
ホラーの再定義:Behaviour Interactiveがいかにして『ダンジョンズ&ドラゴンズ』を『Dead by Daylight』に取り入れたのか

『Dead by Daylight』は混沌を念頭に置いてデザインされています。
マッチを行うたびに、生存者と殺人鬼のいたちごっこによるストレス満載のゲームプレイを楽しめます。 さらに、特徴的なキャラクターパーク、象徴的なホラーシリーズとのコラボレーション、そしての唯一無二の存在、ニコラス・ケイジの出演により、ゲーム内ではどんなことでも起こりうるような感覚に陥ります。
そのため、新しく発表されたチャプター『Dead by Daylight: Dungeons & Dragons』(6月3日(米国時間)発売予定)が大人気のテーブルトークRPGとのコラボレーションになることは、それほど驚きではないかもしれません。 『D&D』はヒーローとその能力の選択肢を数多く有するほか、モンスターや悪役に満ちた広範な神話を誇っています。 それでも、この事実を理解するには時間を要する並外れたアイデアです。 ホラーゲームに『D&D』のキャラクターを登場させるんですよ? 一体どんなふうに融合するのでしょうか?

『Dead by Daylight』のデベロッパーであるBehaviour Interactiveの開発者も同じことを考えていました。 プリンシパルゲームデザイナーであるジャニック・ヌブー氏は2017年から『Dead by Daylight』チームに所属していますが、『D&D』のライセンスを獲得したと聞いたとき、「意味がわからない」と彼でさえも少々混乱したと言います。 しかし、DLCの計画が始まると、ゲームとどれほどうまく噛み合っているかに気付きました。
「非常にホラーを重視した方法を取ったので、[最終的に]完璧な組み合わせとなりました」とヌブー氏は話します。
パートナーシップ部長のマシュー・コテ氏にとっては、当然の結果でした。 コテ氏は『D&D』で育ち、過去10年間はほぼ毎週、子どもの頃の友人とプレイしています。 ベテランのプレイヤー、そしてファンとして、コテ氏は『D&D』にはハイファンタジーの設定以上のものがあると確信していました。
「[『D&D』は]ストーリーテリングの手段なんです。 人々が物語を語る方法であり、ホラーは物語の中で起こります」とコテ氏は説明します。「RavenloftのStrahdのようなゲーム━━ちなみに吸血鬼が登場する昔ながらのホラーですね━━をプレイするにしろ、ドワーフやエルフが走り回るハイファンタジー設定のゲームをプレイするにしろ、物語の語り方にホラーの要素を入れることができます。 そして、強烈な感情を呼び起こす可能性があり、これを私たちは常に探しているんです」
このテーブルトークRPGに関する知識がいかなるレベルでも、『Dead by Daylight: Dungeons & Dragons』はきっとさまざまな感情を呼び起こしてくれるはずです。 Behaviourは昔ながらの『D&D』の悪役、邪悪なヴェクナを殺人鬼に加えます。ヴェクナは強力なリッチの神で魔法使いであり、『D&D』の伝承では死そのものを操る術を身につけています。 ヴェクナは『D&D』のキャンペーンの中でも、パーティーが対峙する相手として最も恐れられる敵に数えられます。Behaviourはヴェクナに周知された呪文を与えることで、ゲーム内でこの恐怖の感覚を再現しています。
生存者の方では、吟遊詩人が新しいチャプターで登場します。この吟遊詩人は実際2人のキャラクターが1人になっています。プレイヤーは、人間のBaermar Urazか、エルフのAestri Yazarを選択し、異なるコスチュームを好きなように組み合わせることができます。 カスタマイズオプションは、テーブルトークRPGのキャンペーンで『D&D』プレイヤーがキャラクターを作成する方法のちょっとしたオマージュと言えます。 ヴェクナを相手にプレイする際、吟遊詩人や他の生存者は魔法のアイテムで自身を守ることができます。
チャプターには、中世をテーマとした壊滅したボルゴを舞台とする新マップ、Forgotten Ruinsも導入されます。 ここは、『Dead by Daylight』の冒頭の出来事を引き起こしたラヴクラフト的存在であるエンティティに引き寄せられてからヴェクナが棲み処としたところです。 エンティティは殺人鬼と生存者をさまざまな世界から引き寄せ、互いを戦わせ、その恐怖や感情を糧にしています。

この基本的なストーリー構成があるおかげで、BehaviourはさまざまなシリーズやIPからインスピレーションを得ながら、独自のホラー物語を生み出すことができるのです。 しかし、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』とのパートナーシップは段違いです。 『Dead by Daylight』同様、『D&D』も混沌と予測不可能な環境で真価を発揮するため、このコラボレーションはこれまでで最も注目すべきものとなっています。
『D&D』に秘められたホラーを発見する
ビデオゲーム版『D&D』は、『Baldur's Gate』、『Icewind Dale』、『Neverwinter Nights』などの高い評価を得たPC版RPGで1990年代から2000年代初頭に目覚ましい成功を収めました。 その後はシリーズ作品のリリースが止まり、『D&D』ビデオゲームへの興奮が再燃したのは、昨年リリースされた『バルダーズ・ゲート3』からでした。 Larian Studiosの受賞歴を誇るこのRPGは、卓上ロールプレイングゲームシーンに重要な形で注目を戻しました。そして最近、『D&D』のパブリッシャーであるWizards of the Coastは、複数のスタジオが『D&D』の世界をベースにした新しいビデオゲームを開発していることを明らかにしました。
『Dead by Daylight: Dungeons & Dragons』はこの中の最新のプロジェクトで、シリーズ初のホラーゲームへの参戦となります。 『D&D』は通常、魔導士やゴブリンといったファンタジーの定番で知られていますが、その歴史の中で恐ろしい物語は普通に存在しています。 テーブルトークRPGのキャンペーンでは、さまざまな不気味な設定を探索することができますが、最も有名な例として、プレイヤーが吸血鬼、幽霊、ゾンビに立ち向かうゴシックホラーキャンペーン『Ravenloft』です。
『D&D』はホラーストーリーで知られているわけではないものの、恐ろしいクリーチャーや悲惨なキャラクター、気味の悪い雰囲気と、恐ろしい体験を再現するのに必要なすべての要素がそろっています。 最終的には物語を語る人に委ねられるわけです。そして、今回の場合、偶然にもホラーはBehaviourの専門でした。
「『Dead by Daylight』チームは、どんなテーマでも自由に使ってホラーを構築できることに誇りを持っています」こう語るのはシニアクリエイティブディレクターのデイヴ・リチャード氏。 「特に例に挙げたいのはK-POPのチャプターです。 かなり挑戦しがいのあるテーマでしたが、それでもホラーコンテンツを開発できました。 ですから、既にホラーの素材がある『ダンジョンズ&ドラゴンズ』をホラーとして再現するのはそれほど難しくはありませんでした」
Wizards of the Coastのデジタルライセンシングチームのクリエイティブプロデューサーを務めるショーン・ロー氏によると、『D&D』と『DBD』のコラボレーションについて、両者は最初の出会いのずっと前から既に独自のアイデアを練っていたとのことです。 Behaviourの多くのスタッフが『D&D』のファンであり、Wizards of the Coastのオフィスには『Dead by Daylight』を楽しむスタッフがいます。 そのため、この二社が実際に話し合いを始めると、アイデアは尽きませんでした。
「『Dead by Daylight』は[『D&D』をホラー設定で]探索する完璧な方法のひとつです。というのも、協力マルチプレイヤーのパーティーが逆境を克服するという非対称性があるからです。まとまりのない冒険家の一団が悪を倒せるのだろうか?これこそが『D&D』の本質です。 本当に、非対称マルチプレイヤーで実現させたかったんですよ」とロー氏は語ります。

まず最初に取り組んだのは、殺人鬼を誰にするかについてでした。そこで、開発チームは『D&D』のモンスターコレクションからあらゆるモンスターを考慮しました。 殺人鬼があまりにも馬鹿げていたり、お茶らけている(Gelatinous Cubeのファンには謝っておきます)ものは避けたかったと同時に、他の媒体で何度も登場しているクリーチャーにもしたくありませんでした。
殺人鬼は『D&D』を象徴するヴィランである必要があり、Behaviourはもう一人の強力なリッチ、Acererakに決定しかけていました。 しかし、その決断が最終的にヴェクナに下された理由は、テーブルトークRPGにおけるヴェクナの不朽の遺産に加えて、新チャプターのリリースが『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の50周年と重なったことにあります。 Wizards of the Coastは、数々の新製品のリリースやイベントを含め、1年を通して盛大に祝う計画を立てています。
その中の一つが、多元宇宙を欲望のままに作り変えようとするヴェクナの計画を阻止しなければならない新キャンペーン『Vecna: Eve of Ruin』です。 そのため、2024年はThe Whispered One(ヴェクナ)にとって重要なカムバックとなることが既に決まっており、『Dead by Daylight』へのヴェクナの参加はその祝祭とうまく合致していました。 このゲームでは間違いなく、ヴェクナのことを聞いたことすらような新しい世代のプレイヤーに、ヴェクナが紹介されます。

しかし、50周年に関係なく、BehaviourとWizards of the Coastの両社は、ヴェクナの恐ろしいペルソナと、長年にわたって『D&D』のパーティーに植え付けてきた恐怖から、ヴェクナが最有力候補になっていただろうと断言しています。 ロー氏は、ヴェクナはその極めて危険な性質から、高レベルのプレイヤーにさえ強烈な恐怖を与えることができる、神話の中でも稀有な脅威として際立っていると述べています。
「彼には無視できないオーラのようなものがあるのです」とロー氏は続けます。 「リッチである彼を殺すことはできますが、ホラー映画のモンスターのように何度も何度も蘇ります」
どのように『Dead by Daylight』に神を統合するのでしょうか?
ヴェクナのようなキャラクターは今まで『Dead by Daylight』に存在しませんでした。 このゲームに登場する殺人鬼たちはいずれもそれぞれ恐ろしいですが、ヴェクナのように世界全体を破壊させるような能力は持ち合わせていません。
「『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のことを何も知らない人にとっては、カッコいい殺人鬼になるでしょうね。 素晴らしい殺人鬼ですから」とコテ氏。「初期[の『D&D』の素材]には、ヴェクナの痕跡があるのですが、キャラクターとして存在していなかったんです。 「アイ・オブ・ヴェクナ」があり、「ハンド・オブ・ヴェクナ」がありました。これらは非常に強力なアイテムで、最凶のソーサラーたちが手にしたいと考えていました。 世界全体を通して、ヴェクナの部分部分しか垣間見れなかったんです。 半世紀かけてその伝説が作り上げられたのはとても素晴らしいことだと思います」

Behaviourにとって、『Dead by Daylight』にヴェクナを登場させるうえで、ヴェクナの力と評判を尊重することは極めて重要でした。 しかしまずは、ゲームにどのようにたどり着いたのかを説明する必要がありました。ヴェクナは神のような存在ですが、彼を誘拐するエンティティも同様です。 なぜ一方の神がもう一方の神に勝ったかを考えるよりも、チームはMark of Negation(否定の印)により、見事な解決方法を考えつきました。
この印は『Dead by Daylight』の伝承において新しいコンセプトであり、実質的にヴェクナの力に制限をかけ、エンティティのトライアルから脱出できないようにしてしまいます。 これは一度限りのものではないので、これにより今後、他の非常に強力な存在をゲームに組み込むことができるようになります。
「以前に『Dead by Daylight』で実現、もしくは導入することを考えてもいなかったキャラクターが可能性として浮上してきました」とリチャード氏は語ります。

しかし、印のせいで生存者にとってヴェクナが脅威でなくなるわけではありません。 何世紀もの間、魔法を研究した魔法使いとして、ヴェクナは『D&D』の50年の歴史の中に登場してきた呪文なら何でも使うことができます。 攻撃呪文ばかりを使わせるのではなく、チームはよりクリエイティブに彼のスキルセットを作り上げることを考えました。 当初は、ヴェクナがロードアウトで変更できる複数の呪文を持つように計画していたものの、そのアイデアは少し実現が困難であることに気づきました。
そこで結局、4つの異なる力に落ち着きました。 まずはFlyで、空中浮遊により前方向にダッシュしたり、パレット(追われている際に生存者が落とすことができる障害物)やさまざまな障害物を乗り越えたりできます。 Flight of the Damnedは、ヴェクナのFifth Editionのステータスから直接借用されており、扇状の小範囲で投擲物を投げ、これは障害物を通り抜け、当たった生存者にダメージを与えます。
Dispelling Sphereはさまざまな呪文の組み合わせで、生存者には見えない大きなエネルギーボールを放ちます。これに当たると、ヴェクナはその生存者の位置をマップで確認し、その生存者の持っている魔法アイテムを短時間無効化することができます。 最後はMage Handで、これは昔からある『D&D』の呪文です。遠くからパレットをマークすることができ、効果はパレットの状態により異なります。 上を向いていたら、Mage Handは生存者がそれを倒すのを一時的にブロックします。 既に倒れていたら、呪文によりパレットは元に戻り、ヴェクナが通れるようになります。

Mage Handは、このような魔法使いの巨匠にとってはあり得なさそうな選択肢だったため、開発チームが非常にワクワクしていた呪文でした。 これは開発チームがプレイヤーに感じてほしいと思ったパワーファンタジーにうまく合致し、冷酷に犠牲者をもてあそんでいるような気分にさせます。
「[Mage Handは]理にかなっているのです。なぜなら、もし自分が強力なウィザードで、全身が魔法で、行うことすべてが魔法であるなら、実際に物に触れようと思わないですよね? その必要がないんです」とコテ氏。「1日に2回しか呪文を唱えられず、昼寝が必要な見習いウィザードのように、力を温存しているわけではないのです。 ヴェクナですよ。彼にできないことなんてありません」
しかし、本作のほかの殺人鬼と同じく、彼を倒すことはできます。生存者は、ヴェクナを操作しているプレイヤーが何度も同じ呪文を唱えるのではないか、と心配する必要はありません。
「クールダウンがどれも長いため、1つの呪文に頼ることはできません」と、ヌブー氏が説明します。 「どの呪文をどのタイミングで発動するかを管理することが大切で、スキルレベルが問われます」
ヴェクナのマップを作るにあたって
ロー氏によると、Forgotten Ruinsのデザインは、ヴェクナの過去に馴染みのある場所を巧みに再現したもので、そこにはイースターエッグが満ちており、『D&D』の伝承が元ネタになっているものがほかにもあるとのことです。 マップは、塔の遺跡がある屋外の上層ステージと、広大な地下ダンジョンの2つの主要エリアで構成されています。 後者はヴェクナの隠れ家で、彼が実験と新しい環境の研究に明け暮れている悲惨な場所です。
Forgotten RuinsにはPassagesと呼ばれるユニークなマップシステムがあります。地上の遺跡とダンジョンの間を移動できるポータルです。 リチャード氏によると、殺人鬼と生存者のチェイスに「パックマン効果」を加えるもので、プレイヤーはマップの端で姿を消すと、もう一方から再び現れるとのことです。 Passagesによって、隠れて逃げるという通常のゲームプレイの繰り返しに変化がもたらされるため、チームは、コミュニティがこのPassagesをどう活用するのかを楽しみにしています。

「生存者と殺人鬼が遭遇しやすいようにするため、タイトなままにしようと努めています」と語るのは、リードレベルデザイナーのアンドレ・ラニエル氏。 「それで、プレイヤーが視覚的に楽しめるマップになっています」
Behaviourはまた、この『D&D』チャプターを利用して、コミュニティが、壊滅したボルゴとその最初のマップである瓦礫と化した広場に対して抱いていた不満に応えることになりました。 それまで、ライティングが赤いせいでゲーム内の一部のシステムが見えにくくなってしまい、人々はこのマップでプレイするのに苦戦していました。
「領域全体のライティングをリファクタリングし、新マップと旧マップのライティングを新しくしました。これは素晴らしいことです」とリチャード氏は言います。 「見た目も美しく、視認性の問題も解決。 プレイヤーたちが、より快適にプレイしてくれることを願っています」
『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の影響
ヴェクナにインスパイアされた、Netflixの大ヒットドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の悪役に触れずに、ヴェクナに対するこの新しい注目を語ることはほぼ不可能です。 シーズン4で、Upside Downの不思議な世界から新しい敵が登場し、過去のストーリーでデモゴルゴンやマインドフレイヤーに対してそうしたように、メインキャストは彼にも『D&D』の名前をつけることにしました。今回はそれがヴェクナだったのです。
この恐ろしくなったバージョンのヴェクナは、ボード上の彼とは大きく異なるものの、似たようなレベルの恐怖と力を操り、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』史上最も悲惨な死を招いてさえいます。 このドラマはすでに『ダンジョンズ&ドラゴンズ』をポップカルチャーのスポットライトに戻すのに貢献していましたが、シーズン4もその伝統を引き継ぎ、ヴェクナを、それまで彼のことを知らなかったかもしれない何百万人もの人々に知らしめました(かくいう著者もその一人です)。
ドラマでの彼の人気は、Behaviourでも話題になりました。 しかし、チームはオリジナルの素材(『Dead by Daylight』のヴェクナのデザインは、50周年を記念した彼の新しい、現代化された見た目に基づいています)に忠実であったため、彼らの殺人鬼が自立できるかどうかは心配していませんでした。

「すぐに話し合ったことは間違いありません。 幸い、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』も本作に登場済みです」とコテ氏は言います。「ですから、そこに競争はありません。素晴らしいことです」
そうです。本作は2019年に『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のチャプターが登場しているため、ナンシー・ウィーラーとスティーブ・ハリントンは『D&D』バージョンのヴェクナと対峙できるのです。 これは、『Dead by Daylight』がシリーズと世界観のるつぼと化し、驚くべき存在になっているかを表す証拠です。
しかし、クロスオーバーはそこでは終わりません。 卓上ロールプレイングシリーズ『Critical Role』のファンであれば、ヴェクナの声優、マシュー・マーサーにお気づきのはずです。 ゲームやアニメのベテラン声優であるほか、マーサーは『Critical Role』の創設者兼ダンジョンマスターであり、過去にはキャンペーンのひとつで(アニメ化された『ヴォクス・マキナの伝説』でも)、あるバージョンのヴェクナ役を演じています。
『D&D』の今までにないヒーロー
Behaviourには、ヴェクナに立ち向かう、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の英雄側を象徴する生存者が必要でした。 『Dead by Daylight』には戦闘がないため、パラディンやウィザード、ドルイドなど、ゲーム内のほかの生存者よりも強力な者を選んでも意味がなありません。 チームはメタ路線に進み、実際の『D&D』プレイヤーを生存者にすることも考えましたが、最終的には吟遊詩人になりました。

「吟遊詩人は伝統的に戦闘中心のクラスではありませんし、『Dead by Daylight』の生存者たちは攻撃し、最終的に殺人鬼を倒したからといって、勝つわけではありません」と語るのはロー氏。「彼らが逃げ切れるのは、裏をかき、出し抜き、味方を助けるからなのです。 すべてはチームワークです。吟遊詩人はまさに、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のパーティーの中でその典型です」
ゲームのホラー設定に合っているのに加えて、コテ氏は、吟遊詩人が『D&D』の時代精神の中で大きな瞬間を迎えていると指摘します。 好評を博した映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』でクリス・パインが魅力的な吟遊詩人を演じたほか、『Critical Role』でも吟遊詩人は華やかなキャラクターとして描かれています。
「吟遊詩人は私たちの時代、新しい世代のプレイヤーたちに合っていると思います。 『ダンジョンズ&ドラゴンズ』が登場した50年ほど前は、純粋なゲームプレイシステム、ミニチュア、それからプレイヤー対ダンジョンマスターが中心でした。不可能な場所を作ったから、挑戦してみなよといった風に」とコテ氏は言います。「それとは対照的に、今はストーリーテリングが重視されています。 夢中になれるファンタジーの世界を作り出しています。 吟遊詩人は、そういった観点から魅力的だと思います」

吟遊詩人には、『D&D』でお馴染みのもうひとつのシステムが備わっています。ダイスロールです。 吟遊詩人のパーク、Bardic Inspirationで見ることができ、20面ダイスを振った結果に応じて、音楽演奏でほかの生存者にスキルチェックのバフをもたらします。 ダイスは、特別な宝箱を開ける際にも組み込まれています。 ゲームでヴェクナが殺人鬼になるたび、この宝箱がマップ上に7個ランダムで出現し、生存者はそれを開けるために20面ダイスを振らなくてはなりません。
結果が2か3なら、茶色のメディキットや懐中電灯といった基本的なアイテムがもらえます。 4から19までは、BracersかBootsが手に入り、この2つの新しい魔法アイテムは、キャラクターに自動的に装備されます。 Bracersがあると、殺人鬼がFlyの呪文を使った際に彼のオーラを見ることができ、Bootsがあると、Flight of the Damnedの投射物のオーラを見て、かわせるようになります。
「生存者は、これらのアイテムをできるだけ早く手に入れたいところです。殺人鬼の力は、アイテムを持っているプレイヤーに対して、よりバランスが取れたものになっているためです」とヌブー氏は言います。 「ですから、アイテムを装備していないと、ヴェクナが少し強すぎると感じるかもしれませんが、それは意図的なものになります」

クリティカルな失敗(1)を出して、アイテムをもらえないこともあります(こちらもちょっとしたイベントが引き起こされますが、Behaviourはまだこのサプライズを隠しています)。 運よくクリティカルな成功(20)を出すと、2つのレアアイテムのうちどちらかが手に入ります。Eye of Vecna、またはHand of Vecnaです。 コテ氏が先ほど述べたように、これらは『D&D』の伝承に基づいたアーティファクトで、使用するには、キャラクターは暴力的な儀式を行わなくてなりません。
「『D&D』と同じように、プレイヤーはこれらのオブジェクトを見つけたら、[自分の体に]同化させなくてはなりません。 彼らは手を切り落とし、Hand of Vecnaを身につけ、半神になる必要があります。 目の場合も同じです」とヌブー氏は言います。
Eye of Vecnaは、プレイヤーがロッカーから出るたび一時的に透明にしてくれるため、逃げるための時間が長くなります。 一方、Handを持った状態でロッカーに入ると、さらに離れたロッカーにテレポートします。 どちらのアイテムも追われているときに大いに役立ちますが、大きな代償が伴います。 発動するたび負傷する(体力を1つ失う)ため、これらのアーティファクトを使用するには体力をフルにしておかなくてはなりません。
ホラー博物館の拡大
『Dead by Daylight』は、スラッシャー映画からSF、さらには新興のアナログホラームーブメントまで、さまざまなジャンルのホラーに満ちあふれたゲームです。 そして、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』によって、拡大し続けるそのリストについにダークファンタジーが追加されることについて、「テーマやジャンルの面で、可能性の新たな領域が開かれました」とリチャード氏は述べています。
この、ありそうもないストーリーとアイデアの組み合わせを表現する際に、コテ氏が好んで使用する言葉があります。ホラー博物館です。 すべてのマップ、殺人鬼、生存者がエキサイティングな新しい翼と展示物を博物館に加えますが、それは同時に、このジャンルの可能性の祝福、再検討でもあります。 Behaviourはもともと、このような高い目標を念頭に置いてゲームを作っていたわけではありません。 しかし、コミュニティの力のおかげで、チームが想像していたよりもはるかに大きく成長しました。

『Dead by Daylight』は今年で8周年を迎えますが、これはオンラインマルチプレイヤーゲームとしては驚くべき偉業であり、そのようなサポートのおかげで、チームはさらに大きな飛躍を遂げられるようになりました。 しかし、そのすべてを通して、そもそもこのゲームがこれほどの人気を博した要因に、彼らは忠実であり続けようと努めてきました。
「私たちが成長する過程で決めたルールのひとつは、『Dead by Daylight』のオリジナルのコンテンツを[ゲームの]非常に重要な部分として維持しなくてはならないということでした」とコテ氏。「それ以外のものはすべて、私たちの世界に招き入れる必要があります。 私たちは、ほかのすべてに対応することはできません。 これは私たちが作り上げている世界であり、私たちのキャラクターであることを明確にする必要があるんです」
たとえホラージャンルとは通常関係のないキャラクターや財産であっても、スタジオが投げかけるものであれば何にでも、柔軟に適応できる世界なのです。 では、あなたたちのホラーの定義はいったい何なのかと尋ねると、リチャード氏はただ笑うだけでした。 これはチーム内でも意見の分かれるテーマのひとつであり、それぞれが自分なりの解釈を持っていると彼は言います。

「[意外性と]驚きこそが、ホラーがホラーであり続ける理由の核心だと思います」とコテ氏は説明します。「問題はそこです。何かを理解できないとき、何が起こるかわからないとき。これが、ストレスを感じる理由であり、緊張する理由ですよね?」
「これを定義するなんて、とても奇妙なことなんです」とリチャード氏が付け加えます。 「私たちは皆、魂でそれを感じているはずです。 私たちは、ホラーになる瞬間を知っているのです」