
Amanita Designの躍進と成長:『Samorost』シリーズを生み出したスタジオに聞く

2003年以来、チェコの開発チームAmanita Designは、自然と機械を美しく融合させた楽しくユニークなパズルゲームを制作してきました。 短編ゲームの第1作『Samorost』から、大ヒット作『Machinarium』や『Botanicula』、そしてもちろん壮大な『Samorost 3』まで、ゲームへの取り組み方に関係なく、Amanita Designのゲームは際立った存在であり続けています。 そこで、Amanitaの最高責任者を務めるヤクブ・ドボルスキー氏に、プロジェクトの原動力、洗練されたデザインに込められた思い、そして今後の展開について話を伺いました。
Amanitaのゲームといえば、間違いなくアートが真っ先に思い浮かびます。 ドボルスキー氏のオンライン専用短編ゲーム『Samorost』の成功により、2003年に設立された同スタジオは、常に他のアーティストとのコラボレーションに重点を置いてきました。
「私はアーティスト兼アニメーターとしてスタジオを設立し、 設立当初から、他のアーティストと協力してきました。 だからこそ、アートと音楽は、常に私たちの作品にとって重要な要素となっているのです」とドボルスキー氏は語ります。
Epic Games Storeから無料でダウンロードできる第1作『Samorost』をプレイしたことがある人なら、この言葉がどれほど真実かわかるはずです。 この素晴らしいスタートを切った時から、Amanitaのゲームを際立たせる要素はすべて揃っていました。 プレイヤーが2Dの小さな男性として探索する世界は、苔に覆われた丸太や生い茂った木の切り株、老朽化したゴミから作られた機械によって形作られています。

そのため、ゲームには終末世界のような雰囲気が漂っています。人類の行き過ぎた行為の跡は自然によって征服され、白い服を着た小さな主人公が、同じように小さな犬を連れてシュールな風景の中を歩き回るのです。 『Samorost』シリーズの裏にあるデザインの原動力は何だろうと考えるのは当然のことです。
「作品ごとに美的要素そのものが少し異なります」とドボルスキー氏。「ストーリーやゲームプレイに合う完璧なアートスタイルを見つけるには、毎回長いプロセスが必要になりますが、常に私や他のゲームデザイナーの情熱が何らかの形で反映されています。 私は、巨大な山々から微視的構造まで、あらゆるスケールの自然が大好きですし、新旧両方のテクノロジーにも目がありません。 私たちの美学は、チェコや東欧の伝統的なアニメーション映画からも大きな影響を受けています。そして、そのような素晴らしい伝統を受け継ぐ存在でありたいと願っています」
その影響には私も驚かされました。 ある程度の年齢の方なら、学校を病欠して昼間のテレビを見ていると、まるで悪夢のような1980年代のヨーロッパのアニメ放送に出くわしたという、ぼんやりとした思い出があるかもしれません。 暗く不気味で、皆さんが慣れ親しんでいるバッグス・バニーのアニメやチャック・ジョーンズの作品とはまったく異なる類のものです。 東欧育ちのドボルスキー氏は、もちろんこうしたアニメに馴染みがあります。
「そうですね、昔のアニメや人形劇映画は、今でも大きなインスピレーションの源です」とドボルスキー氏は語ります。 「深みのあるダークな芸術性、強烈で時にはかなりメランコリックな雰囲気や世界観、そして不気味で、とても繊細で、優しいユーモアのセンスが存在するんです」 興味がある方には、ドボルスキー氏のおすすめがたくさんあります。 「チェコの映画監督、カレル・ゼマン、ブジェチスラフ・ポヤル、ヤン・シュヴァンクマイエル、イジー・トルンカ、イジー・バルタ、そしてロシアの天才アニメーター、ユーリ・ノルシュテインの作品であれば、どれもおすすめです」

Amanita Designのゲームは、実験的な要素を重視する傾向があり、プレイヤーは自由にゲーム内を探索することができます。 ゲームのパズルは、典型的なポイント&クリックのパターンに従うのではなく、面白そうなものをクリックして、それがどう反応するかを見るというものです。 『Samorost』シリーズでは、植物や不思議な生き物など、目にとまったものをつつくことができるようになっており、その結果可愛い動きや意外な動き、あるいはゲームに影響を与えるような動きを見せてくれます。 ちょっと変わった遊び方が生まれることもあります。もし私と似たようなタイプであれば、ゲームを進められそうなものはわざと避けて、他の部分をすべて先にクリックしようとするに違いありません。
2021年に最新のシステムで動作するようにリマスターされ、サウンドトラックも一新されたシリーズ第1作の『Samorost』をもう一度プレイしてみると、こうした要素は当初から存在していことがよくわかります。 わずか15分ほどのゲームですが、写真やデジタルアート、アニメーションの個性的な融合、独特の世界観、実験的なプレイスタイルなど、Amanitaならではの要素がすべて盛り込まれています。 昆虫をクリックすると、反応してあちこち動き回ります。それは単に楽しい要素である場合もあれば、未知のパズルを解くきっかけになる場合もあります。 キツツキが現れてミミズを食い散らかすと、不気味な人面リスがレコード盤で音楽を楽しめるようになり、人間の目をしたフクロウが踊り出すかもしれません。 もちろん、これでプレイヤーが枝から下りることも可能になります。
この初期の作品は現在のAmanitaと比較すると、やはり粗削りな印象です。 2003年の成功で、Amanitaはその知名度を確立したものの、必ずしも金銭的な成功につながったわけではありませんでした。そのため、スタジオはドボルスキー氏が「当社初の部分的収益化ゲーム」と称する『Samorost 2』の開発をすぐに始めました。 この作品はさらに人気を博し、その時ドボルスキー氏は「自分たちは本物のインディーズスタジオ、そしてパブリッシャーになった」と確信することができました。
わずか2年後にリリースされた2作目の『Samorost』は、前作より飛躍的に進化しています。 プレイ時間は1時間ほどで、まとまりのある、より完成度の高いゲームに仕上がっています。 ゲームはエイリアンに飼い犬をさらわれた主人公が愛犬を救出するため、ソーセージの缶詰の形をした宇宙船に飛び乗るところから始まります。 この続編では、従来のパズルゲームやポイント&クリック・アドベンチャーのような要素を使わず、推測を頼りにクリックしたり、分析的に探索したりしながら、この奇妙な異世界で何ができるかを探っていきます。

『Samorost 2』は2020年にリマスターされ、かつては短いフラッシュゲームだった作品が、廃止されたエンジンを使わずにフルスクリーンでプレイできるようになりました。 第1作とは対照的に、トマス・ドヴォルザーク氏によるゲームの素晴らしいサウンドトラックは常に存在していました。 その素晴らしさは今も変わりません。
ドヴォルザーク氏はFloexという名義で音楽を手がけており、ここ数年、Amanita Designの一連の作品において中心的な役割を担っています。 このチェコの作曲家が手がけるエレクトロニカは、伝統的な楽器(特にクラリネット)と録音された独特な音、そしてさまざまな人間の声をミックスし、ゲームが持つコラージュ風の描写にマッチした多彩な雰囲気を醸し出しています。 現在『Samorost 1』と呼ばれている作品にも後付けされたドヴォルザーク氏が提供する音楽は、Amanitaの数多くの作品に欠かせない存在であり、特に『Botanicula』や『Samorost 3』ではそれが顕著にあらわれています。
ゲームそのものは比較的短時間で終わるにもかかわらず、Amanitaの作品は細部にまでこだわっているため、開発期間が非常に長くなることがあります。 Amanitaが手がける典型的な冒険はクリアするまでに3~6時間程度を要しますが、制作には何年もかかります。 ドボルスキー氏はAmanitaのチームが小規模であること、そしてアニメーションを多用したゲームであることを主な理由として挙げています。 その結果、1つの作品を完成させるのに何年もかかってしまうのです。 『Creaks』はリリースまでに8年を費やしましたが、『Phonopolis』は8年の歳月を経た現在も開発中であるため、すでにその記録を塗り替えています。
次のゲームとして予定されている『Phonopolis』はアニメーターとアーティストのペトル・フィリポヴィッチ氏、エヴァ・マルコワ氏、オトー・ドスタル氏が率いる新しいチームの作品です。 彼らはスタジオが持つ独特のスタイルを継承しようと懸命に努力しています。 「全体のアートスタイルと設定は、大戦間期のアバンギャルドな芸術的流行にインスパイアされたものです」とドボルスキー氏。
これには構成主義、未来主義、絶対主義などが含まれます。 「ゲームが持つディストピア的な雰囲気にぴったりです。 紙で作られた模型のような見た目で、アニメーションも昔の東欧の人形劇映画を意識しています」とドボルスキー氏は説明します。 とはいえ、開発が今後も続くとすれば、同スタジオで制作中となるゲームはこれだけではなくなるはずです。

愉快なアニメ風アドベンチャー『Chuchel』の続編の可能性について、ドボルスキー氏は「今後の予定や計画はありません」と話します。 「これに関しては常に、新しいプロジェクトを開始しようと決断する各ゲームデザイナーの気持ち次第ですね。 『Chuchel』について言えば、プロジェクトリーダーのハラ・プラッキーが最近まで続編の制作を始めようとしていました。 しかし、彼の中で様々な葛藤があり、『Chuchel』と同じようにクレイジーで愉快な、まったく新しい作品を作ることにしたんです。 来年には発表したいと考えています」
プラッキー氏の中で起きた葛藤は、驚くほど心を不安にさせる同スタジオの最新作『Happy Game』を説明するのに役立つかもしれません。 この最新作は、パンデミックによるロックダウンが最も深刻な最中に登場し、ゲームという形をとった狂気の叫びのように感じられます。 そのため、これまでAmanitaから登場した家族向け作品とは一線を画しています。
「これはプラッキーの思い入れが強いプロジェクトです」とドボルスキー氏は説明します。 「彼の頭の中で何が起こっているのか、誰にも分かりません。 でも、彼は間違いなく元気で、幸せで、子どもたちと楽しく過ごしていますよ!人生のすべてがうまくいっているようです! ただ自由に好きなものを作っていただけで、それには時間がかかってしまったんです」
この異例ともいえる個人的な作品が、『Samorost』の開発者からこの手の作品を期待していなかったプレイヤーにどのように映るか不安だったと、ドボルスキー氏は説明します。 「典型的なプレイヤーがどのような反応を示すのか興味がありました。中にはがっかりした人もいたようですが、このゲームは、決して多くはないものの、非常に好意的なファンを見つけることができました。誰の機嫌も損ねないような主流の作品を作るのではなく、少なくとも誰かをワクワクさせ、インスパイアするような特別な何かを作ることが、常に私たちの目指していることなのです」
この理念は、Amanitaのすべてのゲームに息づいていますが、おそらく代表作である『Samorost』シリーズに勝るものはありません。 なぜなら、同スタジオが1作のみならず2作もの続編を送り出し、シリーズ化した唯一の作品だからです。 そして2016年に『Samorost 3』がリリースされました。

この時点で同スタジオは、昆虫をモチーフにした『Botanicula』とロボットのラブストーリー『Machinarium』で画期的な成功を収めていました。 いずれも本格的な長編ゲームであり、それまでの作品と比べると、物語の構成により大きな焦点が当てられています。 これは『Samorost 3』のデザインにも直接影響を与え、自然とテクノロジーの融合という特徴を、複数のチャプターからなる5時間のアドベンチャー作品として実現させています。 この目標を達成するために、その核となる理念が放棄されたわけではありません。 むしろ、このゲームはまさにその核心を体現した作品です。
『Samorost 3』では、Gnomeと呼ばれる主人公が魔法のフルートを見つけます。 このフルートは耳トランペットとしても楽器としても機能するため、彼は身近な世界の音に耳を傾け、それを再現することができます。 自然に耳を傾け、その声をコミュニケーションに利用するというこのアイデアは、あからさまなコンセプトかもしれませんが、決して説教じみてはいません。ゲーム内のパズルを解くためのシンプルな仕組みに過ぎないのです。 その仕上がりは、実に素晴らしいものになっています。 『Samorost 3』は、美しい音楽を奏でる愉快なキノコや昆虫、不思議な生き物たちが織り成す壮大な世界を楽しむゲームです。 文字通り楽器を奏でているだけでも、自分たちの世界でただ踊っているだけでも、存分に楽しむことができます。
さらに、最新のHDディスプレイ向けにデザインされた『Samorost』の視覚的な改良も見逃せません。 苔むした風景や緑豊かな景色の贅沢な描写は特に印象的です。 序盤には、棒人間の絵を順番に並べるパズルがあり、正しく配置すると棒人間に命が吹き込まれ、状況に応じて動き出します。 これだけで1つのゲームになるはずです。 (あれ、それって『Pilgrims』のことでは!)
期待したほど注目されなかった特定の作品があるかを尋ねると、ドボルスキー氏にはスタジオのすべてのゲームが受け入れられたことに満足していると話しながらも、 『Pilgrims』がもっと人気を得ていればよかったと述べています。 「(『Pilgrims』は)とても小規模で短いゲームであり、 私の意見としては、うまくいった実験的な作品なので気に入ってます」

『Pilgrims』による経済的成功が限定的であったのは、モバイル限定で特定のサブスクリプションサービスでのみリリースされのが原因だったことをほのめかすドボルスキー氏は、近々それを改善したいと考えています。 (「1、2年後の独占配信終了後は、誰でも簡単にスマートフォンやタブレットでプレイできるように、App StoreやGoogle Playでリリースする予定です。」) PCでは今すぐプレイすることができますので、ぜひプレイしてみてください。 たった1時間の楽しいパズルゲームですが、単に「ゲームを攻略したい」という気持ちよりも、遊び心が求められるユニークな取り組みがなされています。 おもちゃのように遊んで、できるだけ多くの驚きを見つけることが重要なのです。
Amanitaの作品は、決して大衆受けを狙ったゲームには感じません。 むしろ、その世界に入り込もうとする人なら誰でも楽しめる、細部までこだわりと驚きの宝庫に満ちた、楽しい変わり種です。 これらのゲームでは「勝つ」という概念が無意味に感じられ、ただ存在することが真の目的となっています。 ゲームのプレイ時間が長ければ長いほど素晴らしく、じっくりと味わうことに意味があります。 『Samorost 3』のようなゲームを楽しむ最高の遊び方は椅子に座ってマウスから手を離し、ただ自分の目ですべてを味わうことなのです。