
リマスター版が名作を存続させる

今年は刷新されたグラフィックと向上したパフォーマンスを誇る昔懐かしいゲームがPCに戻ってくるため、かつてのお気に入りを再び取り上げる忙しい年になりそうです。
2024年注目のリリースとしては、『Star Wars: Dark Forces』、『トゥームレイダーI~III』、『幻想水滸伝I&II』、『ペルソナ3 リロード』、『ブラザーズ:2人の息子の物語』、『アローン・イン・ザ・ダーク』『Braid』のリマスター版やリメイク版が予定されています。
これは2023年の『Dead Space』、『The Outer Worlds: Spacer's Choice Edition』、『The Last of Us Part I』、『Quake II: Enhanced Edition』、『System Shock』、『Samorost』の三作品、『フロントミッション ザ・ファースト:リメイク』などのリメイク版やリマスター版のオンパレードに続くものです。
もちろん、リマスターが行われるのはPCゲームだけではありません。 1月には、『The Last of Us Part II Remastered』がPS5でリリースされ、新作と同じくらいの盛り上がりと熱狂で迎えられました。 昨年は、『メトロイドプライム リマスタード』がNintendo Switchでリリースされ、発売後数週間で100万本以上を売り上げました。 そして、『ファイナルファンタジー VII リメイク』は実のところ完全三部作の始まりで、二作目(『ファイナルファンタジーVII リバース』)はPlayStation 5で2月にリリース予定です。
最新のビジュアルで蘇った昔のゲームを、現代のプラットフォームでリリースしてほしいという声が大きいことは明らかです。 しかし、ゲーム業界においてリメイク版やリマスター版にこれほど人気があるのはなぜでしょうか?また、リメイク版やリマスター版の成功の秘訣は何でしょうか?

さまざまな芸術の中で、過去を再訪するのはゲームだけではありません。しかし、昔の作品をリメイクするのにこれほどのエネルギーを捧げる芸術は他にありません。 ゲーマーは昔のゲームを発見したり、再びプレイしたりすることが大好きですが、現代的に作り替えられたグラフィックでそうしたいと考えることが多いのです。 さまざまな技術的または法的問題により、原作の多くは見つけてプレイするのが困難です。 リマスター版はたいていの場合、昔のゲームをプレイするのに最も手頃な方法と言えます。
たとえば、古い映画を4K形式で再リリースする技術処理は素晴らしいですが、昔のゲームをリメイクするほど厄介だったり、費用が高くついたりするわけではありません。 映画をデジタル復刻する際の芸術的目標は、原作に限りなく近く見せるように再現することです。 復刻された映画が大好きな人々は、何度も見てきたであろう原作が忠実に再現されていることを要求します。 映画がアップデートまだは現代化されると、たいていの場合、反応は両極端です。たとえば、オリジナル『スター・ウォーズ』の1997年の再リリースでは、ビジュアル面の修正や特殊効果がアップデートされていますが、その一部をファンはネガティブにとらえました。
その一方、ゲーマーはリメイク版に大幅なグラフィックアップデートやビジュアル面の変更、さらにはユーザーインターフェイスのアップグレードや、過去には重要とみなされなかったアクセシビリティオプションがあることを期待しています。 時にデベロッパーは、完全に新しいコンテンツを含めることさえあります。
これは急速に起こっている技術戦争に原因の一部があります。 今日のPCゲームは、10年前にリリースされたゲームと比べても、見た目もパフォーマンスも大幅に向上しています。 ゲームデザインも常に向上、進化しており、ゲームの映像やプレイヤーがプレイする方法が変化してきています。 これは、他の芸術と比べて、ゲームは比較的すぐに時代遅れに見えたり、感じられたりし始めるということです。

このようにPCゲームでの技術的変化が急速なため、Bethesdaは『The Elder Scrolls V: Skyrim』原作のリリースが成功を収めた2011年からわずか5年後に『The Elder Scrolls V: Skyrim Special Edition』を2016年にリリースしています。 このリマスター版ではビジュアル忠実度が改善されたほか、安定性の問題も解決しており、アドオン一式も付いていました。
Bethesdaがリマスター版をリリースしたのはこれが初めてでした。 当時、ゲームのデザイナーを務めていたトッド・ハワード氏はTime誌に「非常に遠くまで描くことが可能になり、葉やその他すべてを以前より大幅に画面上に表示できるようになりました。 本当に素晴らしいビジュアルですよ」と話しています。 リマスター版のリリーストレーラーが、オリジナルのグラフィックとアップデートされたグラフィックの比較で始まるのも偶然ではありません。
リマスター版の開発を行ったデベロッパーは、リマスター版はゲームのバラエティの中で必要不可欠な要素であり、過去とつながる方法であると語っています。
「昔の人気ゲームは、人々を惹きつける何らかの要素があったからこそ人気ゲームだったのです」とNightdive Studiosの事業開発ディレクターであるラリー・クパーマン氏は話します。 Nightdive Studiosはリマスター版やリメイク版の開発に特化していて、作品としては2023年の『Quake II』や『System Shock』が挙げられます。 「すべてリメイクしているわけではありません。そもそも心に響いた作品しかリメイクしません。 もともと当時人気が出た要因となった要素、それを温存しようとしているのです」
「『System Shock』はその良い例です」クパーマン氏は続けます。 「数々の理由で、原作の売上はそれほど上がりませんでした。 しかしその後、皆さんの心に響いたのです。 ゲームを気に入った人はこのゲームを大好きになり、他の人々に話しました。 そのため、(去年リリースされた)リメイク版は多くのプレイヤーが楽しんでくれたのです」
リマスター版のゲームは、ほかのメディアと比較するよりも、休暇先と比較する方がいいとクパーマン氏は言います。 「ゲームは体験です。 ゲームはプレイヤーが住む場所です。 人はとても好きな場所に行ったら、おそらくいつかそこに戻る計画を立てることでしょう。 他の人にどれほど楽しかったかを話します。 その話を聞いた人がそこに行き、楽しいひと時を過ごすと、共有することに喜びを覚えます。 そのような感覚を再びつかもうとしているのです」

ステフェン・ハルビグ氏はCrytekの2021年の作品『Crysis Remastered Trilogy』のプロジェクトリードでした。 基本的なゲームプレイという天では、一人称視点シューターは数十年であまり変化していません。 しかし、スピードやグラフィックの忠実度という点では、非常に速い進化を遂げています。
「まず、プロジェクトの範囲を理解することが必要です」ハルビグ氏は話します。 「リマスター版を作るのか?それともリメイク版を作るのか? リマスター版は解像度やテクスチャの向上、新技術の導入でゲームのビジュアル面を強化します。 その一方で、リメイク版はゲームワールドに対する大幅な変更を伴う場合があります。つまり、リソースもより多く必要になるほか、発生する費用もより高いです」
「『Crysis Trilogy』(リマスター版)では、まずビジュアルを現代の水準に合わせてアップグレードすることに注力しました。次に戦略的な最適化を優先し、パフォーマンスの向上と互換性の強化を目指しました。さらに、ゲームの核となる要素を維持しつつ、QoLの改善を導入することで、全体的なプレイヤー体験を向上させました」
クリス・バシャール氏はAspyrのプロダクトディレクターです。Aspyrは2月14日(米国時間)リリースとなっている最初の『トゥームレイダー』三作品のリメイクを開発しています。「エンジニアリング、ゲームプレイ、アートを3つの注力する要素と特定しました。
「いずれのゲームもユニークですが、いくつかの指針に沿って開発していきました」バシャール氏は続けます。 エンジニアリングでは、原作の感覚を失うことなく、できる限り最高のパフォーマンスを出すことであり、 ゲームプレイについては、魅力的な部分を残しつつ、悩みの種を解決することです。 アートに関しては、ユーザーの記憶を再現しつつ、限界まで推し進めることです」
ヤクブ・ドボルスキー氏はAmanita Designの創立者です。Amanita Designは最近、大人気パズルゲーム『Samorost』の三部作のリマスター版をリリースしたところです。 「『Samorost』の最初の二作品については、リマスター版にする意味はありました。というのも、古いFlashゲームで、Flashは実質的に廃れていっていましたからね」ドヴォルスキー氏はこう話します。 「だから最大の理由はゲームをプレイ可能な状態に維持し、モバイルプラットフォームに移植することでした。 もう一つの目標は明らかなデザインエラーを修正し、操作やプレイ性を改善して、もどかしいと思われる部分を取り除くことでした。 さらにオーディオやビジュアル面も今日の水準に合うようにアップグレードしています」

昔のゲームを新しいプレイヤーのために刷新することは、新しいゲームをゼロから開発するほどコストはかかりませんが、それでも開発には大きな困難が伴います。
Saber InteractiveのCOOであるティム・ウィリッツ氏は『Ghostbusters: The Video Game Remastered』(2019年)の開発に携わりました。 「ゲームの元々のソースコードやアセットは失われているか、現在のシステムと互換性がありません」氏はこう説明します。 「そのため、必要とされる開発作業の程度は、ゲームによって大きく異なってきます」
時に、最大の問題がはっきりと限定されている場合があります。「『Samorost 1』での課題の一つは音楽でした」ドボルスキーが説明します。 「2003年のオリジナル版に音楽が入っていましたが、それは既に存在する楽曲を流用したものでした。 どれもオリジナルの音楽でなかったのです。 そのため、デスクトップとモバイルアプリストアでゲームを正式にリリースするには、オリジナルの感じを維持するような新しい音楽が必要でした。そこで確か、『Samorost 2』の開発から加わったFloexが素晴らしい働きをしてくれました」
「温存する部分と現代化する部分のバランスが常に繊細なんです」Aspyrのバシャール氏は話します。 「通常、温存を優先するのですが、これが実現可能な解決策でない場合があります。 これが克服すべき最も困難な課題です」
バシャール氏は続けます。「たとえば、操作方法を調整することなど単純なアップデートだと思われるでしょう。しかし、操作方法はリリースまでいじるんですよ。 特に何十年も前のゲームをアップデートする際には、コントローラーの形状、圧力感度、入力ラグ補正、その他の小さな要素が操作感を大きく変えるんです」
「原作の芸術的ビジョンを温存することと新技術の統合のバランスを取ることが、難しい場合があります」ハルビグ氏は話します。 「昔のゲームを現代のハードウェアに適応させようとすれば、常に技術的な制限や互換性の問題が発生します」
「往々にしてプレイヤーは原作を懐かしく感じ、強い愛着を持っています」氏はさらに話します。 「リマスター版への期待は高い可能性があります。 そのため、ゲームの改善と懐古的価値の温存のバランスを取ることが不可欠です」

数年間ゲームが好きでプレイしてきた人ならば、その文化全般において、懐古の念がいかに重要であるかをご存じのはずです。 通常、ティーンエイジャー時代に聞いていたポピュラー音楽を楽しむのと同様に、プレイヤーは若い頃の体験に戻ることが大好きなのです。
「Aspyrはこれらの昔のゲームを単なるゲーム以上のものと見ています」バシャール氏は話します。「タイムマシンなんです。 人生の完全に異なる時間軸に人を転送し、最後に誰とどこでプレイしたのか以上の記憶を思い起こさせます。 このような思い出を蘇らせ、大切な瞬間を友人や家族と共有できるのは素晴らしいことだと思います。 Aspyrは他のメディアには、リマスター版のゲームが提供するのと同様の共有可能な要素が存在しないと考えています」
原作の『Crysis』は2007年にリリースされました。 ハルビグ氏は、今世紀の最初の10年間は、今日のゲームを形成する上で特に影響力のある役割を果たしたと考えています。 『ファークライ』や『レッド・デッド・リデンプション』のシリーズなどの台頭を挙げています。 「ここ10年間で3Dのクオリティに大きな変化がありました」ハルビグ氏は話します。 「ゲーム環境は大幅に変化しました。 しかし、大半のプレイヤーはまだ若く、30歳未満です」
「ですが、多くのプレイヤーはまだゲームをプレイし続けています」ハルビグ氏は続けます。 「それらのゲームをプレイして過ごした昔の楽しい時間を思い出し、新しくリマスターされたゲームを通してその記憶を追体験したいのです。 もちろん、彼らがポジティブな感情や印象を共有し、これが原作の状態のゲームに出会う機会がなかったかもしれない新しい、若いプレイヤーの熱狂に繋がっています」

リマスター版は、優れたゲームが人々の目に留まり続けるようにする役割を担っており、プレイヤーは新作の登場を待ち望みながら原作を楽しむことができます。 Gearboxは待望の『Homeworld 3』を今年の3月にリリース予定です。しかし、2015年にリリースされた『Homeworld Remastered Collection』は、オリジナルのリアルタイムストラテジーの名作を未体験の世代に紹介する役割を果たし、高い評価を得ました。
Gearboxは「情熱的なファンコミュニティの重大な影響と協力」を得た「オリジナル開発チームの重要メンバー」を雇いました。 IGNの素晴らしいレビューでは、1999年の原作について「以前のゲームは体験がしづらかった」と言及され、「刷新されたモデル、テクスチャ、エフェクト」におけるデベロッパーの細部へのこだわりが称賛されていました。
『トゥームレイダー』の原作は1996年から1998年の間にリリースされており、これは今日のゲーマーの多くが生まれる何年も昔です。 しかし、このシリーズは映画やララ・クロフトの物語の現代的な解釈を通して存続しています。
バシャール氏は話します「このシリーズのレガシーには深い尊敬の念を抱いています。『トゥームレイダー』を『トゥームレイダー』たらしめる要素を温存し、より多くの、そして新しいファンにもたらすことには非常に重い責任が伴います。 しかしこれにより、エミュレーションやレトロハードウェアに頼るか、失われてしまったであろうジャンル、メカニズム、ワールドが蘇ります」
「再リリースやリマスター版は、皆に愛されるシリーズの続編、再リリース、新たな進化を人々に臨んでもらう最善の方法です」バシャール氏は続けます。 「再リリース、リマスター版、そして新たな作品は、そのシリーズの最大の可能性を広げ続けるためにそれぞれお互いを必要としていると、私たちは考えています」
ウィリッツ氏は話します。「リマスター版のゲームは、新しいプレイヤーが今までプレイしたことがないかもしれないゲームを試す良い方法です。ゲームは現代化され、たいていの場合、見た目も操作もよくなっているうえ、おそらく既に持っているプラットフォームでプレイ可能です。 そのため、これは昔のゲームをプレイすることができ、現在のシステムに最適化する素晴らしい方法なのです」
同様に、リマスター版は今日のゲーマーを過去の名作につなげる役割をしているとドボルスキー氏は考えています。 「そのようなゲームが温存されることは素晴らしいことです」氏は話します。 「たとえば、何世紀も昔に書かれた本の多くは今でも人気がありますが、ゲームは非常に素早く進化する技術に基づいているため、比べ物にならにほど素早く古くなります。 古いゲームの多くは、現代のシステムでは起動することさえままなりません。 リマスター版のおかげで、これらのゲームに手が届くようになり、学べることさえあるかもしれません」
リマスター版が、革新と目新しいものとして必要である新しい斬新なゲームに置き換わることは決してありません。 しかし、プレイヤーが原作リリースをプレイしたことがあったとしても、初めて体験するにしても、今でも存続する人気がそのプレイヤーと過去をつなぎます。