
開発者が描いた殺人事件『The Case of the Golden Idol』と『アガサ・クリスティ:エルキュール・ポアロ - ロンドン事件簿』に関する調査報告書

推理小説は血に飢えた読者に対し、数多く考えられる似たような選択肢の中から、たった1つのシナリオだけが真実であることを物語ります。しかし、推理ゲームの開発者の暮らしはもっと複雑なものです。プレイヤーは真実へとつながる1本の糸を追い求め、幾重にも張り巡らされた嘘の網の中を探し回ることになるでしょう。『The Case of the Golden Idol』そして『アガサ・クリスティ:エルキュール・ポアロ - ロンドン事件簿』を手掛けた開発者たちとの対話では、説得力のある謎解きを生み出し、プレイヤーを運命的な結末へと導くには、さまざまな方法があることが明らかになりました。
Blazing Griffinでは、常に物語が最優先です。 それもそのはず、このグラスゴーに拠点を置く開発者は、映画やテレビを幅広く手がけるトランスメディア企業の一員なのです。 ゲーム部門の共同責任者であるニール・マクフィリップス氏は、Epic Games Storeの取材に対し、最新作であるエルキュール・ポアロのアドベンチャーゲームには、ポアロの生みの親であるアガサ・クリスティにふさわしく、読み応え十分な謎解きが盛り込まれていると語ります。 それでもなお、本ゲームの制作スタッフは、歴史に名を残すベストセラー小説家の名作を今後リリースする作品で継承していくことの難しさを実感しているようです。
名探偵の意外な過去
ポアロといえば、犯罪現場を調べ上げ、容疑者を知的に出し抜く中年の紳士というのが一般的なイメージです。 ケネス・ブラナーが最近映画化した『ナイル殺人事件』や『オリエント急行殺人事件』とは異なり、Blazing Griffinはポアロの最もよく知られた物語やおなじみの展開を避けたいと考えました。 「これらの物語のいくつかは、今ではとても有名です」とマクフィリップス氏。 「私たちは何か独創的なことをして、このキャラクターの人生の空白を埋めたいと考えています」
『ロンドン事件簿』は、ポアロの若き探偵時代に焦点を当てたクリスティ作品の前日譚として描かれ、同スタジオによる『Agatha Christie - Hercule Poirot: The First Cases』の続編にあたります。 しかし、マクフィリップス氏はクリスティが描く人物像には、今日私たちが知っているような小太りで訝しげな人物以上のものが常にあったと力説します。 原作の短編を読み込んだマクフィリップス氏は、ポアロの暗い過去がいかに思いがけない方向へと導くことができるかを説明します。
「若い頃、彼は配管工に扮して他人の家に侵入します。 実は鍵のピッキングが得意で、変装の達人でもあるんです。 彼はスパイになりますが、こうした内容は、アガサ・クリスティが書いた小さな短編を読んで初めてわかることなんです」
アガサ・クリスティ財団の協力のもと、開発者たちはポアロというキャラクターの核となる本質が保たれる限り、彼の過去についてより深く掘り下げて創作する自由を得ました。 しかし、クリスティの作品で描かれた出来事でさえも、慎重に扱う必要があります。 例えば、ポアロの私立探偵としてのキャリアは、警察官時代に路上で見知らぬ人を狙撃していた酔っぱらいの貴族を殺害したことから始まりました。 この無謀な殺人犯を止める勇気があったのは彼だけであったにもかかわらず、その職を降格され、警察から去ることを余儀なくされました。 しかし、問題解決のためにポアロがその圧倒的なIQではなく、銃を使用する場面であったため、Blazing Griffinが財団から、彼を銃を持った人物像にしないよう要請されたとマクフィリップス氏は語ります。

「これはポアロの特技でも強みでもありません。車のボンネットの上を滑りながら銃を撃つような男ではなく… 結局のところ、秩序と理性に取り組む男、それがポアロのすべてです」
『ロンドン事件簿』の主人公は紛れもなくポアロですが、映画や紙面に登場するいつもの姿よりもかなり若く描写されています。 正直なところ、今回のポアロは過去最高にセクシーです。 下着モデルを描こうとしたのではなく、単にポアロの明らかな自尊心の現れだとマクフィリップス氏は強調します。 これは、原作で常に表現されていることです。 「ポアロは自分の外見に強いこだわりを持っています」とマクフィリップス氏。 「口ひげの手入れを怠らず、服装は常にとてもお洒落です。 本人はただのセーターを着るかのように、朝食でスリーピースのスーツを着るんです」
彼のデザインで際立っている部分の1つが髪型です。 ポアロの意外な髪型について、すべては彼の性格によるものだとマクフィリップス氏は説明します。 「ポアロは孔雀みたいな男です。 自分の外見をとても気にするタイプ。 ちょっとハンサムになっているのは、その副産物です。 自分がハゲることを知っていたので、 頭を丸坊主にしただけの話です」 マクフィリップス氏はすっかり剃り上げた自身の頭を見せながら、わかっているような笑みを浮かべてこう付け加えます。「私もそういう経験がたくさんあるので、とても共感しますね」
探偵への道
マクフィリップス氏によると、Blazing Griffinの指針は「プレイヤーは探偵の物語をたどるのではなく、探偵の仕事をする必要がある」というものです。 これは開発者たちが1作目から取り組んできたことで、一人称視点でのシーケンスを通じて綿密な検証を加えてきた部分です。 探偵を演じるというスタイルはゲームによく見られますが、マクフィリップス氏は「ゲームという表現手段がまだそれを極めていない」と話します。
「私はゲームシリーズの『バットマン アーカム・ナイト』が大好きなんですが、探偵モードは単なる魔法です。ある地点から別の地点へ移動し、犯罪を再現する大きなバーチャル世界が作り上げられるのみです。 私にはゲームを進めていく中で、単純作業を行っているだけに感じられます」 そこで彼らは、別の場所にインスピレーションを求めました。 「映画やテレビを観ることは、非常に有意義なものでしたね。 Blazing Griffinが以前手がけたゲームの1つ『Murder Mystery Machine』は、『ザ・ワイヤー』や『トゥルー・ディテクティブ』などを参考にしており、探偵のような体験を味わえます。 私たちが目指していたのは、こういったことでした」

Blazing Griffinの開発者たちは、あるゴールデンルールに従っています。天才的な推理力で事件を解決していくのをただ座って見ているのではなく、プレイヤーにはポアロになった気分を味わって欲しいとマクフィリップス氏は語ります。ゲームの冒頭に登場する絵画の盗難は、パズルと物語を結びつけるこの手法を完璧に体現しています。プレイヤーは空間内を歩きながら、自分なりの時系列を作り上げ、手がかりを発見し、Mind Map(マインドマップ)の仕組みを駆使して仮説を組み立てていきます。これにより、プレイヤーは実際に何が起こったかについて、自分なりのイメージを描くことができ、反応するフローチャートによって、容疑者の供述を時系列や他の人々の証言と照らし合わせて検証することができるのです。
マクフィリップス氏はこの論理的な挑戦を「巨大なごちゃ混ぜのスパゲッティ」と呼んでいますが、プレイヤーが探偵として、事件の全体像を把握する役割を十分に果たせるのであれば、ごちゃ混ぜにするだけの価値はあります。
「小さな灰色の脳細胞」を刺激
30年以上の歴史があるにもかかわらず、アドベンチャーゲームの開発者はいまだにパズルの難易度を調整するのに苦心しています。 Blazing Griffinも例外ではありませんが、プレイヤーの苛立ちを最小限にするというこだわりが、同社のアプローチの指針となっています。
マクフィリップス氏は、たとえ殺人ミステリーであっても、プレイヤーを殺したり、実際の行き止まりに導いたりすることはできないと説明します。「プレイヤーを失敗させる状況を組み込むことは大変です。 『L.A.ノワール』のように、誰かに話しかけ、相手が発狂するまでその人を苛立たせ続けるような、馬鹿げたことを口にする場面はゲームに無いのです。 それで捜査に失敗して、事件を最初からやり直すことになったりすることは、 私たちの作品にはありません。事件解決に向かって進み続ける必要があるからです」
また、選択式の会話を解読することに依存するデザインは、プレイヤーに不満を抱かせる可能性があることも明らかです。 マクフィリップス氏によると、Blazing Griffinではこのような問題をどうしても避けたいと考えているそうです。 「同じ会話を2回も繰り返すのは楽しくありません。 最初の選択肢ではなく、選ぶべきだった2つ目を選択するために、できるだけ早く会話を終了しようとするのは、 私からすると面白みが無いですね」
マクフィリップス氏は、開発者がプレイヤーの判断に応じて展開される会話の選択肢や物語を通して、プレイヤーの主体性を高めることの魅力は理解していると語ります。 もし、アガサ・クリスティが作家的アプローチに対する彼の主張を聞いたら、きっと微笑むことでしょう。
「選択肢がワクワクさせるという考え方があるのは知っていますが、それには目的が必要です。 この作品で目指しているのは、皆さんにもこの物語の重要な一部になってもらうことですが、ただ単に物語を伝えようとすると、辻褄が合わなくなります。 『ポアロを最低のろくでなしにすることで乗り切った』みたいな事は、 私からするとあり得ません。そこで、キャラクターをより理解し、その人物に迫ることで、証拠固めができるような会話にすることを念頭に置きました」
ポアロ版ロンドンの創造
ロンドンはすっかりおなじみの舞台ですが、マクフィリップス氏はポアロが描かれるロンドンがこれまでと異なる点を次のように挙げています。「シャーロック・ホームズのロンドンといえば、煙突と浮浪児たちですが、 ポアロのロンドンはもっと中流階級のイメージです。 綺麗なアパートや清潔な街並み。 私たちはスコットランドに拠点を置いていますが、実はエディンバラの伝統的な建築がゲームや建物の外観にかなり取り入れられています。 どれも壮大で大きなタウンハウスのようなものばかりです」
さらに続けて同氏は、アガサ・クリスティ財団専任の歴史学者による徹底的なリサーチ、参考資料、そして親身なアドバイスがゲームの各場面にどのように活かされたかについても言及しています。 「ゲームは残された資料による数多くの事実に基づいていますが、私たちには書籍が山ほどあります。 面白いもので、例えばコンセプトアーティストが警察の制服を作っていた時、彼女は何世紀にもわたる英国警察の制服だけを集めた本を持っていたんです。 どうしてそんな本が存在するのか? 理由はわかりませんが、役に立ちました」
彼らの徹底したアプローチはあらゆる場面で発揮され、細部に至るまで丹念な時代考証が施されています。
意外な相棒の存在
プレイヤーをどう導くかは、アドベンチャーゲームにとって難しい課題です。 幸いなことに、推理ゲームというジャンルには、登場人物主導で物語を展開できる解決策が用意されています。
マクフィリップス氏は単刀直入に説明します。「この手の物語によくあるパターンが、主人公の相棒です。 相棒の存在には理由があり、その理由はおバカであることです。 相棒はただ『わからないから説明して』と言うために存在します。そういったお決まりのスタイルが、どういうわけか私は大好きなんです」
ここで、シリーズの人気者、アーサー・ヘイティングズをご紹介しましょう。 原作でこのポアロの友人は脇役として定着しており、物語の語り手となることも多いくらいです。 しかし、Blazing Griffinは、ベルギー人探偵の頼れるおバカさんとして運命づけられた保険協会員とポアロの最初の出会いについて、独自のアイデアを生み出しました。 マクフィリップス氏は、ゲームプレイにおける相棒の役割についてこう語ります。「相棒が間の抜けたことを言うというお決まりの展開があります。 それをきっかけにポアロが『待てよ、そうか!』と言えば 相棒が『何か変なことを言いましたか?』と言い、 二人は駆け出して事件を解決します。相棒が言った間の抜けたことのおかげでです」
シャーロックとワトソン、ヘイスティングズとポアロなど、探偵小説に存在する相棒の輝かしい歴史から、マクフィリップス氏は『ロンドン事件簿』に、ありそうでなかった着想を取り入れました。
「私が描くポアロとヘイスティングズの関係は『ビバリーヒルズ・コップ』がモデルなんです。 エディ・マーフィーが現れ、お堅いタイプのジャッジ・ラインホールドが登場する。 ヘイスティングズが初めて登場する時、彼はまだ保険協会で働いていて、警察官でもなければ探偵でもなく、かなりお堅い雰囲気です。 ロンドンには詳しいけれど、犯罪については何も知らず、死体なんて見たこともない。 そこにポアロが現れて、ヘイスティングズの人生にちょっとした旋風を巻き起こしていきます」
「ポアロはロンドンでは警察官ではないため、ヘイスティングズの協力が必要なんです。 こうして二人は、捜査してはいけない犯罪について調査して回ります。 それはヘイスティングズに別の人生を味わわせ、最終的には二人が犯罪を解決するパートナーとして残りの人生を共に歩むきっかけとなります。 これはヘイスティングズにとって『ブレイキング・バッド』 的な瞬間になります」
The Case of the Golden Idol
歴史パズル『The Case of the Golden Idol』を昨年リリースしたColor Gray Gamesは、Blazing Griffinと異なり新しいスタートを切ることが可能でした。 邪悪な黄金の像にまつわる殺人事件を数十年かけて解明していくこのゲームでは、開発者は先入観を持たず、単純にすべてを謎解きの対象にすることができました。
プレイヤーは、実体のない傍観者として鮮やかなピクセルアートの犯罪現場に送り込まれます。 序盤で被害者が突然炎に包まれる場面のように、プレイヤー自身が決定的な瞬間を目撃することも多く、フリーズフレーム設定を利用して、徹底的にこれらの場面を調べることで、登場人物がなぜこのようなひどい目に遭ったのかを正確に理解することになります。
Epic Games Storeでは、このゲームを手掛けたアンドレイス氏とアーネスト氏のクラヴィンス兄弟から、ミステリーゲームの舞台を18世紀、つまり推理小説が初めて書かれる100年も前に設定した理由を伺いました (ちなみにウィルキー・コリンズの『月長石』は、T・S・エリオットのような批評家たちから、最初の推理小説という名誉を度々与えられています)。 アンドレイス氏は、自身や兄弟にとって19世紀の殺人ミステリーは使い回しされたように感じられるが、18世紀は王室や城といった想像力をかきたてる背景が豊富で、しかもほとんどのプレイヤーにとって馴染み深いのだと説明しています。

アーネスト氏はさらに、「興味深い時代です。啓蒙主義であると同時に近代の始まりでもあります。それは植民地主義です。そして、安価なアルコールが大量に導入された時代でもあります。パラレルワールドですので、実際の出来事に関係しない独自の物語を作ることができるんです」と述べています。
彼らは歴史的な雰囲気のゲームを作りたいと考えていた一方、実際の出来事に縛られているとは感じたくありませんでした。 権力争いをする大物政治家が登場するゲームで、1700年代のイギリス政治を研究した結果、あまりにも圧倒されてしまったのです。 その結果、1700年代の法律の専門家になるのではなく、政治的な出来事が恐ろしい結果を招くという物語のテーマに沿ってシンプルなものにすることにしました。このテーマは、革命的な1700年代と同様、現在も重要な意味を持ち続けています。
パスポートも警察も写真もなかった時代に、紙に残る記録もない人々の物語を書くことは、挑戦であると同時にある種の素朴さをもたらしてくれたとクラヴィンス兄弟は語ります。 二人は自分たちが、スマートフォンが普及し、現代のテクノロジーが捉える豊富な情報の中で仕事をしなければならない推理作家ではなく良かったと感じています。
病的な魅力
ゲームに血なまぐさい殺人現場はつきものです。 ジャンルによっては、グロテスクに殺害された死体につまずかずには足を踏み出すことができないものもあります。『The Outlast Trials』や『Dead by Daylight』を見れば納得です。 しかし、未解決の殺人事件がどれほど想像力をかきたてるかは周知の事実です。近年では1,000ものポッドキャストを立ち上げるほどの影響力も持っています。
アンドレイス氏は殺人事件に対する一般的な好奇心をどのように活用したかについて、次のように説明しています。「殺人現場には、何かとても人を引きつけるものがあると思います。 ゲームを開いて、誰かが死んでいるのを目撃したとしたら——理想的には奇妙な状況下でです。すぐに答えを出したい疑問が浮かんでくるはずです」 殺人事件は横領などのホワイトカラー犯罪よりも、ずっと興味深いテーマなのだとアーネスト氏は補足しています。 アンドレイス氏が続けます。「社会には殺人に対する奇妙な興味が存在します。 人々は連続殺人犯に夢中になり、私たちはその感覚を利用していると言えます」
アンドレイス氏はこのジャンルに惹かれた例として、Game Maker's Toolkitの探偵ゲームに関する動画を挙げています。 「ゲームは探偵としての体験を約束し、その設定も備えています。しかしプレイしてみると、実際に探偵の気分を味わうことはできません。 探偵としての体験を実現したゲームは数少なく、特に有名な作品は『Return of the Obra Dinn』です。 私たちは画期的な作品だと思っていたのですが、他に支持者はいませんでした」 ルーカス・ポープ氏のゲームに影響を受けたクラヴィンス兄弟は、推理ゲームに独自のアレンジを加えてみることにしました。
謎めいた面白さ
斬新でまったく予想外のものを作りたいと考えたクラヴィンス兄弟ですが、歴史的な殺人ミステリーというジャンルの中で仕事をしている以上、ファンが好むものを盛り込まないわけにはいきませんでした。 その中には、屋敷の晩餐会での毒殺事件も含まれています。
クラヴィンス兄弟は、特に秘密のコードや文字をゲームに取り入れようと考えていましたが、これが大きな困難を引き起こしました。 結果的に、ほぼ解読できないように設計された暗号を追加してしまったのです。
これについて、アンドレイス氏は次のように説明します。「現実に使用されている暗号の多くは、楽しいものではありません。 原理を知っていても使いこなすのは至難の業です。 暗号の問題点は、人間が間違った方向に進む方法をいくらでも生み出せることです。 文字を使って何かをするときは、常に危険な可能性の箱を開けることになります。 その結果、必然的に望ましくない事態に遭遇するんです」
クラヴィンス兄弟は暗号解読をゲーム化する方法がまだ完成していないことを認めています。しかし、成功した人などいるのでしょうか? とは言え、暗号解読とゲームのチャプターの世界をどの様に結び付けたかについては満足しています。 プレイヤーは総当たり攻撃をすることができず、ゲームは暗号になったシンボルのアルファベットをすべて照らし合わせるように指示はしません。 クラヴィンス兄弟は暗号を解読した時の高揚感を生み出す、実現可能な方法を見つけたのです。
どこでも何でもすべて同時に
『The Case of the Golden Idol's』の最も特徴的な点の1つは、プレイヤーに対する制限が無いことです。 各ステージは殺人現場の瞬間をとらえたもので、何が起こったのかを解明する間、時間は止まったままです。つまり、山積みにされた死体の1つに過ぎません。
アンドレイス氏にとって、各チャプターを完全に静的な状態に保つことには明確な目的がありました。 「物質的な手がかりや環境へのアクセスを制限したいわけではなく、プレイヤーが知識を得るスピードだけを調整したいと考えています。 ここにある推理小説とは異なり、それが可能なんです。 フィクションでは、必ずしも物事が公平であるとは限りません。 読み手として、解明できないことが多々あります。 その物語に登場する探偵だけが解明できるのです」
この作品は主人公が存在しない物語であり、ただ1つの運命的な物体、すなわち「Golden Idol(黄金の像)」をめぐる不幸な事件の連続でしかないのです。 アーネスト氏は、魔法のアーティファクトを軸に論理と理性のゲームを展開する矛盾を認めています。 「魔法アイテムであるため、この偶像はいくつかの問題を引き起こしました。 人々は偶像を利用し、ゲームの残りの時間はそれを制御するために費やされます。 すべてを魔法で説明することができるため、おそらく魔法アイテムは推理ゲームに適していないでしょうね。 私たちは、偶像ができることを説明するために多大な労力を注ぎました。しかし、何でもできるというわけではありません。 魔法ですが、武器ではないのです。 偶像よりも銃の方が優れた武器ですよ」

開発者たちは、ナレーターはおろかプレイヤーキャラクターさえも登場させずに、ゲームの世界に関する情報を提供するという永続的な課題に直面しました。アーネスト氏は彼らのアプローチを「情報の飢餓」と表現し、さらに「私たちはプレイヤーにもっと知ってもらいたいと考えています。 最小限の量で多くの情報を提供したいのです」と述べています。
メモ、手紙、日記、登場人物の上着の中身だけでは不十分であることから、二人は各チャプターの間にモーションコミックを追加し、ゲームの出来事の流れをより明確にすることが重要だと考えました。 しかし、新聞を登場させるという初期のアイデアは却下されました。これは、それほど綿密な検証を必要としないゲームにおいて、世界観の演出のためによく使われる、お馴染みの手法です。 破棄した理由は、プレイヤーは単に新聞を読まないだろうと懸念したためでした。
Blazing Griffinのアプローチと同様に『The Case of the Golden Idol』でも登場人物が重要な鍵を握っています。 「私たちは、行動が意味をなすような物語を構築するよう心がけています。 最近のテレビシリーズを見ると、謎解きはあっても登場人物が自然に行動していないため、その背景にある事件や謎が意味をなさないということがよくあります。 完璧に論理的である必要はありません。 たとえ理屈に合わない行動があったとしても、そうする何らかの理由があるはずです」
これは静かで革新的な選択ですが、『Golden Idol』ではプレイヤーは単なる傍観者です。 観察し、理解することしかできません。 アンドレイス氏は、プレイヤーが主体性を持ち、何らかのツールを導入することも検討したものの、核となる物語を希薄にする危険性があると考え、このアイデアを破棄したと説明します。 「主体性を排除した理由の1つは、主体性がある種の選択やノンリニアな要素を暗示する場合があったからです。 しかし、私たちは、これは1度しかプレイしないゲームだということを正直に伝えたかったのです」
思考補助ツール
『The Case of the Golden Idol』の場面では、いくつもの画面に詳細な環境描写が詰め込まれているため、プレイヤーはあっという間に圧倒されてしまう可能性があります。 この問題に対するColor Gray Gamesの解決策は「思考」モードであり、プレイヤーに自分の考察を整理して検証する場が用意されています。 これらの画面では、プレイヤーが集めた単語を穴埋め式の文章に配置する工夫が凝らされています。
このモードは、プレイヤーが次のチャプターへ進むために自説を展開する場所です。 また、サイドミッションを通して、切実に必要となる情報も与えられます。 プレイヤーは、肖像画ギャラリーで顔と名前を一致させ、確執のある登場人物たちの間に存在するサブストーリーを理解するよう促されます。

アンドレイス氏は、このモードがプレイヤーを導くうえで重要な役割を果たしたのだと説明します。「このゲームは多くのことを求めることから、プレイヤーを挫けさせる可能性があります。そのため、プレイヤーが何かを理解する手助けとなるような、小さな勝利、小さなパネル、小さなパズルを導入する必要があると考えました」全体像がつかめなかったとしても、パズルの小さなピースを理解するのに役立つはずです。
このような小さなパズルは文章ベースであることが多く、アンドレイス氏の(英語文献学の分野で学んだ経験からくる)言語に対する深い理解が発揮されています。 「思考パネルパズルの文章を作成する際、パズルに含まれる内容によって文章の難易度が大きく左右されることが多々あり、ヒントの数も同様に影響します」
こういった複雑に練られたゲームは、プレイヤーに多くのことを求めますが、それと同じだけのサスペンスと邪悪なドラマを提供してくれます。 また、過去の興味深い様子も垣間見ることができます。
ゲームは進行中です! Epic Games Storeで配信中の『The Case of the Golden Idol』と『アガサ・クリスティ:エルキュール・ポアロ - ロンドン事件簿』で、おぞましい歴史ミステリーの謎を解き明かしましょう。