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『Out of Words』は、そのメッセージ、ゲームプレイ、そしてアート性の魅力で、プレイヤーを圧倒

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Brian Crecente
2025年6月12日

ビデオゲームで言葉も出ないほど夢中になった、というのはありきたりな表現かもしれませんが、今回はまさにその通りです。

『Out of Words』は、才能あふれるゲーム開発者のチームと、失われつつあるストップモーションアニメーションの技に人生を捧げてきたアーティストのチームによって共同制作されました。これは若い恋と、その恋を駆り立てる葛藤の感情を描いた物語です。そのゲームプレイは、ただ独特であるだけでなく、不思議なほど感情を揺さぶるものです。すでに感動的な物語には、比喩的なアクションが織り込まれ、視覚的にも物語的にも意味深い協力プレイのゲームに、さらに大きなインパクトを与えてるものとなっています。

本作に深く感動したのは、私だけではありません。Summer Game Festの対面イベント、Play Daysに参加したジャーナリストたちは、全員『Out of Words』に圧倒された様子でした。かの有名なゲームディレクター小島秀夫氏も、この作品に魅了され、かつてTwitterと呼ばれていたサイトに『Out of Words』「シンプルで、優しく、美しい」と投稿しました。

「ソーシャルメディアで『言葉』の真の意味が失われてしまったこの時代に、まさに必要なゲームだと思います」と彼は記しています。

『Out of Words』は、監督、撮影監督、そしてゲームディレクターでもあるヨハン・エッティンガーの独創的なアイデアから生まれた作品で、彼は本作を「協力プレイによる手作りのラブストーリー」と表現しています。ゲーム制作の経験がまったくなかった彼が、本作の制作を決意したきっかけは何だったのでしょうか?その経緯は興味深いものです。

「実は11歳の頃からストップモーション映画を制作していて、本当に、私のスタジオではすべてをストップモーションで制作しているんです」

長年にわたり、エッティンガー氏は『Seven Minutes in the Warsaw Ghetto』『Ragnarok』『The Lizard, the Flower and the Doll Head』など、数多くの短編作品を制作してきました。そのすべてがストップモーション作品であり、制作費は公的資金と広告で調達されています。

「これは私の初めてのゲームです」と彼は言います。「『Out of Words』は子供の頃から夢見ていたプロジェクトです。私はいつもゲームが大好きで、ゲームとともに育ちました。『The Neverhood』(1996年に発売されたポイント&クリックのストップモーションゲーム)を少年時代にプレイしたとき、この2つの大好きを融合させたストップモーションゲームを作りたいと思いました」

その夢を現実のものにすべく、エッティンガー氏は、斬新なプロジェクトで知られるデベロッパー、Kong Orangeと提携しました。2つのチームは1つのスタジオとして協力し、アイデアの実現に向けて取り組み始めました。『Out of Words』のカットシーンは、すべてストップモーションで制作されています。ゲームプレイでは、エッティンガー氏とそのチームが制作したモデルをデジタル化し、生き生きとした動きで表現しています。
『Out of Words』ゲームプレイスクリーンショット 3
「ゲーム内のすべては、草まで手作業で作成しました」と彼は語ります。草は紙から切り取って、Unreal Engineに配置しています。平面は、紙の本を切り取ったものです。水面は、スキャンしたゼラチンテクスチャを使用しています。光スキャンやフォトグラメトリースキャンなど、さまざまな方法であらゆるものをスキャンして取り込み、手作業でブロックを積み上げて世界を作り上げています」

これは、2人の主人公であるKarlaとCurtにも当てはまります。どちらも精巧に作られた模型です。Summer Game Fest の体験デモで上映されたカットシーンでは、2 人がこの世界に降り立ち、そこで自分たちに口がないことに気付く様子が描かれています。

エッティンガー氏は、この瞬間を「不思議の国のアリス的な落下」と呼んでいます。

「これは、最初の短い章で2人のキャラクターが、何でも打ち明けられる親友として少し親しくなった後に起こります」と彼は語ります。「彼らは、この短いゲームプレイのシーケンスの最後、新たな言葉を口にするチャンスが訪れる瞬間に自分たちがいることに気づきます。

これはラブストーリーですが、2人は言葉が見つかりません。何を言えばいいのかわからないまま、一瞬の間に彼らは自信を失い、『Out of Words』の世界へと放り込まれるのです」Vokabulantisに到着すると、彼らの口は姿を消し、自分たちがどこにいるのかわからないまま取り残されてしまいます。
『Out of Words』トレーラースクリーンショット 2
『Out of Words』は、最初の段階では非常にシンプルなゲームです。エッティンガー氏と私は2人のキャラクターから1人を選び、この不思議な世界を冒険し始めます。基本的なプラットフォーム操作以外、最初はこれといった仕組みはまったくありません。頭上を鶴が飛び、草が生い茂る砂丘を駆け抜けます。水たまりを飛び越え、巨大な鳥たちを通り過ぎます。ある場面では、フンコロガシが押している巨大なボールを借りて、腐った丸太までたどり着きます。歩きながら、エッティンガー氏は成長物語が大好きだと語ってくれました。

「これはとても個人的な物語です」と彼は言います。「その瞬間に愛している相手に、自分の気持ちをうまく伝えられなかったという経験は、誰にでもあると思います」この物語は、エッティンガー氏自身が13歳から15歳の頃に経験した、初恋と失恋の経験がきっかけになって生まれたものだと、同氏は言います。

続いて、『Out of Words』の世界に飛び込み、1時間ほど物語を進めます。エッティンガー氏は、プレイヤーはこの時点で、ファンタジーの世界に飛び込んだことに気づき、その世界が予想以上に広大であることを実感するのだと語ります。物語は少しずつ展開し、この不思議な世界には新しいキャラクターたちが登場します。Moonは、空から落ちてきたパワフルな少女です。Prince of Many Colorsは、とても大胆で、その名声にふさわしい人物へと成長しています。しかし、最も重要なのAlephです。空飛ぶ羽根を持つエイのような、水色の生き物です。Alephは、KarlaとCurtの関係と友情の象徴でもあります。

デモ版の大きな見どころは、『Out of Words』の核となる最初のメカニズムの1つをプレイヤーに体験してもらうことです。これにより、瞬間ごとのプレイだけでなく、ゲームのより深いテーマも感じ取ることができます。この最初のメカニズムでは、プレイヤーはAlephを使って重力を反転させます。Alephを手にしている者は誰てもその重力が反転するのです。Bボタンを押すと、Alephが他のプレイヤーに投げられて、プレイヤーは天井から落下し、代わりにその他のプレイヤーが飛び上がります。
『Out of Words』ゲームプレイスクリーンショット 5
『Out of Words』のこのセクションをクリアするために、エッティンガー氏と私はこの重力反転のタイミングを完璧にマスターしなければなりません。また、お互いを信頼し合うことも必要です。私が隙間に飛び込むとき、エッティンガー氏が支えてくれ、Alephを投げてくれることを確信していなければなりません。反対に彼は、自分が落下し始めることを理解しつつ、私がAlephを間に合うように投げ返してくれることを信じているのです。

Aleph は水の生き物であるため、投げるたびに水しぶきの音がします。これは巧妙なゲームプレイの仕組みであるだけでなく、2人のキャラクターの関係を象徴する、意味の深いメタファーでもあります。また、エッティンガーが本作を協力ゲームにしたかった理由も、このことから理解できます。

「一体感をベースに、一緒になって遊べるゲームを作りたいと思ったのです」と彼は言います。「そして、この2人のキャラクターに繋がりを感じ、両者を同等の存在に描きたいと思ったのです。一緒に座って、お互いをキャッチし、助け合うという協力ゲームは、当然の選択でした。ポイントを競うのではありません。一番になることでもありません。大切なのは、協力し合うことです」

プレイのコンセプトは両チームによって考案されましたが、この特定のメカニズムに関しては、1人のデザイナーのアイデアから始まりました。

「そこから自然と形になっていったのです」と、『Out of Words』のエグゼクティブプロデューサーであるエスベン・ケア・ラヴン氏は述べています。「さまざまな形で物語に組み込まれていきました。日々の業務では、私がプロデューサー、ヨハンがディレクター、ジェフ(スパークス)がゲームデザイナーという、1つの大きなチームだと考えています。「これはダメだ」「それはできない」といったやり取りはまったくありませんでした。むしろ「できる」というシチュエーションの方が多かったですね。とてもクリエイティブなチームで、デザインからビジュアル、制作、コードまで、すべてを同スタジオ内で手がけています」
『Out of Words』トレーラースクリーンショット 3
チームは、ラヴン氏とエッティンガー氏がすぐに意気投合したことから結成されました。

「本当に特別な作品を作りたかったのです」とエッティンガー氏は語ります。「見つけたら、自分の人生が変わるようなもの。想像もできなかった、他の場所では見ることのできない世界を見せてくれるようなもの。ゲームとは、人の感情や知性に深く訴え、大きな感動と楽しさを与える、とても重要なアートの形であると私は考えています」

『Out of Words』でそれを実現するために、ゲームの物語と世界観の調和に細心の注意を払ったのだ。とエッティンガー氏は語ります。

「このようなゲームで、それを実現するのは本当に難しいことです」と彼は続けます。「試行錯誤を繰り返し、自由でクリエイティブなプロセスを経て、そしてようやく、緻密で美しい世界が完成するのです。そのためには、あらゆる面で自由である必要があります。セットの装飾を始める前に、レベルデザインに多くの時間を費やします。私にとって、レベルデザインはまさに脚本を書くような作業なのです」

最終的に、スタジオは約100種類のゲームプレイメカニズムをデザインして、その中から10%程度を採用しました。選ばれたものは、物語の中で使用される場所のメタファーのような役割を果し、それぞれのチャプターは、その時点で2人のキャラクターが置かれている状況を反映したものとなっています。
『Out of Words』ゲームプレイスクリーンショット 4
Summer Game Festのデモでは、暗く狭いトンネルをそっと進み、クレイメーションに出てくる粘土細工の人形のような奇妙なキャラクターたちのそばを通り過ぎます。彼らは、お互いに何か面白い会話を交わしているようです。すると、私たちは本棚や不思な物でぎっしり埋め尽くされた、市場のような場所にたどり着きます。ここで表現されているアートは、まさに圧巻です。ある小さなジオラマでは、キャラクターが刃を研ぎ、その火花が部屋中に飛び交っています。その後、巨大な本の山で区切られたエリアにたどり着きました。

ここで私はいったん止まり、エッティンガー氏に、ゲーム内に登場する小さな本をチームがどのように作成したのかを聞かずにはいられませんでした。

「モジュール式のシステムを構築しようと試みたのです」と彼は言います。「彼らが何冊の本をスキャンしたかはわかりません。でも小さなミニチュアの書籍をいくつか製作して、そのうちの5冊ほどをスキャンして、すべてをモジュール化しました。しかし、ここにあるものはすべて手作業で制作され、さまざまな方法でスキャンされているのです」

我々はさらに数時間ジャンプして『Out of Words』のある場面に進みました。そこでは、プレイヤーは、自分たちの口を取り戻し、故郷に帰れるよう手助けをしてくれるMr. Speakerと出会うことになっていました。

「しかし、彼は正気ではなく、世界全体を支配して抑圧しており、プレイヤーはそれに立ち向かおうと決心します」とエッティンガー氏。「そこで、街の地下深くに存在する伝説の湖までたどり着き、その湖の底に沈む太古の粘土を手にいれるのです。あらゆる困難を乗り越えて粘土を手に入れたものの、それは思い描いていたような神聖な生き物にはならないのです」

このセクションは、プレイヤーとフレンドが、まるでゴーレムのような巨大な粘土の塊の中に閉じ込められ、腕や手を伸ばして物をつかんだり、前へ進むために体を引きずったりして移動するところから始まります。各プレイヤーは片方の手を操作します。
『Out of Words』トレーラースクリーンショット 4
「粘土は文学において多くの象徴的な意味を持っています」とエッティンガー氏は語ります。「最初の書物である『ギルガメシュ叙事詩』は粘土板に書かれていました。つまり、文明は粘土の上に築かれたと言えるでしょう」

彼が話している途中で、私は突然、これがカットシーンではないことに気づきました。その代わりに、彼はすべての操作を行い、ゴーレムを目標に向かって動かし続けていたのです。私たちは、一体何が起きているのか説明してくれるMr. Speakerの使用人を探して、ステージを猛スピードで駆け抜けています。

壁を突破して現れると、「I love my job(私は仕事が大好き)」と歌い続けていた使用人が、悲鳴を上げて逃げ出すシーンは、『Out of Words』のデモ版で笑いを誘う場面の一つです。

ようやく使用人に追いつくと、彼が話すところにカメラがズームインし、その後、ズームアウトして、彼がどのように作成され、アニメーション化されたかを舞台裏から映し出します。これは意外性のある演出であり、『Out of Words』に注ぎ込まれた純粋な芸術性を印象づけるものとなっています。

エッティンガー氏に、ゲームにちょっとした舞台裏を盛り込む、例えば1、2度だけ第4の壁を破るような演出を加える予定はないかと尋ねました。彼は、今のところその予定はないと答えましたが、このエンディングはデモ用に特別に制作されたものなので、最後に何か付け加えるかもしれない、と述べています。
『Out of Words』ゲームプレイスクリーンショット 6
エッティンガー氏がストップモーションという分野に興味をを持ったのは、伝説的なストップモーションアーティスト、レイ・ハリーハウゼンの影響ではなく、子供の頃に1989年に公開されたウォレスとグルミットの映画、『A Grand Day Out』を見たことがきっかけでした。

「それ以来、ずっとやってみたいと思ってました」と同氏は言います。「私はハリーハウゼンや、ウェス・アンダーソンの『ファンタスティック Mr. フォックス』の大ファンでもあります」

ストップモーション映画の名作について話しているうちに、この『Out of Words』やその登場人物たちは、他のメディアでも活躍できるのではないか、と思わず考えてしまいました。何しろ、ゲーム制作に使用したすべての物理的な作品、そして使用されなかったものなど、あらゆるものがまだ残っています。例えば、エッティンガー氏によると、最初は数キロにも及ぶステージがあったのですが、最終的にはその中からベストの部分だけが厳選されたそうです。

「もちろん、さらなる展開も検討しています」とエッティンガー氏は語ります。「私たちは、世界全体、つまりすべてを作り上げました。あらゆるものの世界を創り上げました。そして、ありとあらゆる媒体を研究するのが大好きです。しかし、今は『Out of Words』に専念して取り組んでいます。これは非常に大規模でクリエイティブなプロジェクトであるため、完成に全力を尽くしています」
『Out of Words』トレーラースクリーンショット 1
デモが終わる頃、本ゲームについて他に知っておいてほしいことはあるか、とエッティンガー氏に尋ねました。

「私にとって重要なことの1つは、『Out of Words』が本当に前向きな物語だということです」と彼は言います。「この物語のすべては、愛と協力し合うことです。世界に面白いものを届けたいのです。もしそれを実現できたら、それは私にとってとても特別なことになるでしょう」

『Out of Words』は間もなくEpic Games Storeに登場します。