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『ボーダーランズ』の混沌とした旅路:荒唐無稽なアイデアが、メガヒットゲームと映画になった過程

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Brian Crecente
2024年8月8日

制作には10数年を要し、可能な限り多くの脚本家が関与しました。 プロジェクトは世界的なパンデミックを生き延び、素晴らしいビデオゲームを原作とした映画へと拡大しました。 アカデミー賞を受賞した俳優を含む豪華キャストが勢ぞろいし、派手な演出に彩られ、ゲームアートをそのまま3Dプリントしたアセットによって生き生きした世界観が実現した映画です。

長い年月を経て、映画版『ボーダーランズ』が私たちの前にようやく姿を現します。イーライ・ロス監督の才能と、クラップトラップを演じるジャック・ブラック氏の気の利いた台詞も相まって、満足のいくエンタメ性の高い、個性溢れる実写作品に仕上がっているようです。
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しかし、この瞬間にたどり着くまでの旅路は、『ボーダーランズ』にまつわる特筆すべき2つの物語でもあるのです。 新しいタイプのビデオゲームという相対的な賭けが、いかにして8,500万本という売り上げを記録したメガヒットにつながったのでしょうか。 なぜ映画の制作に、これほどまでの時間を要したのでしょうか。 巧妙なホラーで有名な監督が、どのようにしてSFコメディーを監督することになったのでしょうか。 そして、ゲーム、葛藤、映画、これらすべては、ビデオゲームとエンターテインメントの新しいタイプのクリエイターとして、Gearbox Softwareを位置づけるためにどのように役立ったのでしょうか。
映画版『ボーダーランズ』1

映画:暗号を解読する


聞くところによると、映画『ボーダーランズ』の制作はほぼ10数年かかったといいます。

その初期の時間の多く、実際にはその半分以上が、脚本に頭を悩ませることに費やされました。 初期の脚本の執筆作業は、一人の脚本家がこのシリーズの脚色を担当することになる何年も前の2012年に始まりました。 最大の課題は、 プロシージャル生成に深く根ざした巨大なオープンワールドであり、史上最も売れたビデオゲームシリーズのひとつを、リニアで筋書き重視の非インタラクティブな映画にするにはどうすればいいのかという点でした。

Gearbox Softwareの創設者であり『ボーダーランズ』のクリエイターであるランディ・ピッチフォード氏は、多くのアプローチを検討し、最適なものを見つけ出そうとしたと語っています。

「最初の草稿には全く異なるキャラクターが登場していました」とピッチフォード氏。 「『ボーダーランズ』の世界観と雰囲気が似ているだけのものだったのです。 異なる惑星、異なるキャラクター、異なる時間軸、異なる報酬と、何もかもが違っていたんです」

第2稿も全くうまくいかなかったものの、ピッチフォード氏はそのストーリーと新キャラクターの一部をとても気に入ったため、後に『ボーダーランズ3』に書き込んだと話します。

「ある時、私たちは素晴らしい監督であると友人と一緒にこの映画について徹底的に議論していたんですが、クレイグ・メイジン氏に連絡を取って、彼にやらせてみるよう勧められたんです」とピッチフォード氏は説明します。 ピッチフォード氏と、当時Gearboxのシナリオチームを率いていたランディ・ヴァーネル氏は、メイジン氏に会いに出かけ、シリーズの概要をすべて伝えました。 メイジン氏はこのゲームをプレイしたことがあったので、シリーズについては把握していましたが、二人は『ボーダーランズ』のゲームの将来的な方向性について順を追って説明しました。

「『これがシリーズの将来的な計画で、今の状況はこうで、キャラクターはこうだ』といった、私たちがすでに想像し、計画していたことをすべて話しました」とピッチフォード氏は語ります。

ピッチフォード氏によると、HBOのヒットドラマ『チェルノブイリ』『The Last of Us』の脚本家兼プロデューサー兼クリエイターであるメイジン氏こそが、『ボーダーランズ』を映画として成立させるための暗号をついに解読した張本人とのことです。

具体的な筋書きの詳細には触れずに、ピッチフォード氏は、メイジン氏がこの映画のために、ちょっとした手品のような役割を果たす、いくつかの新しい構想を思いついたのだと話します。 すべてが完璧にまとまりました。

プロデューサーのアリ・アラッド氏はこう話します。「クレイグがゲームをプレイしていたことが大きかったですね。 彼は基本的に、気に入ったキャラクターを選んで、その全員を登場させるストーリーを考えついたんです。素晴らしい方法だと思います。 自分が好きなものから始めたんですよ」
映画版『アンチャーテッド』
アラッド氏はビデオゲームの実写映画『アンチャーテッド』もプロデュースしており、現在は待望の映画版『メタルギアソリッド』を含む、数多くのビデオゲームの映画化に取り組んでいます。

ロス監督が練り直しをする前に、脚本は最終的に何人もの手を渡りましたが、ピッチフォード氏によれば、メイジン氏が構想した核となるコンセプトはストーリーの中心にあり続けたといいます。 メイジン氏は最終的な脚本に名を連ねていませんが、それは自分の言葉でないものを自分の手柄にしたくなかったからなのだとピッチフォード氏は説明します。

「彼は基本的なストーリーアークと、この映画に関係する重要な要素のいくつかにヒントを与えてくれました」とピッチフォード氏。 「しかし、彼は謙虚で、エゴがなく、イーライたちがやった仕事の手柄を自分のものとして主張したがらなかったんです」

チームが下した究極の決断のひとつは、この映画をビデオゲームの世界と並ぶ、映画の世界の一部にするというものでした。 類似点はあるものの、映画とゲームは必ずしも同じ音色を奏でているわけではありません。

ピッチフォード氏はこう説明します。「登場人物、世界観、テーマ、そして同じ筋書きさえ使っていますが、全く同じプロットポイントやストーリー展開ではありません。 ビデオゲームをやりこんだ人なら、すでにそのストーリーや体験を把握しています。それでも、ビデオゲームからは得られない何かをこの映画から感じ取って欲しいと思っています。 そして、映画を観たら、もうストーリーを体験したからゲームをプレイしない、という風にはなって欲しくないのです。 この二つは異なるものなんです」
映画版『ボーダーランズ』2
この決断は、他の有名どころの作品が、このオリジナルと翻案の重複するコンテンツの分け方を見て学んだ教訓から導き出されたものでもあります。 ピッチフォード氏は、『ロード・オブ・ザ・リング』『ゲーム・オブ・スローンズ』のように、原作のネタが尽きてしまったものや、映画やテレビ番組の制作中に、それが原作のリリースより先になってしまったものを挙げています。

「お互いの相性が良くないので、映画がゲームの制作を待っているような世界にならないようにするのが有益な方法でしょう」とピッチフォード氏は語ります。 これは、マーベル・シネマティック・ユニバースがある程度とってきたアプローチであり、映像作品がコミックのストーリーに縛られることも、その逆もありません。

2019年には、脚本作業が適切なアプローチに絞られ、イーライ・ロス氏が監督を務めることになりました。

おそらく『キャビン・フィーバー』『ホステル』のように、真に迫る、度を超えたスプラッターホラー映画でよく知られているロス監督は、2018年の『ルイスと不思議の時計』や、時にダークかつユーモラスな描写がされる2023年の『サンクスギビング』などで、巧みなユーモアのセンスも披露しています。

「彼のホラー作品の多くにはそういった面がありますね。 『キャビン・フィーバー』はおそらく彼の作品の中で最も範囲が広いもので、『サンクスギビング』は面白かったです」とアラッド氏。「彼は常にユーモアを生かしながら、危険や危機といった他のすべての要素も生かすようにしています」

「脚本を読んだイーライは、『これを作るのは私だ』と言っていましたね」とアラッド氏は続けます。
映画版『サンクスギビング』
ロス氏は自分の作品についてこう評価します。「ユーモアがあるんです。 暗くどんよりした雰囲気がないんですよね。 残酷な忍耐のテストみたいな映画かもしれないけれど、それでも面白さがあるんですよ」

もう少し掘り下げると、ロス氏は映画『スター・ウォーズ』シリーズ、映画『マッドマックス』シリーズの中のジョージ・ミラー氏の作品、ジョン・カーペンター監督の『ニューヨーク1997』への愛を語っていました。 彼が大ファンであるピーター・ジャクソン氏とサム・ライミ氏の両監督にも、ホラー映画を制作していた過去があります。

「ホラー映画の監督は、ファンタジーSFジャンルにおいても素晴らしい監督になると常に思っていました。その理由は、ホラーには、パンクロックの精神であるアナーキーな感覚があるからです」とロス氏は述べています。「体制に中指を立てて侮辱するような人の手中にいる感覚がしたんですよね。 体制の中で働いてはいるけれど、誰も今までやったことのないことをしているんです」

ロス氏が映画『ボーダーランズ』に惹かれた理由の一つに、その世界観の作り込みがあります。 これは、『フィフス・エレメント』『スターシップ・トゥルーパーズ』のような視覚的に圧倒される作品に挑戦する機会となったのです。 それもあって、この映画はハンガリーのブダペストで、映画『デューン 砂の惑星』シリーズと同じ美術部門を使って撮影されました。

脚本と監督が決まると、配役が差し迫って必要となりました。

ピッチフォード氏、アラッド氏、ロス氏が語るように、すべてはアカデミー賞受賞者のケイト・ブランシェットから始まりました。

「ケイトとは、『ルイスと不思議の時計』で一緒に仕事をして、素晴らしい時間を過ごしました。 あの映画でのケイトはすごく面白いんですよ。 他の映画では目にしなかったようなことをやっているんです。それで今回、最初にケイトに電話しました」とロス氏は話します。 ロス氏は、彼女がリリスの役を、『エイリアン』のエレン・リプリーや『ニューヨーク1997』のスネーク・プリスキンのようなイメージで演じることを思い描いていました。
映画版『ボーダーランズ』4
ケイト・ブランシェットに『ボーダーランズ』を売り込む際、ロス氏は、『フィフス・エレメント』『バーバレラ』のように楽しくクレイジーで、視覚的に壮観な映画で、同時に『ニューヨーク1997』の感性とアナーキー的要素があり、加えて『荒野の用心棒』の名無しの男風のキャラクターだと説明したと言います。

蓋を開けてみると、『ニューヨーク1997』は彼女の大好きな映画であり、彼女は突拍子もないジャンル映画に足を踏み入れるというアイデアを気に入ってくれたのです。

ケイト・ブランシェットの出演が決まると、次の配役は簡単でした。 ジャック・ブラックはビデオゲーム好きを公言しており、特に『ボーダーランズ』の熱烈なファンで、E3では発売前のゲームをこっそり試していたほどです。

「ジャックはクラップトラップを演じられることにとても興奮していましたよ」とロス氏。 「彼はゲームもキャラクターも知っているので、とても喜んでいました」

最初は奇妙な選択に思えるかもしれませんが、まじめな突っ込み役の兵士ローランドには、有名なコメディアンのケヴィン・ハートが起用されています。

「タイニー・ティナはぶっ飛んでいて、クリーグは暴走気味なので、『どうなってんだ? みんなちゃんとしろよ』と言うケヴィンの存在が必要なんですよ」とピッチフォード氏は説明します。

ピッチフォード氏はさらに、ケヴィン・ハートがこの役を引き受けたのは、アクションスターになれることを証明するためだったのだと付け加えます。 「そうでなければ、ケヴィン・ハートにこんなことをさせることは100万年経ってもできませんでしたよ」とピッチフォード氏は話します。 「彼は超ビッグだし、興行への影響力も驚くべきものがあります。 それに、本当にいい俳優でもあります。 全力で取り組んでくれました」

「私は当初、このアイデアに怖気付いたのです」とアラッド氏。しかし最終的には、ハートの演技に「大いに驚かされた」と言います。

そして主役メンバーを締めくくるのは、ジェイミー・リー・カーティス(同じくアカデミー賞受賞者)、アリアナ・グリーンブラット、ジーナ・ガーション、フロリアン・ムンテアヌです。

2020年までには、Gearbox StudiosとLionsgateは間もなく撮影が開始されるこの映画についてもう少し詳しく言及する準備ができていました。 その会話は、ちょっとした策略で始まりました。
ボーダーランズ3
 

ゲーム:境界の空間にある乱雑さ


2007年の夏、ピッチフォード氏はGearbox Softwareの次の大作をどう表現するのがベストなのか考えを整理していたところでした。

当時、彼はドイツのライプツィヒを訪れており、毎年開催されていたLeipzig Games Conventionの期間中、集まった報道陣をゲームで魅了した多くの開発者の一人でした。 Gearbox Studiosの目玉ヒット作となることが期待されていた『ボーダーランズ』を初めて大々的に公開したのです。

このお披露目は、『ボーダーランズ』の世界についての10分間に及ぶモノローグで幕を開けました。 企業がすべてを支配する時代と場所を舞台にしたこの物語は、見知らぬ新しい惑星でゴールドラッシュの火付け役となった宇宙人の技術を中心に描かれています。

この宇宙人の技術は『ボーダーランズ』のあらゆるものの動力源ですが、最も重要なのは、デジストラクト、つまりアイテムを分解してデジタル保存し、場所を取らないようにする機能の動力源となっていることです。 デジストラクトによって、プレイヤーは無限に近い数の武器にアクセスできます。『ボーダーランズ』の重要な要素です。

さまざまな武器が無限に使えるというアイデアは非常に重要な売り込み要素だったので、Gearboxは『ボーダーランズ』のデモで、ピッチフォード氏がボタンひとつで、自分のキャラクターの周りにランダムな武器を無限に生成できるように設定したほどでした。 銃が登場するゲームの、中核となる原則のうちのひとつ──つまり銃の数を10種類に制限し、それぞれをキーボードのボタンに割り当てられるようにするという原則──を覆してしまうような機能でした。

この機能は非常に好評だったため、『ボーダーランズ』の初期の報道の多くは、ゲームの『ディアブロ』風の性質と、そのプロシージャル生成された銃に関する話題が大半を占めているほどでした。
『ボーダーランズ』4
それから20年近く経った今も、(彼の言葉を借りれば)ほかの人にゲームをどう説明したらいいのかをまだ考えていた初期のデモ制作時に、ピッチフォード氏がみんなに言ったことを私は思い出します。 また、企業が運営する宇宙や、惑星パンドラの宇宙人の技術が詰まった伝説のヴォルトを見つけるために奔走することにとどまらず、『ボーダーランズ』がこれらすべてをどのようにして説得力のある方法で表現するのかについても、ピッチフォード氏は説明してくれました。

「私たちの世界にはない、信じられないようなテクノロジーが存在するこのような世界観を作り上げました。デジタルバックパックに必要なものをすべて収納し、何千丁もの銃を持ち運べるのです」とピッチフォード氏は言います。 「しかし、その一方で、ここはみすぼらしい、危険な荒れ地でもあります。 開拓者たちがその存在さえ知らなかったクリーチャーたちが冬眠から目を覚まし、人々を食べ、ここで生きることを難しくしました。 ですから、企業はパンドラでの探索を断念したというわけです」

「私は、この宇宙のすべてが、SFと西部劇、RPGとシューターのような、決して一緒にしてはいけない2つの間の不快な空間に生きているという絵を思い描いていました」と彼は続けます。 「登場人物たちでさえ、自分が何者なのか、そして何者でありたいかの境界線に生きているのです」

ピッチフォード氏は、大草原を突っ切る高速道路の滑らかなアスファルトを想像することで、境界線を表現します。 高速道路と大草原が交わる場所には、草が突き抜け、壊れたアスファルトの破片でできた空間があります。 道路でも草原でもありませんが、その両方の要素を兼ね備えています。

「ごちゃごちゃとした、その中間のようなものです」と彼は言います。
『ボーダーランズ』1
ピッチフォード氏は、『ボーダーランズ』の戦利品の無限性を証明しようと、多くの時間を費やしたと振り返ります。というのも、一般的にシューティングゲームには、そこまでのレベルの武器の多様性はなかったためです。

彼はまた、当時は『ボーダーランズ』の未来について逆説的な考えを持っていたとも言います。 一方で、彼は『ボーダーランズ』にはそれだけの価値があり、すべてうまくいくと100%信じなくてはなりませんでした。 そしてもう一方では、市場にあるすべてのものがプロジェクトを台なしにしてしまう可能性があり、誰も気にしてくれないという冷たく厳しい真実を受け入れなくてはなりませんでした。

「この2つの世界の間のパラドックスの中で生きなくてはなりません」と彼は言います。 「両者の境界線です」

もちろん、本作は2009年にリリースされた際に、その実力を発揮しただけではありません。 このシリーズは続いて続編、前編、スピンオフ、そしてまったく新しい種類のゲームを生み出し、最終的には『ボーダーランズ』を歴代ビデオゲームのベストセラーの中でも稀有な雰囲気の作品へと押し上げ、1億本に迫る販売本数を記録しました。

そして、『ボーダーランズ』によってGearbox Softwareが単一シリーズのスタジオへと作り変えられることはありませんでしたが、同社の成長と創造的な試みの拡大に貢献しました。

『ボーダーランズ』の一作目を世に送り出した時は、100人くらいしかいませんでした。 もしかしたら120人くらいでしょうか」とピッチフォード氏は言います。 「今では1,000人に迫っています。 ですから、多くのことが起こっていますし、私たちがこれまで集めた中でも最大のチームを編成して、皆さんが期待しているようなことに取り組んでいるところです」

しかし、『ボーダーランズ』の数々の成功がスタジオの成長を後押しし、手がける作品の種類が増える前に、中止しなくてはならないプロジェクトもいくつかありました。
映画版『ボーダーランズ』6
 

映画:銃のプリント、ゲームのプレイ、映画の撮影


映画『ボーダーランズ』の話題は、ランディ・ピッチフォード氏のちょっとしたパフォーマンスのおかげで、2020年初頭に再び盛り上がりを見せ始めました。 彼とその仲間が、PAX Eastのパネルルームにイーライ・ロス監督を忍び込ませたのです。 8年近くにわたる開発とプリプロダクションを経て、ようやく制作の出発点に立てたこの映画に、彼が監督として参加することを発表するというアイデアでした。

「すべての始まりでした」とピッチフォード氏は言います。 「私たちがブダペストに向かい、映画の準備を始める前のことでした」

ピッチフォード氏は翌年早々にブダペストを訪れ、映画の撮影場所を視察しました。 彼はホテルに滞在し、そこで初期の準備作業を行った後、飛行機でテキサスに戻り、新型コロナウイルスのワクチンを接種。その後ブダペストに戻り、『ボーダーランズ』の撮影期間中はそこに住むことになりました。

彼は、高級店や素晴らしい建築物、中心地というロケーションで有名なアンドラーシ通りのアパートに滞在しました。 ピッチフォード氏の滞在期間中は新型コロナウイルスが猛威を振るっており、市内は武装した兵士たちによって外出禁止令が出されていました。

映画の一部は、チームがサンクチュアリシティやモクシィのバーなどの特定の室内セットを作り上げ、そのスタジオで撮影されました。 タニス博士の研究室のようなほかのセットは、2つ目のスタジオで作られました。 そして、この地域では膨大な数の屋外シーンが撮影されました。

「採石場を占拠していました」とピッチフォード氏は言います。 「『HALO』『ジャック・ライアン』のテレビドラマも同時に撮影されていたのも、非常に面白かったですね」

そこは、撮影するには慌ただしい街でした。

「私たちが採石場を占拠し、飾り付け、数日間撮影したあとにすべて撤去することもありました。その翌日、『Halo』のチームがやってきて、何らかの理由で採石場を装飾しなおす必要があったためです」とピッチフォード氏は言います。
映画版『ボーダーランズ』3
ピッチフォード氏は、撮影時には現場で『ボーダーランズ』の専門家のような役割を果たし、シリーズの伝承や世界観、その他どんなことでも喜んで説明したそうです。

「乗り物の見た目やアートデザイン、セットデザインについて決断を下す時など、このような機会は準備段階で数え切れないほどありました」と彼は言います。 「私の厳密な肩書きはエグゼクティブプロデューサーで、ビジネスをまとめる手助けをすることです。しかし、私がもたらした実際の価値は、相談役でした」

この手助けはキャストにも及びました。 例えば、夫のランディ・ピッチフォード氏と共に脚本に携わったクリスティ・ピッチフォード氏は、ブランシェットと一緒に『ボーダーランズ』のゲームをプレイして、リリスが登場するシーンをすべて見せました。 ランディ・ピッチフォード氏も、ほかの俳優たちに同じことをしました。

偶然にも、『ボーダーランズ』のゲーム用にタニス博士の初期バージョンを書いたクリスティ氏は、映画でこの博士を演じるジェイミー・リー・カーティスと同じ、ブダペスト行きの便に搭乗することに。 そこで二人は機内で、そのキャラクターについて話し合いました。

ロス氏によると、ランディ・ピッチフォード氏は当初、1週間ほど撮影現場にいる予定でしたが、最後まで現場に出入りして手伝うことに決めたといいます。

「彼はあらゆるステップで私と共にいました」とロス氏は言います。 「ですから、『ボーダーランズ』の世界のルールを破ってしまうほどに変更しすぎることに対して、もし私が質問したら、ランディはこう言っていたでしょう。『いやいや、もっともな意見じゃないか。 素晴らしい。 素晴らしいアイデアだよ』と」

そして、彼とピッチフォード氏が同じユーモアセンスを持ち、似たような影響を受けていることも助けになったと付け加えました。

アラド氏によると、ピッチフォード氏とは映画製作の過程で非常に親しい友人になったそうです。 「Gearboxは、あらゆる段階で私たちを助けてくれました」と言います。

伝承や物語、キャラクターに関するアドバイスをただ提供するだけではありません。 GearboxはゲームにUnreal Engineを使用したため、制作チームとアセットを共有することができました。 これらのアセットの一部は、ゲーム内の武器の3Dバージョンをプリントするために使用され、映画の小道具として使用されました。 中には、映画にそのまま使用されたものも。

「ゲームの大部分がプロシージャル生成されているため、この映画は小道具が大変でした」とアラド氏は言います。 「従来のゲームのように、アセットが常にその辺にあるわけではありません。 しかし、彼らは私たちのために制作してくれて、3Dプリントした銃まで用意してくれました」

映画『ボーダーランズ』の銃はユニークな挑戦をもたらしました。 このシリーズにおける武器の性質上、同じ銃を2つ用意することはできないため、制作スタッフは自分たちが求めているものについてゲーム開発者にアイデアを出し、開発者がそれに対して選択肢を用意するという形で進みました。

Gearboxは映画のVFX部門とも連携し、最終的に映画で使用されるレンダリングされたピクセルの作成も支援。

「映画には、文字通り画面上のすべてのピクセルがGearboxの開発者によってレンダリングされた場面もあります。とてもクールなんです」とピッチフォード氏は語ります。

そしてもうひとつ、Gearboxの仕事が映画に直接登場することになった驚きの方法は、ちょっとしたおふざけから生まれました。 ピッチフォード氏が、ブダペストで飛ばしたら楽しいだろうと考えドローンを持ち込んだのです。 ある時、ただ楽しむ目的でドローンを使ってシーケンスを撮影し始めました。 撮影を終えて編集者にすべて渡し、最終的にその一部が映画で使用されることになったというのです。

映画『ボーダーランズ』の主な撮影は2021年6月に終了。その瞬間を記念して、撮影現場でピッチフォード氏のプロデューサーチェアに座るクラップトラップのショットがオンラインで公開されました。
『Brothers In Arms』1
 

ゲーム:「ビット」


『ボーダーランズ』によってGearboxは力を得ましたが、ピッチフォード氏はこの1つのシリーズの成功だけを重視したがりません。

「私たちは進化し続けています」とピッチフォード氏は語ります。 「私たちは変化し続けています。しかし、『ボーダーランズ』がGearboxを再定義したとは思いません。 GearboxをGearboxたらしめているもの、GearboxのゲームをGearboxのゲームたらしめているものは、そのビットが何であろうと、そのビットへのこだわりだと思います」

その全力での取り組みは、スタジオが『HALF-LIFE』の拡張パックや移植版を制作していた90年代後半に始まり、『トニー・ホーク』『ジェームズ・ボンド』『Halo』といった作品にも及んできました。

「私たちは、それを自分たち自身のことにすることもありませんし、プロジェクトに全力で取り組まないようにするというわけでもありません」と彼は言います。

その結果、一見すると同じスタジオの作品とは思えないゲームのライブラリができることになりました。
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『ボーダーランズ』だけを見て、この開発者が制作したほかのゲームを想像してみたらどうなるでしょうか? アートスタイルはクレイジーなものになりますし、コメディもギャグもたくさんあります。 しかし、『Homeworld』をプレイしてみると、シリアスなトーンとストイックなスタイルのストーリーテリングで、非常に現実的です」

「これこそが、私たちにとってのGearboxです」とピッチフォード氏は続けます。 「結局のところ、私たちはエンターテイナーなのです」 そしてエンターテイナーとして、同スタジオはプレイヤーのために全力を尽くします。

例を挙げると、『ボーダーランズ』と対象をなすのは同スタジオの『Brothers in Arms』シリーズです。このタイトルはピッチフォード氏とスタジオにとって、深い意味を持っています。

『Brothers in Arms』は、私が開発や製作指揮を行った、初の完全オリジナルゲームで、シリーズです。 それまで私が関わってきた作品はすべて、他の誰かが開発したIPでした」

『ボーダーランズ』の爆発的なヒットにより、被害を最も被ったのが、おそらくこの『Brothers in Arms』でしょう。

『ボーダーランズ』に全面的にコミットするために、『Brothers in Arms』からフォーカスを逸らさなければならないことには心が痛みました」ピッチフォード氏は説明します。 「『Brothers in Arms』を気に入り、もっとリリースしてほしいというユーザーはたくさんいました。私たちもその熱意を共有し、もっと提供したいと考えていました。しかし、現実には、1日の時間は限られているんです」
Brothers in Arms
『ボーダーランズ』の成功で勢いに乗りながらも、他のプロジェクトを棚上げにしたりキャンセルしたりしなければならなかったそのとき、ピッチフォード氏はスタジオを拡大することを決めました。彼の目標は、新しいプロジェクトを立ち上げ、人々がもっとプレイしたいと思うゲームを開発し続けられるようにすることでした。

ピッチフォード氏はこう話します。「アーティストとして、そしてエンターテイナーとしてこのトレードオフは心が痛むものでした。ユーザーにとってもそうだったと思います」

幸運なことに、最初の『Brothers in Arms』とその後の『ボーダーランズ』の成功により、Gearboxは事業拡大が可能になり、スタジオは保留になっていたいくつかのプロジェクトにようやく注力できるようになりました。

彼らはまた、ゲーム開発へのアプローチも調整しました。 新しいアプローチでは、プロジェクトを最初から最後まで導く「リーダーシップクラスター」を採用しています。

「このアプローチでは、複数のプロジェクトを同時にスタートさせることができます。その中には、まだお話できる段階ではありませんが、以前から開発を進めている『Brothers in Arms』の新作も含まれます」

Gearboxが次の『ボーダーランズ』作品を開発中であるかを尋ねてみると、ピッチフォード氏は「もちろんですよ」と答えました。

「発表の準備が整い、発表できる時がくるでしょう。そのときに正式にニュースを共有することを約束します。 『ボーダーランズ』を鋭意開発中です。 『Brothers in Arms』も鋭意開発中です。 あらゆるIPを鋭意開発中ですよ。 それに、『Homeworld 3』をリリースしたばかりですからね。そちらでもまだ開発は進んでいます。 それから『Risk of Rain』もありますし、『Duke Nukem』もあります。まだまだありますよ」

その「まだまだ」の中に入るのが、『ワンダーランズ ~タイニー・ティナと魔法の世界』です。この作品は、ファンタジーをテーマにしたテーブルトップRPGの設定に『ボーダーランズ』シリーズを拡張することで、すべての期待を上回る成果を上げました。

「この作品はもっと注目されるべきだと思っています」ピッチフォード氏は続けます。 「ですが、何かに取り組んでいるからといって、完成品として皆さんに評価していただける準備ができているという意味ではありません。まだ完成には至っていないですからね」
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映画:お気に入りのシーンのカット


映画『ボーダーランズ』の製作期間は比較的短かったですが、ポストプロダクションは遅々として進みませんでした。

「世界中で引っ張りだこのキャストを使用したので、ポストプロセスが長かったんです」とロス氏は話します。 「彼らは他のプロジェクトに移りましたが、その製作はいずれもCOVID-19の影響で遅延に直面しました」

「最初は3週間で終了するはずが、3か月になり、さらに2か月押しました。 映画を仕上げるプロセスは信じられないほどのカオスでしたよ。 全員のスケジュールを調整することがどれほど困難なことか、誰も予想していませんでした」

再撮影は2023年1月まで延期されたので、ロス氏は『デッドプール』のティム・ミラー監督にその仕事を任せ、『サンクスギビング』に集中できるようになりました。

その後、映画『ボーダーランズ』は数々の編集や再編集を経て、最も洗練されたバージョンに仕上がりました。 最終的な尺は1時間半を少し超えた程度です。
「映画は必要なだけ長くあるべきです」とアラッド氏は語ります。 「でも、物語にそれ以上が必要であると感じられなかったんですよ。 特にコメディの場合、編集は思い切ってやらないといけないですからね」

映画のカットされたシーンをすべて見たピッチフォード氏も同様に感じており、彼自身を含むいくつかのカメオ出演が省かれたのはそのためです。

当初のブダペストでの撮影では、ゲーム内でピッチフォード氏が声を担当したキャラクター、クレイジー・アールの短いシーンが含まれていました。

「クレイジー・アールを盛り込むのが面白いと思ったので、私はクレイジー・アールに変身するために約5時間かけてメイクをし、そのシーンに出演することになりました。 うまくいったんですが、最終的にはカットせざるを得ませんでした」とピッチフォード氏は語ります。

シーンをカットしようと最初に提案したのは、ピッチフォード氏でした。 「雰囲気と背景ストーリーを追加する良い要素ではあるし、面白くもあったのですが、物語を推し進めているわけではなかったんです」氏は説明します。

そのシーンをカットするという決断は、ピッチフォード氏が心から楽しんだアラッド氏製作の別のゲームを映画化した『アンチャーテッド』を見た直後に下されました。 この映画には、ゲーム版『Uncharted』でネイサン・ドレイクの声を担当したノーラン・ノースが短いカメオ出演をするシーンがあります。

そのシーンを見て、ゲームと映画の間の架け橋となるようなカメオ出演を盛り込むことは、特に何の目的もなさないということに気づきました。

「ゲーム版でキャラクターのボイスオーバーをしていたノーラン・ノースだと分かると、映画の世界から引き離されてしまうんですね」ピッチフォード氏は話します。 「でもその声が誰だか分からないと、まったく意味をなしません。 どちらにしても、流れを壊してしまうんです。 そこでアリに電話して、『あのシーン、合わないと思うんだ』って言ったんです」

奇術師であり俳優であるペン・ジレットをフィーチャーするはずだったシーンを、最終的にカットしたのも同じ理由でした。

「シーンを見て、残りの物語に何の足しにもなっていないと決断しました」アラッド氏は話します。 「自分が好きなシーンが全体の体験にどう合うかにより、カットしなければいけないのが、ポストプロダクションで常に最も難しい部分ですよ」
映画版『ボーダーランズ』ロゴ
 

時間が最高の批評家


映画が完成し、世界公開の準備が整った今、ロス氏は『ボーダーランズ』を映画化するまでの道のりを振り返りました。 製作期間は12年間でしたが、ロス氏が関わったのはその半分未満でした。 とは言え、ロス氏は映画化にあたって明確でわかりやすいアプローチを取りました。

「アリとランディ・ピッチフォードを含め全員に話したように、私の仕事はゲームの映画化をすることで、ゲームを再現することではありません。ゲームのプレイ体験をしたいのなら、ゲームをプレイすればいいだけです」とロス氏は話します。

映画を製作するにあたり、ロス氏は、映画のフォーマットに合うように要素を調整する自由が必要であり、それを認められたと説明しました。

「キャラクターを深掘りする必要がありました」と彼は続けます。 「ゲームではうまく機能しているが、90分の映画では通用しない部分を修正する必要がありました。 ランディは『ゲームを再現するだけではなく、映画にしよう』と非常に協力的でした」

とは言え、映画の中でもゲーム内とまったく同じに見せたい要素があったとロス氏は言っています。

「大好きな世界に入り込み、それに命が吹き込まれ、俳優がその世界を歩く姿を見るのですから。 サンクチュアリシティやモクシィのバーはゲームとまったく同じにしたいと思いました」とロス氏は語ります。
『ボーダーランズ』5
また、セットにはたくさんの隠しネタもあり、壁のポスター、チラシ、破壊行為やグラフィティといったものに出てきます。 注意深く見ると、ナンバープレートのGearboxに気付くかもしれません。

セットや新しいロケーションをデザインする際に、映画製作者たちは『ボーダーランズ』の独特の美学と背景ストーリーを取り入れました。

たとえば、パンドラの最初の集落の様子や、企業が資源を奪って去った後の惑星の様子を決定する必要がありました。

「彼らはガラクタを放置していき、今、人々はこのガラクタの起源について困惑しています」ピッチフォード氏は説明します。 「なぜ電柱の上に冷蔵庫があるのでしょう? なぜマーカスのバスはあのような外観なんでしょう? それがこの惑星のスタイルであり美学なんです。石の様子も、風景も、草花や動物もすべてがです」

「非常に正確で、銃もゲームのものとまったく同じように作られています」

ピッチフォード氏は映画に対する反応を見るのがワクワクすると話しています。 もちろん、ゲームのファンが映画も気に入ってくれればと願っているそうですが、ピッチフォード氏が最も興味を持っている視聴者は特定の人々です。

「私たちのような人々は、数多くのゲームをプレイします。 大好きなんです。 そうせずにはいられないんですよ」ピッチフォード氏は続けます。 「しかし、私たちの周りの人間全員が私たちのようにゲームをプレイするわけではありません。 映画を見たり、他の体験をしたりします。 そのため私にとってこの映画の一番の魅力は、ゲームに時間を費やす『ボーダーランズ』のファンが、それほどゲームをしない、またはゲーム自体をプレイしない周囲の人々と『ボーダーランズ』体験を共有できる点です」

「私が最も考慮している視聴者はそのような方々です」

アラッド氏は映画を見た人々がゲームをプレイしてみたり、ゲームに戻ったりすることを願っています。

『デューン』の映画を見た後に、本を読みに戻ったんです。映画の中の詳細がどこからきているのかを知りたいと思ったからですね」アラッド氏は説明します。 「素晴らしい映画化というのは、そのすべてがオリジナルに入っていると気付かせます」
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アラッド氏は、『ボーダーランズ』を含む彼のゲームの映画化が、ゲームを見直したり、探求したりするきっかけになることを願っています。 「実際、それが一番の願いです。 ゲーム会社がゲームを基にした映画を製作する理由という点で、それを目指しています」

ロス氏は、自分が製作に携わった映画が『ボーダーランズ』の豊かな物語と熱心なファン層の高い基準を満たしているかどうかを判断するには、しばらく時間がかかるかもしれないと考えています。

「時は究極の批評家ですよ。 映画が時の試練に耐え、名作になるかどうかは、15年待たなければ分かりません。 10代の若者がその映画を知らないなら、その映画は成功しなかったと考えていいでしょう」

Epic Games Storeで発売中の『ボーダーランズ』ゲームの面々を忘れずにチェックしましょう。