
NixxesとInsomniacが『Marvel's Spider-Man Remastered』のPC版への移植について語る

PlayStation 5でのリリースから2年。ついに『Marvel's Spider-Man Remastered』のPC版が登場し、評論家やファンから大絶賛されています。
しかし、この成功の裏には、オランダのゲーム開発会社Nixxes Softwareのたゆまぬ努力がありました。同スタジオは、大成功を収めた視覚的に美しいコンソールゲームを、多くの場合はPC版のプレイヤーにとって嬉しい機能を実装させながら、PCに移植させることを専門に行うことでその名を上げてきました。
昨年、NixxesはSony Interactive Entertainmentに買収され、『Marvel's Spider-Man Remastered』は同スタジオにとって、買収後初めてのプロジェクトとなりました。
Epic Games StoreとSteamで本作がリリース後、私たちはNixxesの創立者兼開発シニアディレクターのユルゲン・カッツマン氏と、Insomniac Gamesのコアテクノロジーディレクターのマイク・フィッツジェラルド氏にインタビューを行い、新しい操作やアップスケーリングのカスタマイズ、そしてもちろん幅広いコンピューター仕様への対応など、本作をPCに移植するうえでチームが直面した課題について伺いました。

『Marvel's Spider-Man Remastered』をPCに移植するにあたって、Nixxesはどのような課題に直面しましたか?
Nixxesの創立者兼開発シニアディレクター、ユルゲン・カッツマン氏:このプロジェクトには、確かに困難な点がいくつか伴いました。何度も直面したことのひとつに、『Marvel's Spider-Man Remastered』はその大部分がPlayStation 5向けに作られており、ハードの性能を最大限活かしたものになっていたということがあります。そのような作品を、PS5よりはるかに性能の劣ったハードウェアを含む幅広いPCに対応しながら、同時に最も高性能なPCでも魅力を十分に発揮できるゲームに仕上げるには、多大な労力と調整を必要としました。
その土台として、私たちはDirectX 12のレンダラーを一から構築し、DXRレイトレーシングを全面的に採用することで拡張する必要がありました。また、プレイヤーが好みの環境でプレイできるよう、様々な機能も追加しました。
ある意味、PCゲーマーの欲求をすべて満たすことが最大の難題ですね。そのためには、様々な種類のディスプレイや入力デバイスに対応し、ユーザーが好みに合わせてグラフィックやパフォーマンスを設定できるようにする必要があります。それがPCゲームの良さであると同時に、ゲームスタジオにとっては課題となるのです。
本作はマウスとキーボードに対応していますが、ハプティックフィードバック対応のコントローラー用にデザインされたゲームの操作を、マウスとキーボードのような微妙なものに変換する際に特に苦労した点はありますか?プレイ中にハプティックフィードバックが感じられないと、何か物足りないと感じたりはしませんでしたか?
カッツマン氏:チームが実現したいと考えていたのは、ゲームパッドでプレイしているときに感じる、マーベルのニューヨークをスパイダーマンとして駆け抜けるヒーローの感覚を、マウスとキーボードでも可能にすることでした。これは決して簡単なことではなく、たくさんの試行錯誤とフィードバックを要しました。個人的に言わせてもらうと、私はゲームパッドよりマウスでの操作が気に入っています。素早く辺りを見渡し、すぐさま振り向いて次のビルに飛び移ることができるからです。
これはPlayStation Studiosの子会社として臨む最初の単独プロジェクトとなったわけですが、Nixxesにとってプロセスの変化や合理化などはありましたか?
カッツマン氏:私たちのチームにとって、本作におけるInsomniac Gamesとの提携は本当に楽しいものになりました。私たちのチームとInsomniac Gamesの間ではカジュアルなやりとりが多く、誰もが自分の専門知識を持ち込むことができました。今秋リリース予定の『Marvel's Spider-Man: Miles Morales』でも、Insomniac Gamesとの提携関係を継続できることに心を躍らせています。
PlayStation Studiosの一員になったことで、そのような協力関係や信頼関係がより簡単に築けるようになりましたし、スタジオとしても、PlayStation Studiosのサポートがあれば、最高のゲーム作りに全力を注ぐことがより簡単になると確信しています。
PC版では、ゲームのグラフィックに関する設定がかなり幅広く用意されています。グラフィックのアップグレードに対応するために、どのような決断を下していったのでしょうか?
カッツマン氏:様々なオプションを用意することを目指しました!プレイヤーがそれぞれ自分好みにゲームを設定できる点が、PCゲームの最大の特徴だと思っています。時には設定を少なくして簡略化することもありますが、ほとんどの場合、CPU使用率、GPU使用率、あるいはグラフィック品質などをプレイヤーが自由に調整できる設定を実装することは、価値のあることだと判断しています。実は、プレイヤーに満足のいく拡張性を楽しんでもらえるように、リリース直前にもオプションを追加したんですよ。
レイトレーシングによる反射は特に、本作のグラフィックや感覚にどのような影響をもたらしているとお考えですか?
カッツマン氏:ゲームとの相性が抜群だと思います。ゲームの大部分はニューヨークの通りで展開され、街にはガラスが張り巡らされた近代的な高層ビルが立ち並び、周りの街全体が映し出されています。レイトレーシングがなくても、キューブマップで街全体を素晴らしくレンダリングできます。しかし、リアルタイムのレイトレーシングがあれば、そこに歩行者や車が完璧に映り込むため、より細かい反射を演出できるようになります。PC専用の高精細なジオメトリモードで周囲のビルが映し出され、その結果、街がよりリアルに、活気に満ちたものになるのです。
ゲームのカスタムアップスケーリングシステムの仕組みについて説明していただけますか?
カッツマン氏:幅広いアップスケーリングアルゴリズムに対応するようにしました。ハードウェアに関係なく、そしてユーザーの好みに合わせて使用できるようにしたかったのです。これにはNVIDIA DLSS 3をはじめ、Insomniac Gamesが開発し、PlayStation版の『Marvel's Spider-Man』でも採用されているアップスケーリングアルゴリズム、IGTI(Insomniac Games Temporal Injection)も含まれています。高速でありながら、すべてのハードウェアに対応しています。
「Dynamic」モードで、必要なアップスケーリングのレベルを自動的に判断してくれる、私たちのアップスケーリングアルゴリズムを使用することをお勧めします。GPUに十分な処理能力がある場合や、ゲーム内のロケーションが少しシンプルな場合は、フルネイティブレンダリングが使用され、DLSSと組み合わせて用いられると高品質なDLAAアンチエイリアシングも使用されます。ゲーム内のアクションが少し慌ただしくなった時や、GPUに負荷のかかる解像度で動作している時は、より低い内部レンダリング解像度にスムーズにスケールダウンし、目標のフレームレートを維持します。もちろん、これらすべてのアルゴリズムについては固定の品質レベルにも対応しています。ここでも、カスタマイズ性が鍵となるのです。
Nixxesはどのようにして、ゲームの画面比率が正確に自動で調整されるようにしたのでしょうか?
カッツマン氏:画面のアスペクト比に関係なく、ゲームは自動的に美しく表現されるべきであるというのが私たちの哲学です。通常のゲームプレイでは、大抵はうまく機能するはずで、『Marvel's Spider-Man』も例外ではありません。しかし、私たちはさらに一歩踏み込んで、普通は特定のアスペクト比に合わせて作られるすべてのシネマティクスを、21:9、32:9といった非常に横長のアスペクト比でも全画面表示で適用されるように調整しました。
また、本ゲームには最大48:9のシネマティクスに対応する特別なモードも用意されています。ブラー効果を用いて、カットシーンの中央にピントが合うようになっています。これらのモードを作るために、チームはゲーム中のシネマティクスをすべて調べ上げて、横長のアスペクト比に対応するようにアニメーションやセットを調整する必要がありました。多大な労力を費やしましたが、結果的にその努力が報われました!
PlayStationのDualSense、そしてアダプティブトリガーフィードバックやハプティックレスポンスをPC版に取り入れるにあたって、どのような課題に直面しましたか?
カッツマン氏:主要な機能を引き継ぐこと自体は、さほど難しくありませんでした。ハプティクスやトリガーそのものの調整は、すでにPS5で終わっていましたからね。ただし、PCでそれらに対応させるのは、まだ困難なことがあります。最終的には、有線のコントローラーであれば、DualSenseの機能すべてに対応しています。標準的なBluetoothでトリガー、ハプティクス、オーディオの各機能に完全に対応することは、残念ながらできませんでした。ただし、USB-Cを利用してコントローラーを接続すれば、PS5と同じようにすべての機能をお楽しみいただけます。
Insomniacにとって、本作がより多くのユーザーに向けてリリースされることについてどう思われますか?
Insomniacのコアテクノロジーディレクター、マイク・フィッツジェラルド氏:新しいプレイヤーに『Marvel's Spider-Man Remastered』を体験していただけるのは、最高に嬉しいことです!ゲーム開発者は、何年もかけて作ったゲームに自分の思いを込めるわけです。ですから、自分が作ったものをプレイヤーが手に取り、楽しんでいる姿を見ること以上に嬉しいことはありません。私たちにとって、PC版プレイヤーの皆さんを相手に、またあの喜びを感じられるのは非常に素晴らしい体験です。PCのプラットフォームでゲームの魅力を存分に引き出してくれた、Nixxesのチームの素晴らしい仕事には心から感謝しています。
Steam Deckなど、PCゲーム用の携帯機器がいくつも登場していますが、携帯機器でゲームがプレイできることについてはどのようにお考えですか?
カッツマン氏:こうしたデバイスは、PCゲームのエコシステムがいかに柔軟であるかを示すいい例です。ノートパソコンでも、携帯端末でも、高品質のデスクトップでもプレイでき、どのデバイスにも長所があります。テレビでしか遊べなかったゲームが外出先でも遊べるようになったのは、確かに素晴らしいことだと思います。
他に伝えたいことはありますか?
カッツマン氏:Nixxesの一同は、これらの素晴らしいゲームをPCゲーマーの皆さんにお届けできることを誇りに思います。また、私たちはPCゲーマーの皆さんが期待しているすべての機能を実装できるよう常に心がけています。チームはコミュニティとの交流にも力を入れていますので、ソーシャルチャンネルを通じて、私たちのゲームにどのようなPC版の機能を搭載して欲しいかなど、引き続きご意見をお寄せください!
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