
『Hell Is Us』(ヘル・イズ・アス)インタビュー:Rogue Factorの草の根チームがコズミックホラーのデビューを飾るまで

まず、戦争がハデアの国を荒廃させました。その後、異形の怪物たちが現れました。
今週後半にリリースされる『Hell Is Us』(ヘル・イズ・アス)は、人間が持つ最も醜い部分を冷酷に描き出した作品となっています。プレイヤーは国連平和維持軍の「レミ」としてプレイし、死と荒廃に満ちたハデアで両親の行方を追います。しかし、内戦よりもはるかに深刻な事態がレミを襲います。戦闘によって、現代の兵器が一切効かない謎の怪物たちも解き放たれたのです。レミは、この超自然的な脅威を抑え込むために、古の剣や槍などの武器の使い方を学ばなければなりません。
『Hell Is Us』はソウルライクの要素を取り入れています。例えば、同ジャンルらしい探索へのこだわりもそのひとつで、Rogue Factorのチームは、「マップなし、コンパスなし、クエストマーカーなしで直感に従うことが冒険の一部なのです」と胸を張ります。
このキャッチフレーズは、Rogue Factorのチームをよく表しています。今回、私たちは『Hell Is Us』のクリエイティブディレクター兼アートディレクターを務めるジョナサン・ジャックス=ベルテート氏に話を聞きました。比較的小規模ながらも機敏なチームは、いかにして2025年の最も興味深いゲームの1つを作り上げたのでしょうか。
「電話を手に取り、イヴ・ボーデルー氏(Rogue Factorのゼネラルマネージャー)に連絡しました。彼は、個人的な付き合いのある本当の友人です」と、ジャックス=ベルテート氏は言います。「そしてこう言ったんです。『もう潮時だと思う。AAAはもう十分だ』と」
ジャックス=ベルテート氏は長年、AAAの世界に身を置いていました。最初はUbisoftで、その後10年間はEidos-Montréalでアートディレクターを務め、『Deus Ex: Mankind Divided』(デウスエクス マンカインド・ディバイデッド)や『Marvel's Guardians of the Galaxy』(マーベル ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー)などの主要タイトルに関わりました。しかし、変化の時を迎えたのです。
「やりがいを感じたかったんです」とジャックス=ベルテート氏は続けます。「AAAの世界はとても心地よかったんです。でももう一度、あのガレージ感を味わいたかったのです。自分たちは弱小で失敗するしれない。だからこそ必死に立ち回らなければならない、というあの感覚ですよ。私がイヴに電話した日、Rogue Factorは20人か25人(の従業員)がいました」
まったく新しいIPを作成するために、ジャックス=ベルテート氏はRogue Factorに加わりました。しかし、AAA開発での経験から、昨今の高予算ゲームでは当たり前となった、10年にもおよぶ高コストな開発サイクルは避けたいと考えていました。ジャックス=ベルテート氏はボーデルー氏と協力して、早い段階でできる限り絞った予算案を立てました。
「それは私にとってごく自然なことでした」とジャックス=ベルテート氏。「もちろん、簡単なことではありません。ですが、私たちは腰を据えて、できる限り予算を抑えようとしたんです」

その後数年間、ジャックス=ベルテート氏は自身の人脈を活かし、インディーとAAAの両方のチームで活躍する才能あふれる仲間たちを『Hell Is Us』の制作に引き入れました。
「AAAチームから信頼しているメンバーを大勢連れてきました。彼らには大きな借りができましたね。彼らが頼れるのは、私がかける言葉だけだったんですから。『信じてほしい。これはうまくいくよ。何年も一緒に働いてきたじゃないか。私たちにはできる』と。彼らには本当に感謝しています」とジャックス=ベルテート氏。
「また、このプロジェクトの立ち上げにも奔走しました。『Hell Is Us』の骨組みを固め、目指す世界観を構築し、自分たちのやりたいことを(パブリッシャーの)Naconに納得してもらう点が大変でした」と同氏は続けます。
その結果、Rogue Factorは成長を遂げ、ジャックス=ベルテート氏が言うところの「AAスタジオ」へと変貌しました。インディーとAAAの体制やノウハウを融合させたのです。
「これらの(インディー出身の)メンバーたちは非常に身軽で機敏に動くことに慣れています」とジャックス=ベルテート氏は説明します。「その後、AAA出身のメンバーたちがよりしっかりした体制や制作の知識を持ち込みました。その組み合わせがスタジオに独特な味わいを生み出しました」

スタジオのこの新しいAA環境は、ジャックス=ベルテート氏自身も驚くような成果を生みました。
「会議である機能を話題にすると、2日後にはテクニカルアーティストからデスクに呼ばれ、その機能を見せてもらえるんです」と同氏。「しかも、8割方できているんです!AAAでは何年もごまかされていました。実際は早くできるんです。ただ、大手スタジオには、会議や事務手続きが膨大にあり、いくつもの手順を踏む必要があります。もちろん、単純化しすぎているのはわかっています。巨額の資金が動いていますから。それでも、(Rogue Factorの)機敏さには最初から、心底驚かされました」
2022年に『Hell Is Us』を発表して以来、Rogue Factorではスタッフを数十人増員したものの、コアチームはおよそ60人の開発者からなります。可能な限り社内でまかなうため、一人が複数の役割を担うことが当たり前だといいます。
「アウトソーシングは一切ありません」とジャックス=ベルテート氏は言います。「例外は声優だけです。正直な話、私の演技なんてとても聞けたものじゃありませんから」

ジャックス=ベルテート氏は長年、アートディレクターとしてヒットゲームに携わってきましたが、その多くはバックストーリーが確立された大作シリーズ作品でした。『Hell Is Us』の制作の大きな魅力の1つは、まっさらな状態から始める機会があったことだといいます。
「結局のところ、自分たちのものを作りたいんです。そのために必要なのは正しい機会に正しいタイミング、そして正しい仲間なんです」とジャックス=ベルテート氏は言います。
「誤解しないでほしいのですが、昔だったらオリジナルのIPを放り出してでも『Deus Ex』(デウスエクス)に携わっていたでしょうね。初代『Deus Ex』は、今でも私にとって史上最高クラスのゲームですから」と、ジャックス=ベルテート氏は続けます。「私たちがUbisoftにいて脱出方法を考え始め、モントリオールにEidosという新しいスタジオを立ち上げて『Deus Ex』作品を作ろうとしていたとき、その選択肢を選ぶのはとても簡単なものでした。また、自分たちが『ファイナルファンタジー』に携われると思ったときも、選択は考えるまでもないことでした。ナンバリングの『ファイナルファンタジー』を作れるなら、その『ファイナルファンタジー』を作る以外の選択肢はないでしょう。でも、それはうまくいきませんでした。」
すでに確立されたシリーズものへの取り組みは「ただの仕事」のように感じることがある、とジャックス=ベルテート氏は説明します。
「『Guardians of the Galaxy』(ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー)——あれは、私にとってはただの仕事でした。私はアメコミやスーパーヒーローのファンではありません。昔からまったく興味がないんです。だからマーベル側にはこう伝えました。『もし私たちが制作するなら、『Deus Ex』流の『Guardians of the Galaxy』になります。マーベルの原作は最大限リスペクトしますが、そこにはひねりを入れます』と。そうしたことで、少し興味を持てるようになりました」

それでも、何か新しいことに取り組む機会が訪れると、ジャックス=ベルテート氏は今がその時だと気づきました。
「必要なのは適切な不確定要素だけです。徐々にその不確定要素が姿を現し、私は飛びつきました。そして、振り返ることはありませんでした。」
『Hell Is Us』はまったく新しいIPですが、もちろん他作品からの影響を受けています。主なインスピレーション源の1つはコズミックホラーです。しかし、ジャックス=ベルテート氏にとって、コズミックホラーは必ずしもラブクラフト的ホラーを意味するわけではありません。同氏は、『Hell Is Us』とそのジャンルへの向き合い方を、彼が以前読んだとある記事と重ね合わせています。その記事とは、受賞歴を誇る連続ドラマ『チェルノブイリ ーCHERNOBYLー』について論じ、同作は史実を扱っているが、実際にはコズミックホラーなのだと主張するものでした。
「というのも、力そのもの、危険そのものが、常に見えないからです」とジャックス=ベルテート氏は言います。「放射能は目に見えません。それを知覚することはできます。それは宇宙の力です。自然の力なのです。そして、それは人間の知性では理解できない力です。完全には制御できない力なのです。あのドラマの撮影技法、演出、カラーグレーディング、そして音楽——そのすべてが、史上屈指の壮大なコズミックホラー作品たらしめているのです。ラブクラフトから完全に切り離すことができると言うのは、そういう意味です。ほぼ歴史的にリアルでありながら、コズミックホラーのように感じさせることはできるんです。これこそが、(『Hell Is Us』で)やりたかったことなんです。」
『Hell Is Us』は、9月4日(米国時間)にEpic Games Storeでリリース予定で、今週後半のリリースに先駆け、現在事前購入を受付中です。