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『Empire of the Ants』がRTSジャンルにミクロサイズの新たな視点をもたらす

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Francisco Dominguez
2024年5月27日
Tower Fiveは、何千人もの人間を虫けらのようにつぶすことならお手の物です。現在このフランスのインディースタジオで働いている多くの開発者は、かつてCreative Assemblyに在籍しており、壮大な戦争が繰り広げられる歴史ゲーム『Total War』シリーズの考案に貢献してきたのですから。 そんな彼らは現在、近日登場のストラテジーゲーム『Empire of the Ants』で、虫を虫けらのようにつぶすことに原点回帰しています。

本作でプレイヤーは、ベルナール・ウェルベルのフランスSF小説三部作『蟻』に登場する、Bel-o-kan Federationの103,683番目のアリ兵士としてプレイすることになります。 ウェルベルの1991年の小説では、人類は思いもよらぬところで知的生命体を発見します。そう、無限に広がる宇宙空間ではなく、足元にある土の上です(おそらく無防備なピクニックを襲撃しているのでしょう)。 そして人類は劣勢で、どうすることもできません。現在地球上で生きている人間1人に対して、アリは250万匹です。

この本が最初にフランスのベストセラーチャートを席捲したとき、本作のクリエイティブディレクターを務めるルノー・シャルパンティエ氏は20代でした。 その原作は、彼が子どもの頃に遊んでいたパリの森を、未知の、奇妙で、異質な場所へと変えてしまいました。 彼は、彼が設立したスタジオが、この小説の驚くべきSF設定や群がる昆虫の戦い、地理的な陰謀に、原作に忠実でありながらも自分たちのアレンジを加えながらチームの物語主導のストラテジースタイルを適用できる機会に恵まれたことを喜んでいると、Epic Games Storeに対して語ってくれました。

見知らぬ土地の見知らぬ人

幼少期にフォンテーヌブローの森を訪れてから数十年。シャルパンティエ氏はTower Fiveとともに古の森に戻ってきました。 しかし今回は、カマキリの色(良く知られている緑になるのは夏の間だけ)から、甲虫、ナメクジ、テントウムシなど、数え切れないほどの野生生物の正確な自然行動の観察まで、スタジオのアーティストたちがこの生態系を季節の変化とともに正確にキャプチャーできるよう、カメラ機材も持ち込んだのでした。 彼らの撮影機材は、参考資料のためだけにあるのではありません。チームは、ゲームのビジュアルを大幅に強化し、彼らにインスピレーションを与えたBBCの自然ドキュメンタリーとほとんど見分けがつかないようにするテクノロジー、つまりフォトグラメトリーを採用したのです。

スマートフォンが複数の写真をつなぎ合わせてシームレスなパノラマを作成するのと同じように、フォトグラメトリーは、単一の被写体の重なり合った写真からフォトリアリスティックな3Dモデルを作り出します。 演算ハードウェアがこのような豊かなディテールを持つアセットをだんだんと処理できるようになったため、Unreal Engine 5のようなゲームエンジンには、それらを活用するツールが搭載されるようになりました。 Tower Fiveのような(アリほどではないにせよ)小さなチームにとって、森林やその他の場所に命を吹き込むうえで、革新的なツールとなることが約束されています。

「私たちのキャラクターはすべて昆虫というところがポイントです。フォトリアリスティックな昆虫のモデリングとアニメーションが、小さなチームであっても可能になりました。人間や、大きな動物では不可能なことです」と、シャルパンティエ氏は言います。 「フォトリアリスティックなリアルタイムのライオンを実現した人はまだいません。 しかし、人間と同じように、いずれ実現されるはずです。私たちよりもはるかに大規模なチームにとっての、大きなチャレンジ、大きなプロジェクトとなるでしょう」
『Empire of the Ants』がRTSジャンルにミクロサイズの新たな視点をもたらす - 蝶
シャルパンティエ氏は、彼のチームであれば、人間やライオンには数か月、場合によっては何年もかかると考えています。 「人間の皮膚、目、静脈、毛髪は、私たちのヒーローでる硬いキチン質の表面よりもはるかに複雑です。 そして、フォトリアリスティックなリアルタイムのライオンには、美しいたてがみがあり、その皮膚の下には隆々とした筋肉がありますよね? 現在のコンソールで実現できるかさえわかりませんが、少なくとも、私たちに無理なことは確かです!」

フォトグラメトリーは、生きた被写体に関しては欠点があります。被写体は動けないのです。 「昆虫をスキャンすることはできませんでした」 シャルパンティエ氏はその正当な理由を説明します。「そのためには昆虫を殺さなくてはいけないのです。しかし、このゲームを制作するうえで傷つけられた昆虫は一匹もいません」 少なくとも、彼はそう考えているようです。「そうですね。私たちは森を散策しているとき、知らず知らずのうちに、数匹踏みつぶしていたに違いません。 しかし、私たちは一匹も捕まえませんでした。写真を参考にするだけで十分だったのです!」

今年初めに、アリの群れの背後にある芸術性について語ったGDCのトークで、シャルパンティエ氏はジョルジュ・メリエスが彼に与えた深い影響について話しています。 昔の有名な映画監督でありマジシャンであった彼は、初期の有名な特殊効果でよく知られています。『月世界旅行』で、男性の顔と月のイメージが違和感なく合成されたものです。 この独創的に現実を曖昧にする誇り高き遺産は、『Empire of the Ants』でも、写真を使用して現実の自然と非現実を混ぜ合わせることにより受け継がれています。

シャルパンティエ氏はまた、Unreal Engine 5のNaniteジオメトリ機能によって、3Dゲームの登場以来存在し続けてきたマジシャンのテクニックがひとつ取り除かれたことにも安堵しています。そう、詳細度(LOD)です。 プレイヤーは遠くからは細部を見ることができないため、低品質のモデルで計算能力を節約し、近づくにつれて忠実度の高いバージョンに置き換えていくのが一般的な方法になります。 ぼやけた壁が予定より少し遅れて高解像度バージョン入れ替わるときに、テクスチャのポップインが発生する原因です。 このゲームには、小さな昆虫の脚とそのゆっくりとした移動速度という詳細なアートアセットの処理という退屈な作業が必要ですが、今ではそれをNaniteが処理してくれるようになりました。

『Empire』は、比較的ゆっくりと前進します。時間と競争するようなゲームではありません」とシャルパンティエ氏は言います。 「ですから、この枝が、水平線上の小さな一点から、プレイヤーが登っているこの巨大なアセットへと、その過程で奇妙なトランジションを何度も起こすことなくスムーズに移動できることは、没入感を演出するうえで大きな収穫となります」

ある視点

『Fallout』では「戦争は決して変わらない」と語られましたが、『Empire of the Ants』では、そうではないと語られます(たとえアリの外骨格がパワーアーマーに勝てないとしても)。 人間の視点から、地上からほんの数ミリしか離れていないアリの視点に移ることは、すでに根本的な転換です。 しかし、Tower Fiveにとってそれだけでは不十分でした。これまでの『Total War』シリーズや、Tower Five自身の『Lornsword Winter Chronicle』で実績のあるトップダウンビューから、ゲームパッドに適した三人称視点への移行を決断したのです。 彼ら自身のストラテジーゲームと同様に、この決断は結果をもたらしました。

いわゆる「戦場の霧」はRTSの定番で、ユニットの視界外のマップのエリアがぼやける、トップダウン視点ならではの演出です。 三人称視点への変更は、三人称視点のタクティカルシューターにインスパイアされた、視界と発見のルールへの再デザインを意味します。 一方、パワーは、RTSゲームやMMOで見られるショートカットキーやアイコンの列から、自分の近さによって出されるフェロモンに変更されました。
『Empire of the Ants』がRTSジャンルにミクロサイズの新たな視点をもたらす - ルール
これにより、新しい形の挑戦がもたらされます。 ポジションが重要となると、1分あたりのアクション数がまったく違ってくるのです。 プレイヤーは、命令を下す将軍であり、ユニット強化のインスピレーションの源であり、経済の黒幕です。 しかし、指示を出すには適切な場所にいなくてはなりません。 シャルパンティエ氏が言うように、従来のマウス操作のない世界では、自分自身がカーソルとなるのです。 「『カーソルの位置』は重要です。常にハイレベルな戦略的決断を迫られます。見やすい位置、戦闘を指揮できる位置、経済を管理できる位置はどこなのか、と」

それは、ゲームのUIにまで及んでいます。 テックツリーのオプションを選択するときは、ポイント&クリックするのではなく、ビルドしたいアップグレードの上を歩きます。 シャルパンティエ氏は、2DのUIがポップアップされるよりも、この方が直感的で有機的だと感じています。代わりに、常にリアルな生きた世界に触れているように感じられるはずです。

化学戦争

森林の下草を細部まで再現しているにもかかわらず、再現がより困難なアリの生態も一部あります。 アリは通常、コロニーの入り口をふさぐ最後の手段以外にはバリケードを作りません。これは興味深い戦術ではありませんが、ハリネズミのような捕食者の脅威を考えれば、理解はできます。しかしこのゲームでは、バリケードは巣の防御として機能します。 この巣は敵の侵攻を遅らせるために必要な仕組みであり、説得力のある詳細なフォトグラメトリを使用した小枝で作られているため、本物らしく見えます。 そして、目に見えない化学フェロモンの放出によって起こるアリ同士の複雑なコミュニケーションを、どうやって再現するのでしょうか? キノコや一部の種類の昆虫で観察される霧状の発光に基づき、これらの効果をシミュレートするのです。

「アイデアは、ドキュメンタリー映画内に3Dオブジェクトとして明らかに目立つ要素を置くようなことを避け、体験を中断させることなく没入感を維持することにあります」 とシャルパンティエ氏。 「3D環境内のあらゆる要素がシームレスに統合されるように努め、ゲーム的、人工的、不自然な側面はUIに限定されています。ドキュメンタリーのビデオキャプチャに重ねた注釈や説明のようなものですね」

シャルパンティエ氏は自分のゲームデザインは、このジャンルの愛好家なら誰でも知っている3つの重要な要素から影響を受けていると認識しています。 構造、経済設計、ユニットの関係、進行に関しては、Blizzardの不朽の名作RTS『Warcraft III』からインスピレーションを得ています。 縄張りのコントロールについては、『Company of Heroes』の紛争地帯からヒントを得ています。ここでは、マップの広範囲を支配することが報酬となり、狭い領域に限定された、過剰に防御的な戦術である「タートリング」は推奨されません。 戦闘に関しては、前作で慣れ親しんだ『Total War』シリーズの壮大なスケールの争いからインスピレーションを得たといいます。 現実のアリのコロニーには平均して10万匹から50万匹の昆虫が生息していることを考えると、『Total War』のアプローチは戦場を行進するアリの大群を描くのに非常に理にかなっています。
『Empire of the Ants』がRTSジャンルにミクロサイズの新たな視点をもたらす - ルール
「将軍として、少人数の戦士のような機敏性を期待して彼らを操ることはできません。一度戦いにコミットすれば、彼らは完全にコミットするのですから」とシャルパンティエ氏は説明します。 「撤退を命令するのはそれほど簡単ではありません。そのため、戦いを始めるという決断がより戦略的で、厳しいものとなります。 と同時に、戦いの規模が大きいため、最後のアリが倒れる前に決着をつけるにはかなりの時間を要します。 フェロモンの使用、範囲攻撃、特別支援ユニット、苦戦している部隊を撤退させるための側面作戦などの戦術を採用し、個々の戦闘に介入する時間があります。 戦闘はアクション要素よりも戦術的な意思決定に重きが置かれ、成功は素早い反応よりも巧みな作戦に依存するわけですね」

力は数だけに左右されない

『Total War』の戦闘が『Empire of the Ants』の戦闘と最も大きく異なるのは、ユニットの機動性の高さでしょう。 『Manor Lords』に登場する中世の人間たちは、領主に仕えようと必死に争っているにもかかわらず、イモムシやクモのような昆虫が難なく壁をよじ登ることができるような、爪や鉤状突起、粘液分泌腺といった多様な適応能力を持ち合わせていません。 隊列を組んで突進するだけです。 このゲームでは、ユニットがあらゆる地表を登り、あらゆる地形で戦闘に参加する能力を持ちます(チームが、このような多様な地形に対応するための微小経路探索システムの問題を解決した後の話ですが)。 『StarCraft』のZergや『XCOM 2』の威圧的なエイリアンの戦術は、地球外の異様さとは裏腹に、地球の一般的な昆虫の敏捷性や多用途性にはかないません。

この技術がRTS戦闘の新たな地平を切り開くか、という質問に対して、シャルパンティエ氏は、唯一の限界は自分自身だと述べました。 昆虫の脳は小さいかもしれませんが、私たちの理解を超える能力を持っています。 プレイヤーは、戦術的なゲームプレイの精神的な要求に対処する際、認知的な限界に直面します。 「人間にとって完全な3Dで戦略を練ることは大変難しく、混乱しかねません」シャルパンティエ氏は説明します。 「そのためレベルデザイン、特に大型の甲虫については、比較的伝統的なマップを選択しました。つまり、どの地域が相互につながっているかを見分け、距離やユニットの相対的な位置を理解しやすいマップです。 これは、たとえば木の中でプレイしているとすぐに喪失してしまう要素です。

伝統的な1対1の戦闘や、3人プレイヤーによる膠着状態のランクモードなど、野心的なマルチプレイヤーモードが用意されているため、マップとゲーム状況の明瞭さを維持することが不可欠です。そうすることで、プレイヤーは命令を忠実に実行する何百匹ものアリの複雑な経路を効果的に把握できるようになります。

このゲームのアクションアドベンチャー部分では、触角の痙攣や感覚の剛毛のような私たちが持っていないものでも、理解を超えた動きを直感的に探ることができ、独特の体験ができるようになっています。 戦術的な意思決定やリソース管理といった厳しい要求から解放され、昆虫の自由さをもって動き回ることができます。 しかし、『ザ・フライ』やフランツ・カフカの『変身』を知っている人なら、本物の昆虫のような動きは、自然にそれを備えて生まれてきた生き物に任せるのが一番だというシャルパンティエ氏の見解に同意するでしょう。つまりは、自然の生息地で観察できる、プレイ不可能な昆虫のことです。
シャルパンティエ氏は説明します。「これらの昆虫はみな、葉の下にぶら下がったり、洞窟や枝を這い回ったり、野原を飛び回ったりと、さまざまな移動能力をフル活用しています。 プレイヤーが昆虫をコントロールしているのではなく、昆虫が自分の人生を生きているだけです。 そのため、昆虫のような明確な動きをすることができ、垂直の次元にいる私たちを戸惑わせることはありません」

ゲームのビジュアルが注目される一方で、シャルパンティエ氏は、人間の感覚を超えたミクロの世界に独特のサウンドスケープを構築したチームのオーディオワークに特に満足しています。 「攻撃的なギターをフィーチャーした典型的な壮大なサウンドトラックにはせずに、この世界を喚起し、人間のいないこの文明と共鳴するものを目指したんです」とシャルパンティエ氏は言います。 「人間の声も入っていなければ、産業化時代の楽器も入っていません」

チームのオーディオデザインは、ゲームに流したSFのエスプリを表現しているとシャルパンティエ氏は考えています。「同じレベルの没入感がサウンドデザインにも適用され、可能な限りオーガニックに保たれています。これには、アンテナ、振動、フェロモン放出など、私たち人間とのユニークなコミュニケーション手段を呼び起こす、我々のヒーローにぴったりの『声』を作ることも含まれます。 『人間』と『エイリアン』の間で選択しなければならなかった場合、常に『エイリアン』を取りました。 ゲームのサウンドは、ビジュアル的にもゲームプレイ的にも特徴的なものにするという目標に沿うようにディレクションしました。 それは、オリジナルで新しいものを提示するために努力するという、ゲーム全体にとっての包括的な機会でした」

細部まで緻密にデザインされた、多様な昆虫を擁する各マップを観察していると、チームは本当に目標を達成したのだという印象を受けます。 フォンテーヌブローの森のスズカケノキの爽やかな香りが今にも香ってきそうです。 ただし、ピクニックのお弁当を置きっぱなしにしないようにしましょう。

『Empire of the Ants』は、Epic Games Storeに近日登場します。