『鳴潮』のインタビュー:KURO GAMESがリリース当時を振り返り、今後を展望

2024.8.26
執筆:寄稿者:ジェス・レイエス

リリースから数か月が経過した今でも、『鳴潮』は高収益のガチャゲームとして快進撃を続けており、『原神』などの類似タイトルと肩を並べながら上昇気流に乗っています。 とはいえ、開発元のKURO GAMESにとって初となるグローバルリリースは一筋縄ではいかず、ローンチまでにかなりの労力を要しました。

先日、私たちはKURO GAMESとのインタビューを行い、リリース前に開発チームが直面した課題や、『鳴潮』の今後の計画について話を伺いました。
 

ストーリーにおける課題


リリースに先立ってKURO GAMESは、YouTubeに開発者アップデートを投稿し、『鳴潮』の最初のクローズドベータテストを実施してから半年の間に、何を行っていたかを公開しました。 その際、ACGコンテンツクリエイターのRexlent氏とSandfish氏とのインタビューで、チームが行った変更について説明し、オリジナルストーリーの90%を刷新したことが明らかになりました。

KURO GAMESは今回のインタビューの中で、こうした変化の必要性を繰り返し述べています。

「昨年4月のテスト終了後、キャラクターデザインやストーリーなど、IPに関連するコンテンツについて、プレイヤーから多くのフィードバックが寄せられていることに気づきました。 私たちはこのフィードバックを踏まえ、ストーリーに大幅な調整を加える決断に至りました」とチームは説明します。 「以前と比べて、新しいストーリーでは終末的な雰囲気が抑えられており、主人公である漂泊者に焦点を当てることで、プレイヤーがゲームの世界に没入しやすくなっています」
鳴潮 - 再会
開発者アップデートで、KURO GAMESはチームが『鳴潮』とそのオリジナルストーリーに取り組み始めてから2、3年になると述べていました。 その後、KURO GAMESは、最初のクローズドベータテストから半年の間に、ストーリー(とそれに伴うあらゆる複雑な問題)を書き直したことになります。

「ストーリーを改善するうえで、私たちが直面したことのひとつは、声優やアニメーションを含む大量の補助的演出を完全に作り直さなければならないということでした」とチームは語ります。 「どのチームにとっても大きな挑戦となりましたが、なんとかやり遂げることができました」

時間が限られていたにもかかわらず、2回目のクローズドベータテストで『鳴潮』のストーリーは新しいものになりました。 『鳴潮』の舞台は世界滅亡後の世界のままですが、緊張感は以前ほど顕著ではありません。そうはいっても、滅亡が遠い悪夢のように思える『原神』よりも、悲観的な世界であることは間違いありません。

しかし、刷新にはそれだけの価値がありました。 「調整されたストーリーについて、プレイヤーから好意的なフィードバックが多数寄せられ、非常にうれしく思っています」と東氏は続けます。
鳴潮 - バナー 1 2
ネタバレを避けるために、同スタジオは『鳴潮』の方向性や、KURO GAMESが何を考えているのかについては多くを語りませんでした。 しかし、プレイヤーは「かなり壮大な世界を期待できる」とほのめかしています。

アクション満載


『鳴潮』の前にKURO GAMESは、同様のスタイルのガチャRPGである『パニシング:グレイレイヴン』を開発しました。本作は中国でデビューを飾ってから日本で公開され、最終的には全世界でリリースされました。 『パニシング:グレイレイヴン』のアクション志向の戦闘を『鳴潮』にも取り入れるという選択について問われると、戦略的なマーケティングよりも、チームの強みが関係しているのだとKURO GAMESは答えています。

『パニシング:グレイレイヴン』での成功体験を『鳴潮』に取り入れて、プレイヤーに爽快感のある戦闘体験を提供しない手はありませんね。 『鳴潮』の開発チームの大部分は、『パニシング:グレイレイヴン』のメンバーで構成されているんです」と東氏。 「そのため、『コンボ数が多く、難易度の高いアクションゲームに重点を置いている』というよりも、私たちの強みを活かして、深みのある楽しい戦闘システムをプレイヤーに提供することを目指していると言った方が正確でしょうね」
鳴潮 - 忌炎 攻撃
『鳴潮』の各キャラクターには、基本的な攻撃、スキル、必殺技に加えて、回避反撃や空中コンボといった動きが数多く用意されており、プレイヤーはそれらを組み合わせることでダメージを最大化できます。 成功させると達成感がありますが、(PCや家庭用ゲーム機とは対照的に)小さく窮屈なモバイル画面では、このようなハイレベルな技を達成するのが難しいかもしれません。 モバイルインターフェースは、KURO GAMESがアップデートで継続的に取り組み、改善している機能のひとつであると同スタジオは説明します。

「複数の部分から成る骨格アクションのパフォーマンス、ターゲット選択アルゴリズムのパフォーマンス、特殊効果の更新の戦略など、最適化には多大な労力を費やしています。 最近は、プレイヤーたちもこれらの最適化に気づいているようで、私たちもとてもうれしいです」

世界へ飛躍


『パニシング:グレイレイヴン』によって、KURO GAMESはアクション満載のゲームを制作する経験を豊富に積みました。 一方、そのダウンロード数はそれほど多くはありません。 『パニシング:グレイレイヴン』は、モバイルアプリストアとスタンドアロンのPCダウンロードでしか入手できず、Epic Games Storeをはじめとするプラットフォームでは手に入りませんでした。

『鳴潮』でKURO GAMESが目指したのはグローバルリリースであり、それはチームの成長を意味しました。

「投資額という観点からも、『鳴潮』はたしかに、KURO GAMESが手がける最大規模のゲームです。 プロジェクトの意義という点で言うと、私たちが行っていることの多くは、KURO GAMESの歴史上前例のないものです」とKURO GAMESは語ります。 「これを実現するために、私たちは独自のグローバル配信チームとローカライゼーションチームを築き、世界中のプレイヤーに高品質なゲーム体験をお届けできるよう継続的に取り組んでいます」
鳴潮 - 長離
グローバル配信チームの成長によって、KURO GAMESは『鳴潮』を世界中に売り出すことに成功し、ローカライゼーションチームによって、テキストをターゲット市場向けに翻訳することができました。

『パニシング:グレイレイヴン』『鳴潮』はいずれも、KURO GAMESが当分の間サポートを継続したいと考えている長期的なプロジェクトになりますが、さらなる計画も除外していないとKURO GAMESは言います。 KURO GAMESによると、今後のプロジェクトも世界的に配信されるとのことです。すでに同スタジオ最大のタイトルで成功を収めているわけですから、配信しない理由はありません。

また、『鳴潮』は、KURO GAMESが初めてPlayStation StoreとEpic Games Storeで配信を実現したゲームとなっています。

『鳴潮』は、KURO GAMESにとって初となるセルフパブリッシングによるグローバルゲームであり、より多くの配信チャンネルを選択することは、このプロセスにおける実験となります」とKURO GAMES。 「Epic Games Storeのような大手ストアのチャンネルを活用することで、より幅広いプレイヤーにゲームをお届けし、プレイヤーのより幅広いニーズに応えることができるんです」

単なる真似ではない


miHoYoも、大ヒットタイトル『原神』をリリースした際に同様の道を歩みました。 『鳴潮』『原神』はいずれも、オープンワールドのガチャゲームで、アニメにインスパイアされたビジュアルと、その世界観とストーリーの背後にある豊かな伝承に特徴があります。 また、特定のレベルアップ素材を集めて、キャラクターを強化するといったシステムも共通しています(ただし、これは決して『原神』『鳴潮』に限ったことではありませんが)。

『鳴潮』が大きく進化を遂げ、ライバルゲームとの差別化が図られているにもかかわらず、ファンは両者の類似点を指摘せずにはいられません。
鳴潮 - 舞台
『原神』についてどう思うかという質問に対するKURO GAMESの答えはこうです。「『原神』はすばらしいゲームです。 同じジャンルの作品ですから、『鳴潮』『原神』と比較されるのも当然のことです」

KURO GAMESは比較されることを恐れてはいません。

『鳴潮』は差別化を図るために多大な努力をしており、プレイヤーに新鮮なゲーム体験をお届けできると確信しています」と、KURO GAMESはチーム全体について述べています。 「例を挙げると、ゲームプレイの核となる機能のひとつに音骸システムがあります」

音骸システムによってプレイヤーは、残像(『鳴潮』のモンスター)を倒した際にそのアビリティを吸収し、バトルで発動できるようになります。 『鳴潮』でプレイヤーは、まだ訪れたことのないマップの隅々を探索し、新しい音骸を吸収してより強力な装備を手に入れ、音骸図鑑を埋めることで報酬を獲得できるのです。 これは『鳴潮』ならではの特徴のひとつで、チームが今後、コンテンツの新鮮さを維持するために活用していくものになります。

「今後も、音骸システムがゲームの開発と継続的な運営において引き続き重要な焦点となり、プレイヤーにさまざまな音骸をお届けすることになります」とKURO GAMESは述べています。
鳴潮 - 漂泊者 透かしなし
また、『鳴潮』はプレイヤーからのフィードバックに基づいて改善を続けており、新しい1.2アップデートでは、プレイヤーに星5の無料キャラクターが提供されました。 KURO GAMESはこれまでずっと、ゲームを改善する主な動機とインスピレーションのひとつとして、ファンの存在を強調してきました。

「ゲームを応援してくださるファンの皆さん、本当にありがとうございます。 プレイヤーの態度が、ゲームが優れているかどうかの最終的な基準になることを私たちはよく理解しています。そのため、コミュニティからのフィードバックには常に気を配り、耳を傾けてきました。 私たちは、『鳴潮』のファンがこれからもコミュニティに参加し続けてくださることを楽しみにしています」

「プレイヤーの皆さんからいただく『鳴潮』に対するご意見を歓迎し、その内容に耳を傾け続けながら、ゲームを継続的に進化させていくつもりです。 これからも、皆さんにさらなる喜びをお届けできるよう努力してまいります」

『鳴潮』は基本プレイ無料で、Epic Games Storeで入手可能です。しかし、プレイする前に、私たちのスターターガイド本作の17名の共鳴者ガイド、そして本作のバージョン1.1アップデートの概要をぜひご一読ください。