇の召喚師」、さらには死神を出現させて範囲内のプレイヤーを切り刻む「死神の抱擁」カードといった選択肢もあります。

多くのカードは、それぞれ単独で戦闘の流れに大きな影響を与えますが、中にはほかのカードと組み合わせて使用すると、より効果的なものもあります。プレイヤーは、一度発動すれば、ほぼ止められないチームになるような組み合わせを考えることが求められます。

「私が思いつく強力な組み合わせの一つは、『チャージジャンプ』カードと『バードマン』カードの組み合わせです」とスン氏。「これらはジャンプ力を向上させ、ADS中に落下速度が遅くなる効果を持っています。その狙いは、スナイパーを選択して空中で撃つことにあり、障壁の後ろにいる敵や、地上では見つけにくい敵を狙撃する時間が増加します。運がよければ、『舞い降りる正義』カードを手に入れて、空中での発射速度やリロード速度を上げられるかもしれません」

ラウンドごとに、新しく生成されたセットの中からカードを選べるので、アクションは常に新鮮です。「このシステムを採用したのは、緊張感と戦術的な深みが増すためです」とスン氏。「プレイヤーが十分な経験を積むと、カードの構成や全体の状況の変化、特に相手チームが選択したカードに注目するようになると考えています。ベテランプレイヤーは状況を慎重に分析し、[相手のカード構成に対抗するための]カードを考えるようになるはずです」

『FragPunk』には、リリース時点でサブマシンガンやショットガン、スナイパーライフルやマークスマンライフルなど、20種類以上の武器が登場する予定です。さらに、さまざまな種類の小型グレネードを発射するユーティリティガンもあります。武器デザインは現実世界のものに基づいており、デザートイーグルやカラシニコフAK-12などに似たオプションも用意されています。
ヒーローシューター『FragPunk』でルールを破れ - にらみ合い
「私たちは、リアルさと創造的な革新の間で意図的なバランスを取ることを目指しており、最終的な製品が単なる模倣ではなく、明確にオリジナルなものとなるよう努めています」とスン氏は語ります。「それでも、『現実世界』のものではなく『パンク』よりにするため、グラフィティの要素を銃に加えもしました。プレイヤーはステッカーやチャーム、その他のカスタマイズアイテムで武器を飾り、パンク文化の根底にあるDIY精神を反映させることができます」

特定の武器(重機関銃など)は、その極端な重量によりプレイヤーの機動性を低下させ、『FragPunk』のペースのハイペースなアクションには不向きだったため、最終的に採用されませんでした。ただし、軽機関銃はゲームに登場し、とても強力です。

『FragPunk』のもう一つの注目すべき特徴は、そのSF的な影響をユニークに取り入れている点です。本作の舞台は、未来の高度な技術が希少で、不均等に分布している世界です。そのため、一部のキャラクターはハイテクなガジェットを使用する特別な能力を備えているかもしれませんが、ほとんどの銃器は現代の銃を彷彿させるデザインとなっています。
ヒーローシューター『FragPunk』でルールを破れ - チーム
「アサルトライフルやショットガンのような銃器は、この世界では日常的な道具であり、信頼性が高く、大量生産されており、限られた資源を巡って戦う勢力にとっては身近な存在です」とチャン氏。「それに、『FragPunk』はシューターゲームですから、銃、特に現実世界の銃に似た武器が、ゲームプレイの特徴を引き出すのにもってこいなんです。また、銃のデザインを通して、それぞれの武器の特徴をプレイヤーに素早く感じてもらえればと思っています」

『FragPunk』の激しいアクションは、多彩なキャラクターによってさらに強化されています。彼らは「ランサー」と呼ばれるヒーローたちで、ユニークなスキルと能力を備えています。ランサーたちはそれぞれ、罠の設置やテレポートなどの得意とする特定の役割を持ち、そのプレイスタイルも大きく異なる傾向にあります。

たとえば、スパイダーはテレポーターを2つ設置し、チームがマップ内のほかのエリアに素早く移動できるようにします。サソリは隠れた状態でテレポートでき、敵の背後に回り込んで不運な敵を狙撃します。そして、工作員のシャドーは、クローキング装置を作動させるスキルを持っていますが、近接攻撃に限定されます。しかし、ダガービーコンを投げることでその場所にテレポートし、激戦の真っただ中に飛び込むことが可能です。

「私たちは、それぞれのランサーの見た目や特徴などについて議論する際に、多くの参考資料を集めました」とチャン氏は説明します。「ランサーの最終的なデザインを決定するとき、ほかの映画やゲーム、アニメに強く影響を受けていない個性的なキャラクターとして認識されるよう目指しました。例を挙げると、チャムはほかのメディアに登場する数多くのロボットを参考にしていますが、最終的なデザインは石でできたロボットで、ほかのキャラクターとはすぐに区別できるものになっています」
ヒーローシューター『FragPunk』でルールを破れ - リフ
ランサーにはそれぞれ独自のパークやアビリティがあるため、当然チームは顕著な問題を修正するために、何度もバランス調整やテストを行わなければなりませんでした。「ベータテスト中にプレイヤーから、『メテオ』というキャラクターに関して、彼女のスナイパー武器のスキルが試合で強すぎるというフィードバックを受けました」とスン氏。「当初は彼女のスナイパーライフルのダメージを弱体化させることを考えましたが、最終的にダメージの減衰を変更する方がいいと感じました」

「実際のスナイパーを目にすることなく、遠くから狙撃されたプレイヤーは不快なゲーム体験をすることになります」とスン氏が続けます。「ダメージの減衰を大きくすることで、メテオを操作するプレイヤーとその対戦相手のゲーム体験を損なわないように維持できました」

『FragPunk』は、Bad Guitar Studioの若い開発チームの多くにとって初めての本格的なタイトルであり、誰もがこのゲームの未来に大きな期待を抱いています。

「現在、『FragPunk』の世界にさらに詳細な物語を加える作業を進めており、『FragPunk Universe』を作り上げるという野望を持っています。このゲームにはシーズンがありますので、今後のアップデートで新モードも追加される予定です。今のところ、まだ新しいゲームモードのアイデアを模索している段階ですが、ローグライク要素が含まれる可能性が高いです」とチャン氏は語ります。

『FragPunk』はEpic Games Storeで入手可能で、基本プレイ無料バージョンであるため今すぐアクションに飛び込むことができます。