近日リリースのダークなローグライト『Witchfire』の謎
「The Astronautsのスタジオで働いている人以外、『Witchfire』とは本当な何なのかを理解している人は誰もいないのではないかと、心底思っています。あまり情報を公開していないので、当然のことですが。でもこの状況はもうすぐ変わり、皆さんは驚きを目にすることになります」
The Astronautsの共同創設者でありクリエイティブディレクターでもある、エイドリアン・フミラーシュ氏は、Summer Game Festで今夜紹介されることになる『Witchfire』の新しいトレーラーが、この発見の旅の一部となることを願っています。
「誤解されないように言及しておきますが、確かにこのゲームは銃や魔法を含むダークファンタジー設定の一人称視点シューターです。 しかし、私たちのアプローチは比較的ユニークだと思っています。 それが賢明な選択であり、プレイヤーに気に入っていただけるといいのですが。 もうすぐ分かりますね。9月20日(米国時間)はそれほど遠くない未来なのですから」
『Witchfire』の最近公開されたいくつかのトレーラーは戦闘に主に焦点を当てていましたが、今夜紹介されるSummer Game Festのトレーラーは、ゲーム内の探索に関連する要素を強調するために少々ゆっくり目のペースで始まります。
「(最近公開されたいくつかのトレーラーは)『Witchfire』がノンストップのアクションがぎっしり詰まったゲームであるような間違った印象を与えていました」フミラーシュ氏は語ります。 「そんなことはありません。 確かに非常に緊迫感のある戦闘もありますが、静かな探索、計画、熟考をする時間もあります。 そういう意味で言えば、『DOOM』よりもソウルシリーズにずっと近いのです」
トレーラーが始まって数秒は、敵や戦闘よりも、ゲームの景色や舞台といったものが映し出されます。 しかし、これは「魔女狩りが始まる」後半になると変わり、敵と熱狂的な戦闘のミックスが映し出されます。 トレーラーは、9月20日(米国時間)にゲームの早期アクセスが開始するというニュースで終わります。
The Astronautsの10名の開発チームにとって、これは、ほぼ7年がかりの開発の旅でした。 SFサバイバルタイトルとして開発が始まった『Witchfire』は、今日のダークファンタジーローグライトの一人称視点シューターへと進化を遂げました。 異端の魔法を使用して教会により作り上げられた不死身の魔女ハンターPreyerとして、プレイヤーは銃と魔法を利用して悪名高き魔女を狩って倒します。
SFサバイバルからダークなシューターへの開発の旅への変更は、舞台設定、トーン、ジャンルの変更と同じくらい重大なことでした。
最近になって、開発チームはゲーム内の戦闘をアリーナスタイルからオープンワールドに変更することを決定しました。『Witchfire』は完全なオープンワールドゲームではありませんが、スタジオがオープンワールドレベルと呼んでいる要素が現時点で実装されています。つまり、特定のエリアをどのように、そしてどのような順序で探索をするかは、プレイヤー次第であるということです。『Killing Floor』などに類似したアプローチからこの新アプローチへ変更したことにより、大幅な作業が発生し、早期アクセスを今年に延期する決定へとつながりました。
「それはゲームにとって正しい選択でした。しかし、それに合わせてデザインするのは、厄介…ではなくて、やりがいのある仕事となりました」フミラーシュ氏は説明します。 「追加される多くの敵をどのように処理するかという技術的な課題というだけではなく、ペースの問題だったり、有利となる遭遇のチャンスが増加かするという純粋にゲームプレイ的な課題です」
しかし、この決定はゲームを単に向上させただけでなく、「異なった、より良いゲーム」になったとフミラーシュ氏は語っています。
「私は(心理学者のエドワード・デシとリチャード・ライアンの)自主性、能力、関連性の必要性によって引き起こされる内発的動機付けに重点を置く自己決定理論に強く賛同しています」フミラーシュ氏は話します。 「想像できると思いますが、ワールドをオープンにすることで自主性の助長が大幅に向上し、能力につながるより多くの手段が提供されます。 ゲームの発売が1年ほど延期になってしまったとはいえ、自分達のこの決断に非常に満足しています。」
フミラーシュ氏とThe Astronautsの開発チームが『Witchfire』に行っている作業のモティベーションのいくつかは、驚くほどさまざまなインスピレーションやデザインコンセプトのミックスに基づいています。
たとえばフミラーシュ氏は、このゲームがローグライトを嫌うプレイヤーのためにローグライトとしてデザインされているのだと、昨年Unreal Engineのチームに話しています。
より直近のインタビューでは、彼にとってローグライクとローグライトは、自分が一生懸命取り組んで手にしたものを失う恐れによって高まる感情が中心となっていると話していました。
「この感覚は間違いなく『Witchfire』に存在しています」フミラーシュ氏は話します。 「遭遇のランダム化など、その他よく見られる要素も多く存在しています。 一方で、私たちのデザインではかなり新鮮な要素もいくつか考えつきました。 まだ明かす準備はできていないのですが、漠然とお話しすると、多様性のためにRNG要素(ランダム要素)を持ちつつも、プレイヤーがあらゆるものとの遭遇をマスターできるゲームという解決不可能な目標を解決しようと試みました」
さらに氏は、チームと『Witchfire』にとって、『Souls』系のゲームが、間違いなくもっとも大きなインスピレーションになったことを付け加えました。
「フロム・ソフトウェアのゲームは、ここ数十年間のゲーム歴史で起きたもっとも素晴らしい出来事であり、私たちは彼らのゲームに魅了されていることを否めないのです。」フミラーシュ氏は続けます。 「その他すべてからも、より小さな規模ではありますが影響を受けています。 Bungie社は『Destiny』においてガンプレイを非常にうまく表現しているので、このゲームのガンプレイを研究しました。 恐れを知らない物語がどのようなものであるかを理解するため、『ベルセルク』を読みました。 『Painkiller』に戻り、「Black Tarot」にまだ意味があるかどうかを考慮しました。 このような感じで、何を導入し進化させるかであれ、何を避けるかであれ、常に議論し、学ぶことがあるのです」
物語を中心に展開するゲームである『The Vanishing of Ethan Carter』をも手がけたチームのファンにとって関心の高いトピック、つまりゲームのストーリーは、興味をそそる議論のもう一つのポイントです。
The Astronautsはもともと、フミラーシュ氏とチームが、『The Vanishing of Ethan Carter』のような物語を中心とするゲームの開発に注力できるように設立されたスタジオです。しかし、BAFTAで賞を受賞し、今でもファンの間で高い評価を得ている2014年のこのホラーアドベンチャーゲームで、フミラーシュ氏は、スタジオがより幅広い開発に注力すべきかもしれないという事実に気付かされたのです。
「『The Vanishing of Ethan Carter』の仕上がりは満足に思っていますが、努力をしたにもかかわらず、これがテンプレートにはならなかったのだと気付いたのです」フミラーシュ氏は説明します。 「つまり、このゲームの構造を利用して、他の物語を構成することができないのだということです。 次のステップが何であるか、そして物語を中心とするゲームのジャンルを進化させる方法は分かっていましたが、それには昔も今も非常にお金がかかり、大きなリスクを伴うビジョンでした。 そこで別の方向性を模索し始めました」
「私たちにとって新たなサイクルの始まりだったのかもしれませんね。 というのも以前は、アドベンチャーゲームをデザインした後、次のプロジェクトは常にアクションでした。 『Teenagent』の次は『Katharsis』で、『The Prince and the Coward』の次は『Painkiller』、そして『Come Midnight』の次は『Bulletstorm』という具合に…つまり『The Vanishing of Ethan Carter』のような物語中心のゲーム開発の次のプロジェクトは一人称視点シューターになるというのがどうしても避けられなかったのかもしれません」
結局のところ、スタジオの方向性はThe Astronautsという名前のインスピレーションに深くつながりがあると氏は語ります。
「訪れてみたい世界があれば、訪れることができる。 実際にそれが理由で、The Astronautsという名前にしたのです。 未知への旅、新しい世界を発見する冒険を重視するためですね」
『Witchfire』におけるストーリーの語り口は、J・R・R・トールキンやアーネスト・ヘミングウェイといった作家にインスピレーションを受けているようです。 早期アクセスの初期は、伝承や物語よりもゲームプレイや全体の雰囲気に注力して改善が行われますが、この早期アクセス中には物語も拡張される予定です。
「プレイヤーの皆さんにこのワールドをアピールする方法に自分が満足しているかどうかは、まだはっきりわかりません」フミラーシュ氏は話します。 「言えることは、ワールドデザインには二つの主要なアプローチを取っているということです。 一つ目はヘミングウェイからで、具体的には氷山の理論です。 つまり、プレイヤーにすべてを明かさないものの、私たちはこのワールドのすべてを知っておかなければならないということです。 近道も回答の余地がない質問もあってはなりません。 例えば、魔女しか魔法を使えないという理由はプレイヤーに明かされていなくても、クリエイターである私たちは知っている必要があり、完全な背景ストーリーを用意していなければなりません。
「二つ目の柱となるのはトールキンの「遠くの山々」のアプローチです。 彼の言葉を直接引用しましょう。 トールキンは一通の手紙の中で、こう語っています。『『指輪物語』の魅力の一部は、背景に大きな歴史が垣間見えることだと思います。訪れたことのない島を遠くから眺めたり、太陽に煌めく霧の中にある遠い街の塔を眺めたりといった魅力です。 再び手の届かない新たな景色が明かされない限りは、その地に行くことで魅力が壊れてしまうのです』
「ご覧の通り、彼のアプローチの中にも、謎の中には謎のまま置いておくべきものがあるという確信において、ヘミングウェイの氷山の理論が少々うかがえます。 しかし、トールキンが「背景の歴史」を与えることで、世界観がそれだけリアルで興味深いものになると信じていることは確かです」
この「背景の歴史」が何であるかはまだ分かりませんが、フミラーシュ氏によるショートストーリーとさまざまなポーランド芸術家により創り出された素晴らしいアートプリントという形で、興味深いヒントを垣間見ることができます。 どちらもゲームのウェブサイトに載っています。
「ゲームにおいて私が最もワクワクするのは、さまざまな世界を体験することができるというアイデアです」フミラーシュ氏は続けます。「宇宙の海賊になったり、超能力を持った刑事になったり、または教会の魔女ハンターになったり。ゲームが物語を中心としているのか、メカニズムを中心としているのかは関係ありません。その世界が本物のように感じられることが重要なのです。
「つまり、『Witchfire』は、シューターに明確に分類されるわけですが、私たちは、その世界観や物語にも力を入れているのです。 これにより、ゲームのストーリーなどまったく気にしないというプレイヤーの体験でさえも向上させることができると思っています」
『Witchfire』は、あと数か月で、早期アクセスとしてEpic Games Storeに登場しますが、フミラーシュ氏とチームは、フミラーシュ氏がゲームにとって非常に重要であると頻繁に言っていた「オープニング部分」に注力しています。
フミラーシュ氏に『Witchfire』のオープニングが、彼の期待通りに仕上がっているか、優れたデザインのゲームにおける4つの主要な要素、自律性、学習性、能力、関連性の一部またはすべてに触れているかを聞いてみました。 彼によると完璧なオープニングは、『Return to Monkey Island』で見られるようなものとのことです。
「いい質問ですね。ですが、オープニング部分は作業を始めたばかりなので、まだ答えることはできません」と彼は続けます。「確実なのは、最高のオープニングにすることが絶対であるということです。私自身は、チュートリアルは過大評価されていて、気が散るし、イライラさせる要素だと思っているのでおかしな話ですが、同時に適切な導入部を提供するべきだと考えています」
「セリア・ホーデントは、私が非常に尊敬している作家のひとりです。 彼女の著書である『The Gamer's Brain』から直接引用しましょう。 『…ハードコアなプレイヤーがチュートリアルの存在に文句を言い、チュートリアルなどいらないと言ったとしても、ゲームに適切なチュートリアルがない場合、プレイヤーはゲームの重要な要素を誤解したり、完全に省略したりすると、UX(ユーザーエクスペリエンス)テストが示しています。このせいで、ゲームがネガティブな目で見られてしまうのです』
「『Witchfire』はゲーマーのためのゲームです。そのため、このゲームの導入部では、プレイヤーが既にシュータージャンルのゲームをプレイしたことがあると仮定して作成されます。 しかし、ワールドやゲームのメカニズムについてさらに学ぶ際に、情報過多になり過ぎないように、オープニング部分を厳選していくつもりです」
『Witchfire』の早期アクセスは9月20日(米国時間)に開始しますが、Epic Games Storeで今すぐゲームをウィッシュリストに入れることができます。