
the iii initiative:人気インディーゲームを支える人々が贈る、ゲームのショーケース

来月、独立系デベロッパーたちが力を合わせ、ある共通の問題を解決しようとしています。 参加するチームは既に、『Dead Cells』、『Darkest Dungeon』、『Risk of Rain 2』、『Slay the Spire』、『Vampire Survivors』、『V Rising』といったゲームで成功を収めています。 これらのスタジオはAAAではありません。 iii、つまりインディースタジオです。そして、力を合わせれば強力になれると考えています。
彼らは来たるゲームのショーケースを、the iii(triple-i) initiativeと呼んでいます。 4月11日(日本時間)に初開催となる本イベントでは、30を超えるスタジオが集結し、新作ゲームが発表されるほか、ファン待望の作品や定評のあるインディーゲームの名作にスポットライトが当てられ大々的に宣伝されます。 iiiは、Evil Empire、Red Hook、Mega Crit Games、poncle、Stunlock Studios、Thunder Lotus、Re-Logic、Ghost Ship Games、Extremely OK Games、Heart Machineといった強力な独立系スタジオの支援を受けており、ゲームの発表と公開がおよそ1時間の配信に詰め込まれる予定です。
このショーは、4月11日午前2時(日本時間)にYouTube、Twitch、bilibili、IGN、Steamでご視聴いただけます。
「トリプルアイ」と発音(そう書かれることもあります)されるこの興味深い新たな「謎の取り組み」を支える人々に、このアイデアはどこから誕生し、どのように一体となり、何を達成したいのかを伺いました。 インタビューのあいだ、誰もがthe iii initiativeについて話し続けていましたが、私がずっと考えていたのはiPadのことでした。
2010年にこの噂の絶えないデバイスが発表される前から、Appleの偉大なセールスマンであるスティーブ・ジョブズは、確立されたコンピューターの世界に、どのようにこのデバイスがフィットするのか語っていました。 一方では、どこでも本格的なコンピューター体験を楽しめる、ノートパソコンがありました。 その対極に、限定的な体験であるもののパワフルな、ポケットに収まるスマートフォンがありました。 その中間に3番目のカテゴリーが登場する余地などあったのでしょうか?
あるとしたら、そのデバイスは今あるツールよりも「本当に重要な特定のタスクを行ううえで、はるかに優れていなくてはならないだろう」とジョブズは言いました。
こうして、スマートフォンに対抗するデバイスとしてでも、ノートパソコンに取って代わるデバイスとしてでもなく、その両者の間に適切に位置するデバイスとしてiPadは誕生したのです。 どちらかを選ぶ必要などありませんでした。 その時に最も理にかなったデバイスを選ぶだけでよかったのです。
Evil Empireのベンジャミン・ローラン氏とベレンジャー・デュプレ氏、そしてThunder Lotusのロドリゲ・デュペロン氏が、the iii initiativeについて笑顔を交えながら熱く語ってくれました。彼らは、ジョブズの最良のシナリオを効果的に描き出していました。 彼らはゲーム業界のiPadです。AAAスタジオほど大きくはありませんが、ものすごく独立しているというほど小さくはありません。
しかし、iiiについて言えることがあります。世界は彼らのために用意されているわけではありません。 世界は、ノートパソコンやスマートフォンに用意された場所です。
彼らはこれを変えようとしています。
だから、助け合うためにチームを組むのです。
バッドタイミング
Evil Empireにとってタイミングが合わなかったことが、すべての始まりです。
フランスのボルドーを拠点とする本スタジオは、『Dead Cells』のオリジナルデベロッパーであるMotion Twinから派生して2019年に設立されました。 同スタジオは、無料と有料のダウンロードコンテンツを組み合わせた、そのゲームのサポートと拡大に最初の数年間を費やしました。
数年前、Evil Empireは、KONAMIの『悪魔城ドラキュラ』シリーズの要素を『Dead Cells』に取り入れるという、大胆な拡張に取り組んでいました。本作は、『悪魔城ドラキュラ』シリーズからインスピレーションを得ていなければ、存在しえなかった作品です。 彼らは、『Dead Cells: Return to Castlevania』に関するニュースを世界に届けたいと考えました。
「この新作に関しては、タイミング上の理由から、発表を行えるショーケースが実質ありませんでした」と語るのは、Evil Empireのマーケティングディレクター、ベレンジャー・デュプレ氏です。
これは新しい問題ではありませんでしたが、新しい解決策につながりました。
長年にわたり、年一回のゲームの宣伝サイクルはE3を中心に組み立てられてきました。E3はゲーム業界全体の祭典かつ展示会であり、最新情報や発表、トレーラー、インタビュー、初公開が、ナイアガラの滝の水のように流れていました。 近年では、ジェフ・キーリー氏がビデオゲームの非公式のスポークスパーソンとなり、年一回のSummer Game FestとThe Game Awardsで立役者と主催者を務めています。 また、毎年8月にドイツのケルンで開催されるgamescomでも発表があります。 そしてもちろん、業界最大手のMicrosoft、任天堂、Sonyは、年間を通じて自社ゲームのショーケースを自ら開催しています。
Evil Empireのような独立系デベロッパーは、こうしたイベントの常連です。 実際、『Dead Cells: Return to Castlevania』は最終的にThe Game Awardsのプレショーで発表されることになり、その発売日はNintendo Directで発表されました。
しかし、独立系デベロッパーの立場からすれば、彼らのゲームはイベントのメインディッシュにはなりません。 たとえば、『マリオ』、『Halo』、『コール オブ デューティ』シリーズの新作発表と比べてしまうと、サイドディッシュにしかならないのです。 彼らは、パブリッシャーがそのパブリッシャーにとって最も有益な時期にイベントをスケジュールすることを知っています。これが、インディーデベロッパーのパートナーにとって最も有益な時期と必ずしも一致するわけではありません。 インディーデベロッパーたちは紹介してもらえることを喜んではいますが、自分たちがそのショーの本当の主役ではないことを分かっています。
しかし、他社のスケジュールに従う必要がなかったとしたらどうでしょう? インディーゲームがサイドディッシュである必要がなかったとしたら?
デュプレ氏と、Evil Empireの最高執行責任者であるベンジャミン・ローラン氏は、自分たちの疑問に答えるために尋ね始めました。
「この時、私たちは友達に連絡を取り始め、彼らの体験やフィードバックを得ようとしました」とローラン氏が語ります。 「『次のゲームの発表をしなくてはならないときなどに、僕たちと同じような苦労を経験したことはない? ゲームの規模や範囲に合った場所がなかなか見つからなくて苦労した経験は?』といった感じです」
その答えがthe iii initiativeの種となり、Evil Empireが先頭に立って成長させてきました。
グッドタイミング
ロドリゲ・デュペロン氏は、Thunder Lotusのマーケティングおよびパブリッシングのディレクターです。同デベロッパーでおそらくもっとも有名な作品は、魂を死後の世界に運ぶ、美しくて絵画的な『Spiritfarer』でしょう。 同社の近日登場予定のマルチプレイヤーローグライク『33 Immortals』は、ダンテの『神曲』が題材となっており、本格的な中世芸術が特徴的な作品です。
Thunder Lotusもthe iii initiativeに参加しており、デュペロン氏はその決断はシンプルかつ明白なものであったとしています。
「このような話し合いがどうやって始まったか一言で言うと、(少なくとも私たち自身の話をすると)私たちがやっていることとEvil Empireがやっていることに対して相互リスペクトがあるからだと考えています。 私自身、パブリッシングする人間として、彼らが『Dead Cells』で長年やってきたことを心から尊敬しています」とデュペロン氏は言います。
このテーマは、今回のインタビューで何度も出てきたものです。 独立系デベロッパーは、お互いを事実上の敵対者とみなす傾向にありません。 彼らはデュペロン氏が言う「相互リスペクト」を共有する傾向にあり、お互いのゲームのファンであることも多いのです。
Evil Empireのデュプレ氏とローラン氏が、デュペロン氏に問いかけました。「大小の難しい中間にいるようで、自分たちのゲームをどこで、どのように売り込めばいいか分からないことも多いのでは?」
「答えはイエスです」とデュペロン氏は答えます。 「その答えはこうなります。文字通りマーケティングとパブリッシングの責任者として、計画の多くを次のような疑問を中心に組み立ててきました。『よし、E3はいつだ? The Game Awardsはいつだ?』 こういう問いかけですね。 『どうすればそこに組み込めるだろうか?』と」
「どうすればいいのでしょう? ベンジャミンさん(ローラン氏)とデュプレさんが正しく認識していたのは、ほかに選択肢がないという事実です。 単独でやっていくか、より大きなものから少しだけ横取りできるようにと挑戦し続けるかのどちらかです」
同じ考えを持つ独立系デベロッパーから十分な賛同を得て、インディーデベロッパーによるインディーデベロッパーのための、ファンに捧げるショーケースとしてthe iii initiativeが誕生しました。 自分たちを売り出し、コミュニティをつなぐチャンスです。 AAAデベロッパーのためにあるのではありません。 iiiデベロッパーのためにあるのです。このiiiは皮肉を込めて、独立系であることを表しています。
彼らは、力を合わせれば、AAAのプレゼンテーションで見られるものと並んで存在できると信じています。 力を合わせれば、自分たちのショーケースが業界最大手と肩を並べられると考えているのです。それは、単にプレゼンテーションという観点からだけでなく、発表の質においてもです。
「独占的なことではありません」とデュペロン氏は言います。 「『人々にとってニュースになる価値があるのか?』ということです。 そして私たちはそれぞれ、ニュースになる価値があると感じていることでしょう。 しかし、これは信念などではありません。 これだけのものがひとつになれば、一流のパブリッシャーやデベロッパーのようだと言われるようになるに違いないという知識なのです」
ベストタイミング
彼らは期待を抑えつつも、興奮しています。 実際のところ、彼らが次に届けるのはゲームのショーケースであって、ゲームではありません。そして、自分たちのゲームと同じように、ショーケースがどのように受け入れられるのかも分かりません。 しかし、自分たちは価値のあるものを作っているという希望と信念こそが、デベロッパーを突き動かしているのです。
「私たちが次のNintendo Directにならないのは明らかですし、次のThe Game Awardsになることも絶対にありません。 そして、そこはまったくもって重要ではないのです」とデュプレ氏は言います。 「しかし、私は知っています。『Dead Cells』のコミュニティにThunder Lotusのコミュニティを加えることができれば、ターゲットが絞られた、興味を持った相当数のプレイヤーを期待できます。 トレーラーをほかのショーケースで上映することもありますが、確信は持てません。 トレーラーもゲームもクールだと分かっていても、視聴者は、求めているタイプのプレイヤーではないかもしれません。 少なくとも、あらゆるタイプのプレイヤーに語りかけるようにするという考えです。 先ほども言ったように、私たちはライバルではないので、基本的に同じタイプのプレイヤーを共有しているはずです」
では、何を期待できるのでしょうか? サプライズのネタバレはしたくないそうですが、彼らが求めていたものからいくつかは想像がつきます。そして、少なくともそのことについては喜んで話してくれました。
「私たちは発表の質を非常に気にしていました」と語るのはローラン氏です。 「皆さんが既に知っていることを、大々的に詰め込んだだけのトレーラーを作りたくはありませんでした。 視聴者にとってエキサイティングなものにしたかったのです。 サプライズが必要です。 ワクワクするようなニュースが必要です。 今までに見たこともないようなゲームプレイといったものが必要なのです。 そのすべてを取り入れることができたと思っています。 そう願っています!」
これが、ゲームのエコシステムの強固な(そして成長を続ける)部分の上に築かれた、中間に位置するもの、つまりゲームのiPadの売り込み方なのです。
相互リスペクトから生まれた今回のコラボレーションについて、デュペロン氏は「とてもポジティブなことです」と述べています。
「AAAタイトルの大作の津波に飲み込まれ、サイクルを支配されてしまう前に、人々の注目を集めたいのです」と続けます。 「私たちはライバルではありません。 私たちのゲームを愛してくれている人たちは、Evil Empireの発表を見てかなり興奮してくれると思います。 これは素晴らしいことです。 このようなものに参加できるのはすごいことですし、本イベントを見届けられる日が待ちきれません」