
シャーロック・ホームズのゲーム版が本より楽しい理由

『Sherlock Holmes Chapter One』の核心にあるのは失敗です。
シャーロック・ホームズが事件解決のために駆使する方法論の本質は、アーサー・コナン・ドイルに「演繹的推論」と呼ばれていましたが、実際には「仮設的推論」に近いものです。そして、これは、論理の大きな飛躍によって、悲惨な失敗をもたらす可能性を秘めているのです。ドイルの作品では、ホームズが使う「仮設的推論」による誤った論理の飛躍は深く追求されていませんが、Frogwaresの探偵ゲームでは、それがゲームの基盤となっています。
「シャーロック・ホームズが間違いを犯すということは、冒涜的であると同時に心が躍る試みでもあります」と、ゲームの開発元、Frogwaresで機能デザイナーチームのリーダーを務めるYaroslav Martyniuk氏は述べています。「実際に、これはゲームの開発当初に想定したいた設定の一つでした。私たちが生み出したのは、若き日のホームズに関する物語です。自分が何者であり、自分の人生がどのように進んで行くかを見出し始めた頃の若きホームズが描かれています。彼には少し傲慢なところがあり、実際の能力に比べて、自信過剰にもなっています。やがて、世界最高の探偵へと成長していくシャーロックなのです。ですから、ホームズが間違っていたとしても、それは正しいことなのです。」
『Sherlock Holmes Chapter One』には、数えきれない失敗が潜んでいます。捜査の過程で単純に手掛かりを見逃したり、手掛かりをつなぎ合わせてみたものの、間違った結論を導いたりしてしまいます。さらに、人物の行動についても間違った結論に飛びついてしまう可能性もあります。
とは言え、失敗したからといってゲームが終わるわけではなく、変化するだけです。
「そのまま進んで、自分の選択と結果を受け入れるだけなのです。」とMartyniuk氏は説明します。
間違ったことを推測できるようにしながら、謎を解くために必要となる全ての手掛かりを身近に配置するゲームを作ることは、生易しいことではありません。
「まさに、綱渡りの状態でした。」とMartyniuk氏は話します。「ゲームを単純にしすぎると、事件を『解決した』という満足感が損なわれてしまいます。逆に、難解にしすぎると、プレイヤーに不満や苛立ちが募ります。私たちのゲームにある2つの原則のうちの1つは、ミステリーの要素に彩られた、しっかりとした物語を作ることであり、プレイヤーに優しく手を差し伸べるようなゲームプレイのメカニズムではありません。事件の背景にある物語や筋書き、表示されるテキストの一部には、ある程度の不確実性や曖昧さが含まれています。私たちがプレイヤーの皆さんに望んでいるのは、証拠について自分で考えて判断し、証拠を分析する際には、心の中で疑念を抱くことです。」
Frogwaresは、ホームズの性格や才能をゲームで紹介することで、彼の事件解決能力や推理力、観察力を捜査のメカニズムに反映させています。
「このようなメカニズムは、このゲームの核となっています。プレイヤーは証拠を集めて解釈し、『点と点を結んで全体像を作り上げ』、独自の結論を推理し、捜査の次のステップを決めることになります。」とMartyniuk氏は説明します。「こうすることで物語がゲームプレイのメカニズムにぴったりとマッチするのです。物語とゲームプレイの間のバランスを完璧に保つことができる最適な度合いを見つけるため、テストにテストを重ね、修正し、フィードバックを収集して、再びテストを行わなければなりませんでした。」

『Sherlock Holmes Chapter One』では、ホームズの有名な記憶術「マインドパレス」も道具として使用することができます。これは古代ローマで考案された「場所の方法」あるいは「記憶術の手段」で、記憶を物理的または想像上の場所と結びつける方法です。このゲームにおける「マインドパレス」の目的は、過去の出来事を解釈し、それに対する態度を決めることができる、視覚的な道具をプレイヤーに与えることにあります。「マインドパレス」を駆使することで、プレイヤーは誰が犯人で、どうすべきかを判断することができます。このコンセプトには、間違いを犯す余地も残されています。
「いくつかの推理では異なる解釈が可能となるため、異なる結論が導かれることもあります。」とMartyniuk氏は説明します。
『Sherlock Holmes Chapter One』では、手がかりの収集、秘密の場所の探索、容疑者との会話、変装、場合によっては格闘など、「マインドパレス」の他にも、探偵としてのメカニズムが用意されています。
「ここは注意していただきたい点ですが、プレイヤーの皆さんはスーパーヒーローではなく、もちろん超人的な体力を兼ね備えてもいません」とMartyniuk氏は語っています。「攻撃力は高いものの守りは弱く、戦い方はシャーロックのそれとよく似ています。また、これは死体の山を作って去る(できないこともないですが、そしたら幼馴染のジョンとの絆に悪影響を及ぼすかもしれません)ようなものでもありません。どちらかというと、敵の敵意を和らげ、周囲の環境を自分の味方につけるような感覚です。皆さんは戦いながら、演繹的な推論を繰り広げていきます。」

最新のシャーロックのゲームで使えるツールは、後に広い人気を博することになるシャーロック・ホームズのゲームを製作および開発していく過程で、Frogwaresが20年以上もの歳月をかけて開発してきたものです。
「初期のシャーロック・ホームズのゲームプレイは、マウス・アンド・クリック方式の、古典的な操作を基軸としていました。」とMartyniuk氏は説明しています。「「謎解き」の要素は、当時の技術に適応させる必要がありました。しかし、技術が発展してPCやコンソールが高性能になるにつれ、私たちのゲームも精巧さを増していきました。3D技術が登場すると、3D要素を取り入れたパズルを開発できるようになりました。オブジェクトを持って向きを変えることでさらなる手掛かりを発見したり、犯行現場を歩き回ってもっと様々な視点から調査したり、オープンワールドの導入により、捜査中のロケーションをさらに拡大できるようになりました。現場は1つの部屋に限定されず、ロケーションの外の人々が目撃者となる可能性もあります。さらに、足跡を辿って容疑者の逃走先を炙り出すこともできます。広大なロケーションを自由に歩き回ることが可能になりました。」

インタラクティブな殺人ミステリーのゲームを成功させるには、自由であることがカギとなります。
良いミステリー小説を読んだり、ミステリーがテーマの素晴らしいドラマや映画作品を観賞する時には、皆さんは答えが明らかになる前に謎を解こうとすると思います。ですが、これらはどれも受動的な体験です。稀な例外を除き、読者や視聴者が判断するための全ての手掛かりが提示されるのです。
ビデオゲームは、ミステリーを用意できるだけではなく、プレイヤーの皆さんが手掛かりを自ら探してそれらの重要性を推測する機会も作ることができるのです。インタラクティブ・フィクションは、受動的な傍観者を能動的な参加者へと変換することができ、『Sherlock Holmes Chapter One』のようなミステリーゲームで素晴らしい効力を発揮します。
「(多くの場合)皆さんが主人公なのです。」とMartyniuk氏は言っています。「そしてプレイヤーの皆さんは、自身がスパイになったかのような気分になり、個人的な達成感を得ることができます。そしてそれがこのゲームのジャンルの満足感が高い理由なのです。そして自分が賢く、そいsて刑事になったような気分を味わえるのです。このゲームで、あなたの直感を呼び覚ましてください。さらに道徳的な中間領域と推理の正否をを加えることで、事件を解決した方法とその選択肢を選んだ理由をみんなで話し合える場を設けることができます。」
「ちょっとした、特別な気分に浸ることができるでしょう。1つの事件および1つの捜査を、様々な人々の視点から体験できること。さらに彼らの一連の思考、道徳的な選択や決断をめにすることができること。これらは言葉では表せませんが、本当に素晴らしいことですよね。ゲームを通し、人々と親密になっていくような感覚を味わえるでしょう。」
『Sherlock Holmes Chapter One』は、2021年11月16日にEpic Games Storeに登場します。